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「流行りの曲」の半分は、ボカロでできていた。―出遅れた大人に贈る、現代音楽の最短ガイド。

流行りの曲は一通りチェックしているし、YOASOBIや米津玄師も大好き。でも、『ボカロ』というジャンルだけは、なぜか踏み込めないまま今日まで来てしまった―。」

 そんな、音楽好きゆえに「今さら聞きづらい」という思いを抱えている大人のあなたへ。実は、あなたが今はまっている曲のすぐ隣には、広大でエキサイティングなボカロの世界が広がっています。

日本の音楽シーンの「主役」は、すでにボカロ出身者たち

現在の日本の音楽チャートを眺めてみてください。そこには、ある共通点が見つかります。

 紅白歌合戦の常連となった米津玄師(ハチ)、世界を席巻するYOASOBI(Ayase)、そして圧倒的な歌唱力で知られるAdo。彼らのルーツやヒット曲の仕掛け人は、その多くが「ボカロP(VOCALOIDを使用して曲を作るクリエイター)」出身、あるいはボカロ文化から多大な影響を受けた人々です。

 かつてボカロは、ネットの片隅にあるニッチな「オタク文化」でした。しかし今や、ボカロは現代ポップスの「最大の発明品」であり、最先端の才能が集まる「音楽の実験場」となっています。

 もしあなたが、ボカロは良くわからないし、今更と避けたままなら、それは現代音楽の最も美味しい部分を、食わず嫌いで逃しているのと同じことかもしれません。今のヒット曲の構造を理解するためにも、ボカロという背景を知ることは、大人の教養としての音楽の楽しみ方を広げてくれるはずです。

「歴史を全部知る」必要なんて、1ミリもありません

「ボカロはすでに歴史が長すぎて、今から追いかけるのは無理だ。ボカロは何を聴くのが正解かもわからないし、情報の濁流に飲み込まれそうだ」。これは大人の皆さんがボカロの世界に対して抱く大きな不安のひとつだと思います。 

 初音ミクの誕生から15年以上。ニコニコ動画の黎明期から、YouTubeやTikTokでの大流行まで、世の中に放たれた曲数は数百万曲にのぼります。その膨大なライブラリを前に、「今さらどこから手をつければいいのか」と立ちすくんでしまうのは当然です。

 しかし、過去の歴史をすべて網羅する必要なんて、1ミリもありません。ボカロは「ジャンル」ではなく、ピアノやギターと同じ「楽器(ツール)」に過ぎません。あなたが新しい洋楽を聴き始める時に、1950年代からの全ヒット曲を予習しないのと同じです。大事なのは「今、あなたの耳に合うかどうか」だけ。膨大なライブラリ中にきっとあなたの耳に合う曲が多くあるはずです。

大人のための「ボカロ再入門」実践ガイド

今のあなたの感性で聴くべき、おすすめの入り口を2つの切り口でご紹介します。かつての「機械的なキンキン声」や「子供っぽい」というボカロのイメージもっている方は、ここで一度捨ててください。

1. 昔のイメージを覆す「超絶おしゃれなシティポップ系ボカロ」
ボカロといえば早口で騒がしい、というのは一昔前の話。今のボカロシーンには、ドライブや夜のリラックスタイムに最適な、洗練されたサウンドが溢れています。

 たとえば、シティポップの文脈を汲んだメロウなカッティングギター、ジャズの影響を感じさせる複雑なコード進行、そしてローファイ・ヒップホップのような心地よいビート。これらを駆使するクリエイターたちの楽曲は、もはや「ボカロであること」を忘れさせるほどスタイリッシュです。 「くじら」や「ツミキ」といったアーティストの楽曲を聴けば、その音響的なクオリティの高さに、音楽好きとしてのアンテナが強く反応するはずです。これこそ、耳の肥えた大人のためのボカロ おすすめジャンルの筆頭と言えるでしょう。

2. 歌詞に救われる「大人にこそ刺さる文学的ボカロ」
ボカロがこれほどまでに長く愛され、若者から大人までを惹きつける最大の理由は、その「歌詞」にあります。

 人間の歌手が歌うには少し気恥ずかしいような、赤裸々な劣等感、社会への違和感、あるいはあまりに純粋すぎる愛。キャラクターという「フィルター」を通すからこそ、ボカロPたちは自分の心の奥底にある「毒」や「本音」をさらけ出すことができます。 「カンザキイオリ」や「いよわ」といった作家が描く物語は、酸いも甘いも噛み分けた大人こそが、その鋭い痛みに共感し、深く救われる文学性を備えています。

あなたは「出遅れた」のではない。「最高のタイミング」に出会った。

「もっと前から聴いておけばよかった」と後悔する必要はありません。

 なぜなら、今のほうが音声合成技術は飛躍的に進化し、楽曲のジャンルは無限に広がり、再生環境も整っているからです。今のボカロ界は、歴史という土壌の上に、かつてないほど多様で豊かな才能が咲き誇っている「収穫期」にあります。

 あなたは出遅れたのではありません。ボカロという文化が最も熟し、最も面白くなった瞬間に、ようやく出会えたのです。

「ボカロ、初めてだけど何から手をつけよう」と迷っているなら、まずはYouTubeや音楽サブスクで「ボカロ」と検索して、気になったサムネイルを一回クリックするだけ。歴史の勉強は抜きにして、今日の一曲を楽しんでみませんか?

その一歩が、あなたの音楽体験を劇的にアップデートする入り口になるはずです。


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