マドリガルの おかかえバッグ
――リールで初めて知って、旅のはじまりに立ち寄って、ホテルでぽちり。そして翌週に届いた話
ある夜、インスタのリールでふと目にとまったバッグ。
くるりと揺れるフォルム、控えめな金具、柔らかな革――
なんでもないのに、なんだかとても、良かった。
調べてみると、「マドリガル」というセレクトショップ。
どうやらオンラインが中心で、実店舗は大阪に数店舗のみ。
そしてあのバッグには、“おかかえバッグ”という名前がついていた。
それはマドリガルが名付けた、ブランドオリジナルの呼び名。
「お気に入りを“おかかえ”にして、ずっとそばに」――
そんな想いが込められている気がして、名前だけでももう好きだった。
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ちょうどその頃、大阪万博へ行く予定ができた。
「これはもう、見に行けということだな」と思い立ち、
旅のはじまりにマドリガルを訪れることにした。
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お店は、石づくりのレトロな雑居ビル。
受付にはご年配のおじいちゃん。
フロア案内には弁護士事務所、画廊、そして散髪屋。
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一階奥にある静かな階段。
足を踏み出すたびに、コン、コンと足音が響く。
廊下の端には、大きな振り子時計が静かに揺れていた。
このビルだけ、別の時間を生きているようだった。
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そしてその先に、マドリガルの扉。
着いたのは、閉店10分前。
私は最初にこう伝えた。
「旅行中で荷物が多くて……今日は見るだけなんです」
それでもスタッフさんはにっこりと、
「もちろんです。どうぞゆっくりご覧くださいね」と迎えてくれた。
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バッグを見るだけのつもりが、
気づけばジャケットやコートも試着させてくれていた。
袖を通すたび、ふわっと気分が変わる。
服って、やっぱり「着てこそ」だなあと思った。
帰り際には、気に入ったジャケットの型番とサイズを、
コースターのような丸いショップカードに手書きでメモして渡してくれた。

そしてお店を出るとき、
スタッフさんがふわりと声をかけてくれた。
「万博、楽しんでくださいね。」
その一言で、旅の気分が少しだけ高鳴った。
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もちろん、リールで見たあの“おかかえバッグ”とも対面。
やっぱり素敵だった。でも、
「ただいま在庫がなく、次回入荷は8月予定です。」
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がっかりしながらホテルへ戻り、
湯船に浸かっても忘れられず。
そしてその夜、ホテルのベッドでそっとぽちりと予約。
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「夏まで待つか」と思っていたら、
なんと翌週に届いた。
箱を開けた瞬間、思った。
“おかかえバッグ”という名前は、やっぱりぴったりだった。
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まだ出番は数えるほどだけど、
すでにこれは、これからの私にとって
"ずっとそばに置いておきたいバッグ”になる予感しかない。
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持つたびに思い出すのは、
静かな階段と響く足音、振り子時計のリズム、受付のおじいちゃん、レトロなポスト。
そして「見るだけです」と言った私にも、丁寧に時間をくれたスタッフさん。
そして、「万博、楽しんでくださいね。」と送り出してくれたあの笑顔。
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これは、ただの買い物じゃなかった。
「似合うもの」と一緒に、「静かであたたかい時間」まで持ち帰った日。
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