認めた瞬間から変わるもの
朝、目が覚めた瞬間に
「ああ、今日もか」と思う日がある。
仕事に向かう足取りは重く、
電車の中では昨日の嫌な言葉が頭を回る。
上司の一言、家族の態度、
自分の見た目や、うまくいかない人生。
全部まとめて
「なんでこうなんだ」と
毎日どこかで戦っている。
でもある日、
ふと力が抜けた。
どうにもならない朝に、
どうにもならない顔で鏡を見て、
どうにもならない気分のまま、
「まあ、これが今の自分か」と思った。
諦めではなかった。
投げやりでもなかった。
ただ、
そのまま認めただけだった。
すると不思議なことに、
世界が少しだけ変わった。
嫌な上司は相変わらず嫌なままだし、
生活が急に良くなるわけでもない。
自分の容姿も、過去も、未来も、
何ひとつ変わっていない。
それなのに、
自分の中の抵抗だけが消えた。
「これじゃダメだ」
「こんなの自分じゃない」
「もっとちゃんとしなきゃ」
その声が弱まった分、
目の前の景色が入ってくるようになった。
昼休み、コンビニのコーヒーを飲みながら、
外に咲いている桜に気づいた。
誰に褒められるでもなく、
誰かと比べるでもなく、
ただその場所で咲いている。
綺麗かどうかも関係なく、
満開でも、散りかけでも、
それで成立している。
「そうか、これでいいのか」
その瞬間、
ほんの少しだけ満たされた。
満足というのは、
全部が整った後に来るものじゃない。
今のままで一度受け取ってみると、
勝手に湧いてくるものだった。
そこからだった。
仕事の見え方が変わり、
人の言葉の刺さり方が変わり、
自分への扱い方が変わっていった。
劇的な変化じゃない。
でも確実に違う。
変えようとしていたときは動かなかったものが、
認めた瞬間から、少しずつ動き始めた。
桜が無理に咲こうとしないように、
ただその時期に、ただその形で咲くように、
人もまた、
今のままを一度引き受けたとき、
次の変化に進めるのかもしれない。
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