ナツキは数千回出産した ―― AIと妄想の外部化について
AIに物語を書かせて、自分で読む。しかも他人には見せられない類のやつを。そういう人が想像以上に多いという研究が出ました。
米ワシントン大とコロラド大が、無料の会話AIに集まった約57万件のやりとりを調べています。研究公開に二度同意させたうえで集めた記録なので、勝手に覗いたわけではない。分析すると、会話の3件に1件が何らかの物語づくりで、全体の1割が性的に露骨な内容だった。
面白いのはその先です。物語づくりの8割超を、わずか上位2%の常連が生んでいた。補正をかけると、34%あったはずの物語の割合が7.1%まで落ちる。ごく少数の熱量が、全体像を膨らませて見せていただけ。
その常連の中に、極端な一人がいました。あるゲームに登場するナツキというキャラが突然出産する場面を、数か月で数千回も生成させていた。同じ導入から、毎回ほんの少し違う結末が返る。ここで自然な疑問が湧きます。そんなに気に入らなくて撮り直しているのか、それとも毎回の差分そのものが楽しいのか。論文は後者に寄せて書いています。救急隊員が全部さばく回もあれば、仲間が自力で助ける回もある。同じ話が毎回少しだけ新しくなる、その差を味わうこと自体が目的だった、と。
要は妄想の外部化です。
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