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シンジルンバ

むかしむかし、
空と草原のあいだにある、
小さな村がありました。

その村には、
不思議な風が吹いていました。

うれしい時には花の香り。
かなしい時には雨の匂い。
誰かを好きになると、
空に小さな光が浮かびます。

けれど、
その村の子どもたちは最近、
だんだん笑わなくなっていました。

「どうせ無理」
「信じても意味ない」
「期待すると疲れる」

そんな言葉が、
空を重たくしていたのです。

するとある夜、
月の丘の向こうから、
へんてこな生き物がやってきました。

丸い帽子。
ふわふわの靴。
大きな耳。
そして、
なぜか歩くたびに、

ルンバ♪
シンジルンバ♪
ルンバルンバ♪

と、歌うのです。

その子の名前は、
シンジルンバ。

シンジルンバは、
困っている人を見つけると、
そっと近づいて言いました。

「ねぇ。
ほんのちょっとだけ、
信じてみない?」

「なにを?」

「明日でも。
自分でも。
だれかでも。」

みんなは笑いました。

「そんなので変わるわけないよ」

するとシンジルンバは、
ポケットから、
小さなタネを取り出しました。

それは、
光るわけでも、
特別きれいでもない、
ふつうのタネでした。

「これ、“シンジルのタネ”」

「こんなの、
ただのタネじゃん」

「うん。
でもね。
信じながら植えると、
ちがう花が咲くんだよ」

子どもたちは半分あきれながら、
土に植えてみました。

「明日、少し笑えますように」
「お母さんと仲直りできますように」
「怖いけど学校に行けますように」

その夜、
村にやさしい風が吹きました。

次の日。

なんと、
タネから芽が出ていたのです。

しかも、
それぞれ違う色。

赤。
青。
金色。
虹色。

花は、
信じた気持ちの色になっていました。

「うそ…」
「ほんとに咲いてる…」

その時、
ずっと黙っていた女の子が、
小さな声で言いました。

「わたし…
自分のこと、
嫌いだった」

シンジルンバは、
その子のとなりに座りました。

「うん」

「でも…
少しだけ、
好きになれるかもって思った」

すると、
その子の花が、
ふわっと光りました。

あたたかく、
やさしく。

まるで、
心の中に朝日がのぼるみたいに。

その日から、
村では不思議なことが起こり始めました。

転んでも、
「また立てるかも」
と言う子が増えました。

ケンカしても、
「仲直りできるかも」
と言う人が増えました。

空にはまた、
光が浮かぶようになりました。

そして、
シンジルンバは、
ある朝、
静かに旅立ちました。

丘の向こうへ消えていく後ろ姿から、
あの歌だけが聞こえてきます。

ルンバ♪
シンジルンバ♪
信じる心は消えないルンバ♪

村の人たちは、
今でもときどき、
夜空を見上げます。

苦しい日もある。
泣きたい日もある。

それでも、

「ほんの少しだけ、
信じてみよう」

そう思えた時、

どこかで、
小さな花が、
また咲くのでした。



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