オーロラの駅
北の空にオーロラが揺れる夜だけ現れる、小さな駅がありました。
その名も、オーロラの駅。
昼間はいくら探しても見つかりません。
けれど、夜空が緑や青の光で染まると、雪原の真ん中に小さなホームが姿を現します。
この駅にやって来る列車は、とても不思議でした。
煙も出ません。
石炭も積んでいません。
では、何で走るのでしょう。
駅長さんは、笑いながら答えます。
「この列車は、オーロラの光で走るんですよ。」
夜空からこぼれ落ちる光を、屋根の上にある大きなガラスが集めます。
緑色の光が集まると、列車はゆっくり目を覚まし、
紫色の光が流れる頃には、静かに走り始めます。
シュッ――。
汽笛は鳴りません。
代わりに、オーロラがさらりと揺れる音が、出発の合図です。
列車は山を越え、森を抜け、凍った湖の上を滑るように進みます。
窓の外では、夜空いっぱいのオーロラがゆらゆらと踊っています。
「わあ……。」
乗客たちは景色に見とれ、誰もおしゃべりをしません。
静かな車内には、レールを渡る優しい音だけが響いていました。
やがて東の空が少しずつ明るくなり始めます。
するとオーロラも、ゆっくりと空へ溶けていきました。
光が消えると、列車は静かに駅へ戻ります。
「今日も無事に帰ってきましたね。」
駅長さんがそう言って車体をなでると、列車はうれしそうに小さくきらめきました。
だから今でも、北の空に美しいオーロラが現れた夜には、不思議な列車が静かに旅をしているそうです。
もし旅先で、どこからともなくレールを走る優しい音が聞こえたら。
それはきっと、オーロラの光をいっぱいに集めた列車が、「オーロラの駅」を出発した合図なのかもしれません。
片桐みかんさんのこちらのお題に参加させていただきました👇️✨️
