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レベッカ ソルニット『ウォークス 歩くことの精神史』を読んだおじさんに起こった変化の話

読者さんから贈っていただいたレベッカ ソルニット 『ウォークス 歩くことの精神史』を読んでいる途中なのですが、この本と向き合う過程がわたしの中に起こした決して小さくはない変化について、読了を待たずに簡潔に書いてみたいと思います。と、その前に、贈っていただいてありがとうございました。改めてお礼申し上げます。

この本はタイトルの通り、歩くことについて人々がどんなことを考え、それを行動に移してきたかについて、二足歩行のはじまりから、アリストテレスやワーズワースといった歩きながら考え感じ取ったことを言葉にした人々や巡礼する人々、クラブを作って歩く楽しみや環境の問題を共有しようとした人々などにスポットライトをあてつつ、歩くことを巡る数々のエピソードを叙情的で美しい文体で綴ったものです。

原題は『Wanderlust A History of walking』となっています。wanderlust には「放浪癖」とか「旅行熱」といった意味がありますので、徒歩での旅へのやまない衝動についてのあれやこれやについて語り尽くしたい、というのが本書に込められた著者の真意であるように思われます。

どのエピソードも面白く、また全然知らなかった話や知識がたくさん散りばめられており、ウォーキングが趣味の人だけではなく、単に歩くことが好きなだけの人にとっても本書は刺激に満ちた一冊となることでしょう。ただし、かなりの大著なので、いっぺんに読み切るのは難しいと思います。

わたしは、これはここ最近で身につけた読書の楽しみ方なのですが、出てくる地名はすべてGoogleマップで検索して、そうするとその場所について人々が撮影した写真がたくさん出てきますので、これを見て現地の雰囲気にすこしでも触れられるようにしています。また同様に、知らない事物、人物の名前が出てくれば検索して調べますし、本の中に一読しても意味が分からない文章が出てくれば Gemini に本のタイトルと章の番号や書いていることのアウトラインを伝えて「これはどういう意味?」と聞くことによって、例えばアメリカ人でないと分かりにくいニュアンスだとか、アメリカ人なら常識的に通じる話だが日本人にはちんぷんかんぷんといった話でも、かなりの程度で正確に教えてもらえます。

こういう時間のかかる読み方(というか、時間をかけた贅沢な読み方ですね)をしているうえ、そもそもわたしの読むスピードが決して早くないこともあって、自分もまだ読み終えることができてないんですが、これは絶対におすすめしたい一冊です。

具体的な感想というのは、それを書くとネタバレになりますので、書かないことにします。代わりに、この本を読んでいるうちにわたしの中で起こった、個人的にはなかなか大きな変化について書こうと思いますが、歩くことや音楽を聴くことに興味のない人にはまったくどうでもいい話になることでしょう。

歩くことへの意識の変化がイヤホン趣味をほぼほぼ終わらせた

この2年くらい、一人で外出するときは必ずノイズキャンセリングつきのワイヤレスイヤホンを装着して、静寂に包まれたまま歩くことが常となっていました。もちろん、普通に音楽やAudibleを聴きながらということもあるのですが、強力なノイズキャンセリング性能を持つイヤホンによって実現される "静かな世界" は、ある種の瞑想や神秘体験によってもたらされる静寂(このときの静寂は、実際には周囲の音は知覚されているにも関わらず静寂を感じるというもので、ノイズキャンセリングによる静寂とはまた異なるのですが、どちらにも圧倒的な静けさが伴っているという点で似ていると思っています)にも似ていて、これは霊的な探求者にとっては瞑想に代わる、あるいは瞑想と並行して取り組む価値のあるワークとみなせるのではないかとわたしは考えていて、その点を自分で検証していたのです。

結論からいうと、これは "アリ" です。ただし、ノイズキャンセリングの本来の使い方は飛行機や電車に搭乗した際に、騒音に悩まされずに音楽や映画を愉しむためのものであり、歩行中に使うのは基本的には慎むべきです。基本的にというのは、ノイズキャンセリングによって環境音が聞き取れなくなると車や自転車が近づいてきても気づけないため、危険なのです。とはいえ、そもそもノイズキャンセリングの有無に関係なく、音楽をそれなりの音量で聴きながら歩いている人は多い(というかそれが普通)ので、ノイズキャンセリングについてだけその危険性をどうこう言っても意味がないということで、そういったことも自分で検証しましたが、「視覚的に注意深くしていれば言うほど危険でもないよね」というのがわたしの本音ではあります。

とはいえ、これを「瞑想的な歩行」として実践する場合は公園などでやるのが一番よいです。あとはショッピングモールのような車や自転車にぶつかる危険がないような場所ならさほど問題はありませんが、他の歩行者とぶつからないように、一定の注意はやはり必要です。まあ、これは公園でやるにしてもそうです。

そういうわけで、これまでずっと、最高クラスのノイズキャンセリング性能を持つイヤホンを使ってきたのですが、今回レベッカ・ソルニットを読んで、やはり自分はもっと単純に歩くことが好きでそれを愉しみたいのだと思い直しました。それに、そもそも飛行機も新幹線も乗らないし電車通勤もしないし、お洒落なカフェでノートパソコンを開いてなんらかの作業をすることもないわたしにとっては、ノイズキャンセリングという機能は本来まったく必要がないのです。これは分かっていたことなのですが、上述の実践や単純に静かな個人的音響空間で音楽を聴くこともそれぞれ単純に楽しかった(気持ちよかった)ので、これを2年くらい続けてきたのでした。

しかしながら、歩くことを主題として捉えた場合、周囲の環境音は風景の一部であり、これを完全に消してしまうというのは、言ってみればジャガイモの入っていないカレーのようなものです(異論は認めます)。

それで、結論からいうと、ノイズキャンセリングつきのワイヤレスイヤホンを含めて、手持ちのオーディオ製品をごっそり手放し、代わりとして新たに買ったものを含めて、歩くことだけでなく、音楽を聴くことへの向き合い方を一新しました。

具体的には、手元に残ったのは以下の3つだけです。

OpenFit Pro は最近出たばかりの耳掛け式オープンイヤータイプのイヤホンです。これまで仕事ではずっと同じ shokz のこちらを使ってきました。

これは骨伝導イヤホンというもので、自転車に乗りながら聴くには色々な点から最適解だと今でも思っていますが、こういうデザインなので普段の外出時には使いづらく、また、外したときに仕舞うソフトレザーのケースはあるのですが全体として大きくかさばるため、完全に仕事専用になっていました。

shokz OpenFit Pro

そこで今回、諸々たくさんをe☆イヤホンさんに買い取ってもらって発生したお金を原資にして、同じ shokz の最新かつ最上位機種である OpenFit Pro を買うことにしたのです。この耳掛けタイプなら、普段着での外出時にも違和感ありませんし、不要なときは充電ケースに仕舞うこともできます。なにより、音質が OpenRun Pro 2 よりも圧倒的によいですし、DirectPitch 3.0 という音に指向性をもたせる技術のおかげで音漏れがほとんどせず、同時にスピーカーから発生する音がまっすぐ耳に届くため、非常に聴きやすいのが素晴らしいです。また、フォーカスモードといって、環境音から不快な騒音だけをすこしカットしてくれる機能(ノイズキャンセリングと同じような技術で実現されていますが、いわゆるノイズキャンセリングとはまったく異なる発想のものです)があり、これがかなり凄いです。だいぶいいお値段でしたが、これ一つで仕事もプライベートでの外出もすべてこなせるとなれば、むしろ安い買い物でした。

なにがしたかったのかというと、要するに、ノイズキャンセリングではなく、しっかりと環境音を聞き取りつつ、BGMも楽しみながら歩くということの実現に全振りしたのです。ちなみに、ノイズキャンセリング機能のついたイヤホンのうち、そこそこ高級なものには「外音取り込み機能」というものがついています。この機能を使えば環境音を聞き取ることができるじゃないか? という意見もあると思うのですが、わたしの結論は「否」です。

というのも、外音取り込みというのは、あくまで耳を塞いだ状態で、イヤホンの外側についたマイクが拾ってきた環境音を電子的に聞かせるものです。イヤホンによりますが、例えば Apple の AirPods とか、SONY の最新機種である WF-1000XM6(を手放したのですが)などであれば、環境音だけを聞いている分には耳を塞いでない状態とほとんど同じで、イヤホンをしていることを忘れてしまうほどです。のですが、WF-1000XM6 の場合(Apple は知らない)、その状態で音楽を聴くと、環境音と再生音とが完全に分離せず、音楽に注意を向けると環境音が聞き取りづらく、逆もまたしかりです。それに、音量をすこし上げただけで環境音はほとんど聞き取れなくもなります。また、外音取り込みモードで人と会話すると、まあ会話そのものは問題なくできるのですが、それでも自分の声はやや不自然に聴こえる気がします。

一方、耳掛け式オープンイヤータイプのイヤホンは、そもそも耳を塞いでない(とはいえ、骨伝導イヤホンとは違って、耳穴の上部をスピーカーが覆うような形の装着になるので、装着してない時と完全に同じではありません:でも問題はないです)ので、環境音の聞こえ方が自然なのは当たり前ですし、上述の DirectPitch 3.0 の威力もあいまって、環境音と再生音はしっかり分離して聴こえます。これが非常に大切で、オープンイヤーでも安い機種だとなかなかそうはいきません。これが今まで骨伝導を使ってきた理由だったのですが、OpenFit Pro はその課題を大きくクリアしていたため、OpenRun Pro 2 と置き換えることができました。

Bose QuietComfort Ultra Headphones LE(第2世代)

これについては前にも記事に書いたことがありますが、現在のわたしがもっとも「手放せない」ヘッドホンです。いわゆるピュアオーディオ的な意味での音質ということなら、そもそもイヤホンだろうとヘッドホンだろうと有線のものを選ぶべきですし、実際に有線の音質は素晴らしいです。でも、有線のイヤホンやヘッドホンにはできないのが立体音響と呼ばれる機能の付加で、とはいえ、立体音響ならなんでも素晴らしいのかというとそんなことは全然なくて、むしろほとんどのワイヤレスイヤホンやワイヤレスヘッドホンについている立体音響機能は「おまけ程度」です。

そんななかで、BOSE のイマーシブオーディオだけは "ガチ" です。他社の立体音響とはもはや同じまな板に乗せること自体が不適切なくらい、イマーシブオーディオは凄いです。他社の立体音響(Dolby Atmosとか)は単に音場を拡張し、さらに音に余韻を付加することで「まるで映画館で映画を観ているような」あるいは「まるでライブ会場にいるような」感じを醸すものです。しかし BOSE のイマーシブは「目の前にスピーカーが出現するような」とか「目の前でアーティストが歌い、演奏してくれているような」とか「映画の世界や楽曲の "中に" 入り込んでしまったような」感覚を与えてくれます。

まあ実際に聴いてみないとこの辺は分かりにくいでしょうが、もはやわたしはこのヘッドホンのノーマルオーディオモード(つまり、普通のヘッドホンとしての音響)はまったく使っていません。そして、最近まで有線イヤホンやスカルキャンディのヘッドホンなど、他のオーディオ製品を少なからず所有していたにも関わらず、家で使用するのはほぼほぼこのBose QuietComfort Ultra Headphones だけになっていました。このように、一度聴いてしまうともはや他のオーディオでは駄目な体になってしまうので、安易に人に薦めてよいものかどうか不安になるとかならないとか(なってません)!?

こうして、外では OpenFit Pro 、自宅ではBose QuietComfort Ultra Headphones という明確な使い分けが決まりました。色々ごちゃごちゃ持っていたものを処分し、シンプルな構成にできたことで気分もすっきりしました。わたしは全然ミニマリストじゃありませんが、ミニマリズムは基本的によいものだとは思っています。ただ、なんでか知らんけど、ミニマリズム原理主義者みたいな人が多いですよね。ヴィーガンと似ているというか、根本が同じのように思いますが、まあ、そういうのは分からないです。

audio-technica ATH-CKD7NC

シンプルな構成といった舌の根がまだ乾いてないのですが、色々な観点から、有線イヤホンを一つだけ手元に置いておこうと考えました。それで最終的に選んだのがこの ATH-CKD7NC です。これは端子が USB type C になっていて、スマホやパソコンに直接挿して使うことができるものです。また、実はこのイヤホンにはノイズキャンセリング機能と外音取り込み(ヒヤスルー)機能がついています。有線ではこういう機能がついているイヤホンはあまりないのですが、これはすごく便利です。

上のところで「もうノイキャンは要らんわ」と書きましたが、それはあくまで歩く時の話です。まあ、これもすでに述べた通り、わたしは電車や飛行機にはほとんど乗りませんが、それでも年に何度かは地下鉄を利用しますし、体調がいいときは電車を使って日帰りのちょっとした小旅行程度は敢行します。そういうときには OpenFit Pro を外してカバンに忍ばせておいた ATH-CKD7NC を取り出せば、騒音に邪魔されず音楽やAudibleを楽しむことができます。

高価なワイヤレスイヤホンを持っていると、もったいないからしっかり使わないと! と思ってしまいます。そうなると軸がブレてしまい、耳をふさがないオープンイヤーかノイキャンの強力なカナル型か、の選択を常に行う必要性に駆られてしまいます。これはいけません。ので、思い切って WF-1000XM6 を手放し、あくまで脇役の ATH-CKD7NC を騒音のひどい時専用のピンチヒッターとして活躍してもらおうという割り切ったチョイスをしました。これも行き過ぎないミニマライゼーションの一環です。

ちなみに、この ATH-CKD7NC は音質もそこそこよくてノイキャンとヒヤスルーもついていて一万円を切る価格と、誰にもお薦めできるイヤホンです。ノイキャン試してみたいけど、ワイヤレスって充電とか面倒くさそうだし電池の寿命は早そうだし接続とかなんとか色々ややこしそう、といった感じで手を出しあぐねている人も多いと思います(わたしも2年前までそうでした)が、 ATH-CKD7NC なら充電は不要だし、操作といってもボタン4つ(曲送り、再生・停止、曲戻し、およびノイキャンとヒヤスルーの切り替え)を押すだけです。有線の利点としては他に「音の遅延がない」ことも大きなポイントです。動画やアニメ、映画、あるいはミュージックビデオを鑑賞する際、ワイヤレスはどうしても音と映像にズレが生じるのですが、ATH-CKD7NC ならそんなことはありません。いいですよ。ちなみにわたしは黒を買いました。

オーディオの話は以上です。ご清聴ありがとうございました。

HOKA BONDI 9

それから、これからはいよいよしっかりと歩くのだ、という誓いを立てた証として、HOKA の BONDI 9 というシューズを買いました。

これまではニューバランス信者といって差し支えない人生でしたが、ウォーキングをがんばる所存であることを Gemini に伝えたら「それやったら HOKA にするべき」と言ってきたので心斎橋に出来た直営店まで足を運んで実物を見にいったところ、シューズのよさもさることながら非常にレベルの高い接客に気をよくしてしまってほぼ即決で BONDI 9 を購入した次第であります。

基本的にウォーキングシューズというよりランニングシューズなので、カラーリングは全体的になんというかよくも悪くもスポーツウェア的なものばかりだったのですが、わたしは普段履きにも使いたいゆえ、HOKA のロゴも目立たない地味なカラーリングを選びました。「オートミール / オートミルク」というのだそうです。まだしっかり歩いてはいないのですが、とりあえず浮遊感がすごいです。いままでにもクッション性の高いソールを備えたシューズはいくつか履いたことがありますが、BONDI 9 のそれはちょっと次元が異なっていますね。かといって、歩きにくいこともなく、見た目の印象からするとかなり軽量でもあり、なんか凄いねこの靴、という感想しか出てこないです。

ともあれ、何事も形から入りたいわたしにとっては、BONDI 9 は個人的歩行革命(?)を起こすための触媒として買うことを避けられないアイテムでした。OpenFit Pro と BONDI 9 の組み合わせによるウォーキングは、はてさてどれほど快適で楽しいものとなるでしょうか? また報告します。させてください。


おまけその①

今朝、仕事中に「今日は帰ったらレベッカ・ソルニットの本についてそろそろ書くか」という思考が現れたのですが、その直後に、OpenFit Pro からこの曲が流れてきました。歩くことについて書こうと考えていたら New Walk が流れるなんて、これはこれは。と悦にいってたんですが、その後にもっと面白いシンクロニシティがありました。

堺筋沿いの道頓堀を北に越えた付近(うどんの "つるとんたん" のある辺り)のビルの側壁にホストの顔写真と決め台詞的なメッセージが掲示されている一角があるんですけど、その決め台詞がめっちゃおもろい(「見ている未来が違う」とか)ので通りがかったらいつも見てるんですね。今日見たときに、御子柴●●というホストの名前がチラッと目に入ったんですが、隣に写っているもう一人のホストも御子柴■■という名前だったので、「兄弟!? いや、兄弟という設定!?」などと思いを巡らせつつ、そのとき商品のピッキング(受け取り)のため、某ハンバーガーチェーン(最近名前が変わったところ)に向かっていました。

そして数分後、お店に到着してスタッフの方とやり取りをしているときに、ふとその方の胸の名札が目に入ったんですが、なんとそこには「御子柴」と書いてありました。実話です。やろうと思えば検証可能なので、嘘だと思う人は某●●テリアに通ってみてください。それはともかく、なんなん御子柴。何者なん御子柴。どう解釈すればいいんだこのシンクロニシティ!?

おまけその②

今期のアニメでは「ドロヘドロ2期」が最高ですね。あと「とんがり帽子のアトリエ」は作画というか映像表現が新時代という感じで凄いです。話も丁寧で質がよく、これはぜひ観て欲しいですね。騙されたと思って第1話だけでも試しに観てください。

今回はこれで以上です。読んでくださってありがとうございました。なにかもっとスピリチュアルな話をわたしに書かせたい人は質問箱にリクエストを書いてください。ただし、たった一行で「●●について書いてください」とかは困ります。嘘です。困ることはないですが、そういう感じだと一般的な話しか書けません。なるべく具体的かつ詳細に書いてもらえれば、それなりのものが書けると思います。

では、また次の記事でお会いしましょう。

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