たそがれ列車の帰り道
こんばんは、りかです🌙
みかんさんのお題「たそがれ列車」から、小さな物語がうまれました。
企画はこちら⬇️
静かな夕暮れの旅を、そっと置いていきます🚃✨
たそがれが街を薄紫に染めはじめた頃、誰もいないはずのホームに、古い列車がすべり込んできた。
時刻表には載っていないはずの一両編成。
扉が静かに開く。
風もないのに、夕暮れの匂いだけがそっと流れこむ。
その列車は、誰かを迎えるように、静かな気配をまとって停まった。
理由は分からない。
けれど、胸の奥がふっと軽くなる感覚がして、私は吸い寄せられるように乗り込んだ。
車内は薄い霧に包まれていて、座席に座る乗客たちは輪郭だけが淡く光っていた。
気配はあるのに、“人の世界”のざわめきはどこにもない。
列車がこくりと揺れ、動き出す。
窓の外には、懐かしいようで、でもどこか現実とは少しズレた街並みが流れていった。
思い出と、これからの景色が混ざり合ったような、淡い色をした風景。
「忘れたものを探しているんだよね?」
右隣に目を向けると、そこには光とも影ともつかない小さな存在が座っていた。
声は幼いのに、言葉の奥はとても古く優しい。
「大丈夫。なくしたように思ってるだけで、本当はちゃんと、あなたの中に残ってる。」
その声が胸に触れた瞬間、窓の外の景色がゆっくり輝きはじめた。
夕暮れの道、言えなかった言葉、
置いてきた願い――
ばらばらに散らばっていた“何か”が光の粒になって流れ、列車の先へ吸い込まれていく。
私はそっとつぶやいた。
「……私、ずっとこれを探してたんだ。」
影は静かにうなずき、夜がはじまる空を指さした。
「もう大丈夫。ここからは“戻る”ほうの旅だよ。」
気づけば影は消えていて、列車は静かな夜のホームに停まっていた。
降り立つと足元に、ひとつだけ光の粒が転がった。拾い上げると、それは心の奥で置き忘れていた小さな願いの、あたたかさ。
夜風がそっと頬を撫で、私は深く息を吸う。
――たそがれ列車は、過去ではなく“未来”をそっと手渡してくれる列車だったのかもしれない。
たそがれの時間って、少しだけ心が素直になりますよね。
今日のあなたに、やさしい風が吹きますように🍃✨
読んでくださり、ありがとうございます。
