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「コンペになると体が固まる」のはメンタルが弱いからじゃない ― ポリヴェーガル理論でわかる緊張のしくみ

練習ではあんなにいいスイングができていたのに、コンペになった瞬間、体がガチガチに固まってしまう。仲間内のラウンドは楽しく回れるのに、スコアを競う場面になると急にミスが続く。

「自分はメンタルが弱いから」と、何年も自分を責めてきた方は多いのではないでしょうか。

でも、これは性格の問題でも、努力不足でもありません。あなたの神経が、生き残るために正しく働いた結果なのです。

今回は、ポリヴェーガル理論という体のしくみと、ソマリセット法という体からのアプローチを使って、お話ししていきます。

体には「3つのモード」がある

アメリカの神経科学者ポージェス博士が提唱したポリヴェーガル理論(Porges, 2011)では、私たちの自律神経には3つのモードがあると考えます。

信号機にたとえると、こうなります。

🟢 青信号(腹側迷走神経系) リラックスして、周りの人とつながっていて、安心している状態。練習場で仲間とおしゃべりしながらボールを打っているときの体は、たいていこのモードです。スイングは滑らかで、体は自然に動きます。

🟡 黄信号(交感神経系) 「がんばらなきゃ」「逃げなきゃ」と体が戦闘モードに入った状態。心臓がドキドキして、筋肉に力が入ります。コンペの朝、第1ホールのティーグラウンドに立ったときの感じです。

🔴 赤信号(背側迷走神経系) 危険が大きすぎて体が「フリーズ(固まる)」を選んだ状態。頭が真っ白になって、体が思うように動かなくなります。「あ、終わった…」と感じて、急に力が抜けるあの瞬間です。

コンペで体が固まるのは、あなたの体が青信号から黄信号、ときには赤信号まで一気に切り替わってしまっているからなんです。

なぜスイングが「ぎこちなく」なるのか

長年の練習で身につけたゴルフのスイングは、自転車の乗り方や箸の使い方と同じで、考えなくても体が勝手に動く記憶(手続き記憶)として体に染み込んでいます。

ところが、信号が黄色や赤に変わると、脳は「危ない!ちゃんとコントロールしなきゃ!」と過剰に動き始めます。すると、「左肘を曲げないように」「ゆっくり振ろう」と、ひとつひとつの動きを言葉で考えるようになります。

これが、自動で動いていたスイングを邪魔してしまうのです。

たとえるなら、ふだん何も考えずに歩いている階段を、急に「右足、左足、右足…」と意識した瞬間につまずきそうになる、あの感覚に近いです。

50代からは「黄信号が長引きやすい」

ここで知っておいてほしいことがあります。50代を過ぎると、緊張したときに出るストレスホルモン(コルチゾール)が下がりにくくなるという体の変化が起きます。

若い頃は、緊張してもすぐに体が「落ち着いてOK」と切り替わってくれました。でも年齢を重ねると、黄信号が長く続きやすくなります。

「コンペが終わっても夜まで気持ちが切り替わらない」「翌日まで疲れが残る」と感じるのは、気のせいではなく、体の正直な反応です。だからこそ、若い頃と同じやり方では通用しなくなってきます。

ソマリセット法 ― 体から信号を切り替える

ここで参考にしたいのが、ソマリセット法という体からアプローチする考え方です。

ふつう私たちは「気持ちを落ち着けよう」と頭でなんとかしようとします。でもソマリセット法では、**「体に直接働きかけて、神経の信号を青に戻す」**ことを大切にします。

頭で「落ち着け」と言い聞かせても効きにくいのは、緊張しているのは頭ではなくだからです。

具体的なやり方はとてもシンプルです。

① 足の裏を感じる ティーグラウンドに立ったら、靴の中の足の裏が地面とどう接しているかを感じます。「かかと、つま先、土踏まず」と順番に意識を向けるだけ。これだけで体は「ここは安全な場所だ」と感じ始めます。

② 長く息を吐く 吸う息よりも、吐く息を長くします。3秒吸って6秒で吐く、くらいのイメージ。長く吐く呼吸は、体を青信号に戻すスイッチになります。

③ 周りを見回す 首をゆっくり左右に動かして、空や木や芝生を見ます。視界を広げると、体は「敵はいない、ここは安全」と判断して、リラックスモードに入りやすくなります。

これらは、コンペの直前30秒でできることばかりです。

「考えない」より「考える対象を変える」

緊張すると「余計なことを考えるな」と自分に言い聞かせがちですが、これは逆効果です。「考えないようにする」こと自体が、すでに考えてしまっているからです。

そのかわりに、考える対象を体の外に向けましょう。

スイングの形ではなく、「ボールをどこに落としたいか」「どんな弧を描かせたいか」というターゲットや軌道のイメージに意識を集中させます。脳がそちらに夢中になっている間、スイングは邪魔されずに自動で動いてくれます。

「ルーティン」を秒単位で決めておく

もうひとつ強力なのが、ルーティンを時間まで固定することです。

ボールの後ろからターゲットを決める→アドレスに入る→ワッグルを2回→振り始める。この一連の流れを、いつも同じ秒数で行えるように練習しておきます。

コンペの場面では、このルーティンを機械のようになぞることに集中するだけ。考える「すき間」を物理的に消してしまうのです。これは、体に青信号を思い出させるスイッチにもなります。

「メンタルが弱い」を卒業しよう

コンペで実力を出せないのは、あなたが弱いからではありません。

体には3つの信号モードがあり、緊張すると黄や赤に切り替わる。これは誰にでも起きる、生き残るためのしくみです。50代以降はその影響が出やすくなるという、生理的な条件が重なっているだけです。

しくみを知り、足の裏と呼吸で体に働きかけ、意識の向け先とルーティンを整える。

これだけで、コンペの景色は確実に変わっていきます。「メンタルが弱い」という長年の思い込みを、今日から手放してみませんか。

笠原彰プロフィール:

https://lit.link/mentalabo
https://lin.ee/9ksbwdg
作新学院大学メンタルトレーニング教授
とちぎスポーツ医科学センター協力心理相談員 https://tis.or.jp/contact/
プロメンタルコーチ
自己肯定感養成プロコーチ
ライフバランスアーティスト
健康運動指導士
メンタルヘルスファーストエイダー
メンタルヘルス運動指導員
1252公認 女子アスリートコンディショニングエキスパート検定1級
アスリート、コーチ、指導者、ビジネスマン、音楽家など、人生をより豊かにしたい全ての方の挑戦をサポートします。
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