ASDの僕がAdobe Stockを10年やって、稼げなかった話(と、それでも続けられた理由)
放置していたアカウントに、売上がたまっていた。
その事実に気づいたのは、つい先日のことだ。
AI副業のことを調べているうちに、ふと思い出した。
「そういえば昔、ストックフォトに登録したな」と。
もう何年も、ログインすらしていなかった。
パスワードも忘れていた。
本気でやろうとしていた時期があったことすら、半分忘れていた。
再設定して、おそるおそる管理画面を開いた。
そこには、僕が忘れているあいだも、静かに積み上がっていた数字があった。

【総DL:793 報酬:$808.6(日本円¥160で換算すると:129,376円)】
10年間と考えたら大きな額じゃない。
胸を張れるような金額では、まったくない。
でも、ゼロじゃなかった。
放置して、忘れて、何ひとつ手をかけていなかったのに。
僕が止まっているあいだも、それは止まっていなかった。
その瞬間に感じたことを、この10年の記録と一緒に、ぜんぶ書いておきたくなった。
「稼げなかった話」として。
そして、「それでも残ったものの話」として。
10年前、なぜ僕はストックフォトを選んだのか
正直に言うと、最初の動機は前向きなものではなかった。
人と話さなくていい。
打ち合わせがいらない。
誰かに「早くして」と急かされない。
評価されなくても、ただ淡々と積んでいける。
当時の僕にとって、それは「自分が壊れずにいられそうな働き方」に見えた。

あとから自分がASD(自閉症スペクトラム)だと知って、あの直感の意味がやっとわかった。
そして、なぜ放置したのか
理由は、たぶん想像どおりだ。
売れなかった。
何枚アップしても、反応が薄い。
何が良くて何がダメなのか、僕には「空気」が読めなかった。
そのうち、心がすり減った。
うつの波が来て、ストックフォトのことなんて考えられなくなった。
ログインしなくなり、やがて、存在ごと忘れた。
ここまでが、僕の「稼げなかった話」だ。

ここから先に書くのは、「それでも残ったもの」の全部。
10年分の失敗と、放置していたのに消えなかった売上の正体と、ASDだったからこそ向いていたのかもしれない、という発見の記録です。
これから始めようとしている人にも、つまずかない登録の手順として役に立つように書きました。
そして、もう一度はじめようとしている、過去の自分のためにも。
1. 10年前、登録したあの日(今からやる人が、つまずかない登録ガイド)
まず、これから始める人のために、登録の流れをいちばんやさしく書いておく。
10年前の僕がここでつまずいたから、同じ場所で止まってほしくない。
Adobe IDをつくる Adobe IDは、Adobe公式サイトの右上にある「ログイン」から「Adobe IDを取得」をクリックし、氏名、メールアドレス、生年月日などを入力するだけで無料で作成できます。登録したIDは、ソフトの体験版や無料アプリの利用に使えます。(持っていれば、それを使用してください)
Adobe Stock コントリビューターサイトから申請する Adobe Stockのコントリビューターサイトから作品を販売申請するには、専用ポータルにログインし、作品のアップロードとメタデータの入力を行ってから「審査を提出」します。審査をスムーズに進めるための具体的な手順は以下の通りです。Adobe公式YouTube
本人確認・税務情報の登録を済ませる Adobe Stock(アドビストック)での本人確認および米国税務情報(W-8BENなど)の登録は、Adobe Stock コントリビューターポータルから行います。これらの手続きを完了させないと、米国での売上に対して最大30%の源泉徴収が適用されてしまいます。
作品をアップロードする Adobe Stock(アドビストック)に作品をアップロードするには、Adobe Stock コントリビューターへアクセスし、お使いのAdobe IDでログインします。画面上部の「アップロード」をクリックし、販売したい写真やイラストをドラッグ&ドロップするだけで簡単に行えます。(サイトをブックマークに保存しておくと便利です)
タイトル・タグ(キーワード)をつけて、審査に出す Adobe Stockで作品を審査に出す際は、「写真やイラストの内容を的確に伝える文章(タイトル)」と「検索されやすい単語(キーワード・タグ)」をセットにして登録します。このメタデータを適切に入力することで、購入者の目に留まる確率が大幅に上がります。Adobe公式YouTube
つまずきやすいのは、3番と5番。
【最も詰まったところ:税務情報の英語表記/画像のサイズ要件/タグの付け方がわからず最初の数枚で心が折れた】

ひとつだけ先に言っておきたい。
最初の審査落ちは、誰にでも来る。
あれは「あなたがダメ」という意味ではない。
ただの仕様だ。
10年前の僕は、それを真に受けて全部消してしまった。
あなたは消さないでほしい。
2. ASDの僕が、やらかした失敗の話
ここからは、笑ってもらってもいい失敗の記録。
【失敗①:完璧主義で、出品ペースが止まった話】
一枚一枚を完璧に仕上げようとして、結局ほとんどアップできなかった。
「ちゃんとしてから出す」は、僕にとっては「永遠に出さない」と同じだった。
【失敗②:売れ筋の"空気"が読めなかった話】
何が求められているのか、最後までピンとこなかった。
自分が「いい」と思うものと、世の中が「欲しい」と思うものが、ずれていた。

結論から言うと、「この写真を買って何に使うか」が買い手側に存在しないのが最大の理由で、そこに加工・構図の減点が重なっています。
整理すると4点です。
① 用途(買われる理由)が設計されていない
ストック写真は「作品」ではなく、広告・記事・Webデザインの部品として買われます。
この画像には主役となるコンセプトがなく、文字を載せるコピースペースも設計されていないため、デザイナーが使う場面を想像できません。
しかも風景単体はストック内で最も飽和したカテゴリで、絶景級・超有名ランドマーク以外はほぼ検索結果にすら浮上しません。
② 被写体の検索需要が小さい
山は浅間山です。ご当地の山は検索ボリュームが富士山の比でなく小さく、買い手は地元の観光・自治体・不動産系くらい。その数少ない買い手が選ぶのは「ベストシーズンの決め写真」です。
この画像は雪解けの茶色い畑+裸木+まだら残雪という季節の谷間で、「冬の美しさ」も「春らしさ」もなく、検索ニーズ自体がほぼ存在しません。
③ 加工が古く、不自然
空が不自然な濃紺で、周辺減光によるムラが大きい(偏光+HDRの典型的な失敗パターン)
稜線や枝まわりにHDR特有のハロー、前景の残雪にマゼンタ被り
この「2010年代前半のHDR風トーンマッピング」は現在の買い手に最も敬遠される絵作りで、自然なRAW現像が主流の検索結果に並ぶと一目で浮く
④ 前景が「汚れ」として機能している
画面中央手前の石・瓦礫の山が視線を止める異物になっており、畑のまだら雪も「美しい残雪」ではなく単に薄汚れて見えます。右端の建物も整理されておらず、風景写真として画面の掃除ができていません。
もし同じ画像を売るなら:新雪直後の快晴の朝に、HDRなしの自然な現像、前景の異物を避けた構図で、横位置+空にコピースペースを取った縦位置の2枚組にし、英語タイトル・キーワードで出す。
ここまでやって「ご当地需要を細く拾える」
【失敗③:数字に過集中して、燃え尽きた話】
売上のグラフを一日に何十回も見た。
0が続くと、世界に拒否されている気がした。
そして、ある日ぷつりと、何もできなくなった。
3. これは絶対にやらないほうがいい、と今の僕が思うこと(5つ)
10年と、放置期間を経て、はっきり言えること。
審査落ちで全部消さない。 落ちたのは一枚であって、あなたではない。
売上グラフを一日に何度も見ない。 数字は、見る回数では増えない。心だけが減る。
トレンドだけを追って、自分の得意を捨てない。 続かないものは、結局アップが止まる。
一日で大量にアップして、燃え尽きない。 「少しずつ、長く」が、この仕事の本当の強さ。
「稼げないからやめる」と即断しない。 この理由は、次の章で書きます。
4. 放置していたのに、なぜ売上は残っていたのか
これが、今回いちばん書きたかったこと。
僕が忘れているあいだも、過去にアップした作品は、サイトの中で生き続けていた。
誰かがそれを見つけて、使ってくれていた。
僕が止まっても、過去の僕が、勝手に少しずつ稼いでいた。
これは、ストックフォトという仕組みの本質だと思う。
一度つくったものが、資産として残る。
働き続けなくても、ゼロにならない。
うつの波があって、ずっと同じペースでは働けない僕にとって、
「止まっても消えない収入」というのは、想像以上に大きな意味があった。
「稼げなかった」とずっと思っていた。
でも本当は、「壊れても残る働き方」を、10年前の自分が仕込んでくれていたのかもしれない。
5. ASDの特性は、たぶんこの仕事に向いていた
放置していた売上を見て、考えが変わった。
ASDの特性は、ストックフォトと相性が悪いどころか、むしろ強みになる部分があった。
過集中:ハマった日は、一気に大量に仕上げられる。波があってもいい仕事だから、これが活きる。
反復への強さ:同じ作業(タグ付け、書き出し)を、苦にせず正確に繰り返せる。
細部へのこだわり:メタデータやキーワードの精度は、検索される作品の生命線。ここで几帳面さが効く。
ニッチの深掘り:ひとつのテーマを延々と掘れる。実は、ニッチこそ競合が少なくて残りやすい。
人と関わらなくていい:これは弱みではなく、この仕事においては、ただの適性だ。
苦手なこと(空気を読む、流行を追う、自分を売り込む)は、たしかにある。
でも、向いていることのほうが、ちゃんとあった。
6. 僕が投稿のときに、ひそかに守っていたこと

【「五箇山・相倉の合掌造り集落」この画像が、最も売れている理由】
これは駄目な画像のちょうど裏返しで、「誰が・何のために買うか」が最初から存在する写真だからです。
売れる構造を4点に整理します。
① 被写体そのものに検索需要がある
世界遺産「白川郷・五箇山の合掌造り集落」は、買い手が能動的に検索するランドマークです。
"gassho-zukuri" "japan village" "world heritage japan" "japanese countryside" といったキーワードには、旅行会社・インバウンド媒体・出版社という「予算を持った買い手」が常時います。
前回の浅間山との差は腕前以前に、土俵(検索ボリューム)の差です。
② 用途が一瞬で想像できる
旅行特集のリード写真、観光PRバナー、訪日向けサイト、ガイドブック、教科書の「日本の伝統集落」
デザイナーが見た瞬間に使い道が浮かびます。
俯瞰気味の引き構図で集落全体・田畑・山との関係が一枚で説明できる「説明力のある画」なので、記事の冒頭にそのまま置ける。
これがストックで一番強い性質です。
③ 風景でありながら「コンセプト」を内包している
単なる山村ではなく、日本の原風景・ふるさと・伝統的な暮らし・里山という概念を1枚で背負っています。
買い手は「五箇山の写真」としてだけでなく「伝統的な日本」「ノスタルジー」という抽象的なテーマの素材としても買う。
風景写真が売れる数少ないパターンです。
④ 状態・競合・仕上げの三拍子
季節がピーク:真夏の濃い緑+晴天で、村全体が瑞々しい「ベストシーズンの決め写真」になっている
供給の隙間:合掌造りは冬のライトアップ・雪景色が圧倒的な激戦区。夏の緑版は相対的に競合が薄く、しかも通年使える
現像が自然:前回のHDRと違い、緑の彩度が現実の範囲内でハローもなく、印刷にも耐える。検索結果に並んだとき「浮かない」
この強みを横展開するなら:同じ「検索されるランドマーク×ベストシーズン×説明的構図」の方程式で、相倉の他季節(雪・稲刈り・朝霧)、菅沼集落、ほかの重伝建地区を揃え、それぞれ縦位置+コピースペース版を追加する。
売れている1枚は「当たりキーワードの証拠」なので、その周辺を面で埋めるのが定石です。
タグは「自分が検索する側だったら何と打つか」で考える
1テーマで複数枚を、構図や色を変えて出す
調子のいい日にまとめてアップ予約しておき、悪い日は何もしない
「今日は1枚も出せなかった」を責めない
7. これから始める人へ。そして、もう一度はじめようとしている自分へ
この記事は、稼ぐ方法の話ではなかったかもしれない。
10年やって、稼げなかったのだから。
でも、放置しても消えなかったあの数字は、僕にこう言っている気がする。
「壊れても、止まっても、ちゃんと残る働き方は、ある」と。
これから始める人へ。
最初は売れない。
それが普通です。
だから、売れないあいだも壊れないペースで、少しずつ積んでください。
あなたが止まった日も、過去のあなたが稼いでくれる日が、いつか来ます。
そして、もう一度はじめようとしている僕自身へ。
今度は「稼ぐため」じゃなく、「壊れずに積むため」に、もう一度ここから始めてみる。
この続きは、連載「ASD×Adobe Stock 10年の全記録」で、ひとつずつ書いていきます。
よかったら、アドビストックも見ていってください。
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