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インバウンド1位が米国に。買物より食に払う客

訪日のお客さんが増えたという話、もう何度も聞いていると思います。

では、その増えたお客さんは、うちの店にお金を落としてくれているでしょうか。

観光庁が7月15日に出した2026年4-6月期の1次速報を開いてみたら、飲食店にとって見逃せない行が一つありました。

【まず、何が起きたか】

国籍・地域別の訪日外国人旅行消費額で、首位が中国から米国に替わりました。

米国 3,848億円(構成比15.3%、前年同期比8.5%増)
台湾 3,639億円(同14.5%、27.9%増)
中国 2,592億円(同10.3%、48.8%減)
韓国 2,589億円(同10.3%、12.2%増)
香港 1,452億円(同5.8%)

前年同期、つまり2025年4-6月期は中国が5,064億円(20.2%)で最大、米国は3,546億円(14.2%)でした。

四半期の総額は2兆5,096億円で、前年同期比0.2%増。ほぼ横ばいです。中国が減った分を、米国と台湾の伸びが埋めた形になっています。

一つだけ、正直に伝えておきます。この資料から言えるのは前年同期からの入れ替わりまでで、「米国が初めて1位になった」かどうかは確認できません。そこまでは書かないでおきます。

【米国籍のお客さんは、買物より食にお金を使っています】

ここからが本題です。

観光庁の資料には、国籍・地域別の費目別消費額が金額で載っています。米国籍の訪日客の内訳を見てください。

宿泊費 1,607億円
飲食費 804億円
買物代 761億円

飲食費が買物代を上回っています。

中国籍だと、形が逆になります。

買物代 1,030億円
飲食費 521億円

買物代のほうが飲食費を大きく上回っています。

そして米国籍の飲食費804億円は、この表に並ぶ国籍・地域の中で一番大きい金額でした。次が台湾760億円、その次が韓国728億円です(いずれも各国籍の訪日客の飲食費、2026年4-6月期)。

ここで一つ、混ぜないでいただきたい数字があります。

全訪日外国人ベースの費目別構成比は、宿泊費37.0%、買物代26.8%、飲食費21.7%の順です。この見方だと買物代のほうが飲食費より大きい。

つまり「飲食が買物を上回った」のは米国籍に限った話で、訪日客全体で起きていることではありません。ここを取り違えると、正反対の結論になります。

【滞在が長い。しかも1泊あたりでも食に多く払っています】

「アメリカ人は長く泊まるから食費が多いだけでは」と思われたかもしれません。私も最初はそう思いました。

一般客(クルーズ客を除く)・全目的の1人当たりで見ると、こうなっています。

米国籍 旅行支出 37万8,547円(前年同期比4.8%増)
 うち宿泊費 15万8,095円 / 飲食費 7万9,106円 / 買物代 7万4,823円
 平均泊数 10.6泊

全国籍平均 24万4,457円(3.3%増)
 うち飲食費 5万3,143円 / 買物代 6万5,425円
 平均泊数 8.7泊

米国籍のほうが、全国籍平均より長く滞在しています。

ただ、泊数の差だけでは説明がつきません。1人1泊当たりで見ても、全国籍平均の飲食費6,135円に対して米国籍は7,444円(一般客・全目的)。同じ米国籍の1泊当たり買物代7,041円より、飲食費のほうが高いんです。

長く泊まって、しかも1泊ごとの食への支出も厚い。二重になっています。

念のため、もう一つ。1人当たりの飲食費が最も高い国籍は米国ではありません。観光庁は全目的の費目別について「飲食費は英国が最も高い」と書いていて、英国は10万6,005円(一般客・全目的の1人当たり)。米国籍が最大なのは総額のほうです。

【ここが一番間違えやすいところです】

同じ一つの調査の中に、母集団の違う数字が並んでいます。

国籍・地域別の消費額 → 全訪日外国人の金額
費目別構成比 → 全訪日外国人の比率
1人当たり旅行支出 → 一般客・全目的

同じ資料に載っていても、掛け合わせたり直接比べたりはできません。

「訪日客は買物に一番払う」と読むか、「米国籍の客は食に一番払う」と読むか。どちらも同じ資料に書いてあります。違うのは、どの行を見たかだけです。

但し書きも二つあります。今回の4-6月期は1次速報値で、確定値ではありません。それと2026年調査からメキシコ・北欧・中東が調査対象国に追加されていて、2025年以前は「その他」に含まれていたため、過去との比較には注意がいります(観光庁の注記より)。

【本当の意味】

問うべきは「インバウンドが増えたか」ではないと思っています。

総額は0.2%増で、ほとんど動いていません。動いたのは中身のほうです。買物中心のお客さん(中国籍は買物代1,030億円に対し飲食費521億円)が減って、食に厚いお客さん(米国籍は飲食費804億円が買物代761億円を上回る)が増えました。

同じ「2兆5,096億円」でも、店の前を歩く人の顔ぶれが替わっている。

免税カウンターの行列が短くなることと、夜の店の予約が埋まりやすくなること。この二つは、一枚の統計の裏と表になり得るということです。

【では、明日から何をするか】

三つ挙げます。

一つ目。自店のお客さんの国籍構成を、まず数えてみてください。全国平均より、予約台帳や決済データ、口コミの言語のほうがずっと正確です。英語圏のお客さんが多い店と、東アジアからのお客さんが多い店とでは、この統計で見るべき行が違います。

二つ目。長い滞在を前提に組み立てること。米国籍の一般客は平均10.6泊、全国籍平均は8.7泊(いずれも一般客・全目的)。平均10.6泊を日本で過ごすお客さんには、同じ店に二度来る余地があります。一度きりの通過客を想定した設計とは、考え方が別になります。

三つ目。「食が目的」のお客さんが判断に使う情報を出すこと。何が食べられて、いくらで、アレルギーや宗教上の制限にどこまで対応できるのか。買物のついでに入るお客さんと、食べるために店を選ぶお客さんとでは、暖簾をくぐる前に見たい情報の量が違います。

数字の総額だけを眺めていると、この変化は見えません。開いてみて初めて、自分の店に関係のある行が出てきます。

記事の全文はこちらに置いています。

https://menumenu.life/blog/us-tops-inbound-spending-2026q2

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