はじめて会ったその人に、「産んでくれてありがとう」と言われた日
はじめて会ったその人に、「産んでくれてありがとう」と言われた日
子どもたちと話していて、
胸の奥が熱くなる瞬間がある。
それは、この子たちがどんな人と出会い、
どんなふうに大切にされて生きているのかを知るときだ。
先日、娘と画廊に出かけた帰り道、
久しぶりにゆっくり話をした。
何気ない近況のはずなのに、
聞いているうちに、心の奥が満ちていく。
娘のまわりには、たくさんの友人や仲間がいる。
その中でも、何度聞いても心に残る人がいる。
はじめてその人に会ったのは、
娘が大学を卒業する頃だった。
それぞれが新しい道へ進んでいく、
少し不安と期待が入り混じる、そんな時期。
その日、彼女は初対面の私に手を広げてまっすぐ近づいてきて、
ためらいなく、ぎゅっと抱きしめてくれた。
そして第一声。
「〇〇ちゃんのお母さん、
〇〇ちゃんを産んでくれて、ありがとうございます!」
あまりにもまっすぐで、
あまりにも温かくて、
あまりにも思いがけない言葉だった。
初めてかけられた言葉に、驚きとともに、胸の奥がいっぱいになって、
しばらく何も言えなかった。
娘が大学時代、
どんな時間を過ごし、
どんな人たちと出会い、
どんな関係を育ててきたのか。
そのすべてを、
たった一言で教えてもらったような気がした。
大学に入った頃、
娘のまわりには十数人の仲間がいたという。
そこから少しずつ人が増え、
つながりが広がり、
今でもそれぞれの場所で関係が続いている。
娘の話の多くは、いつも「人」の話だ。
その一つひとつを聞くたびに、
知らなかった世界が静かに広がっていく。
その日の話の中で、心に沁みたのは
その抱きしめてくれた友だちが、オーストラリアから一時帰国したときのことだった。
集まったのは、50人もの仲間たち。
大きなトランクの中には、
その一人ひとりへのプレゼントが詰められていたという。
遠い国で暮らしながら、
仲間の顔を思い浮かべて選んだものたち。
その重さごと、持ち帰ってきたのだと思うと、胸が熱くなる。
まっすぐで、あたたかくて、
人と人とを自然につないでいく人。
そんな素敵な友だちが娘のそばにいて、今も変わらず仲良くしてくれることを知るたびに、 心の奥が静かに満たされていく。
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子どもを育てる時間は、振り返るとあっという間だった。
手をつないで歩いた日々も、
笑い合った時間も、
いつの間にか遠くなっていく。
母として、ずっと願ってきたことがある。
どうか、この子たちが
良い人たちと出会えますように。
この子たちを大切にしてくれる人に、
恵まれますように。
親ができることには、限りがある。
どれだけ愛しても、
どれだけ守りたいと思っても、
その先にどんな人が待っているのかは、親には選べない。
だからこそ、
「産んでくれてありがとうございます」
その友だちからいただいたあの言葉は、 私にとって一生忘れられない贈り物になった。
娘が出会ってきた人たちが、
娘を大切にしてくれていること。
そして、娘自身もまた、
その人たちを大切にして生きていること。
この子は、この世界でちゃんと愛されて生きている。
そう思えたとき、
母であることの喜びが、静かに胸に広がった。
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子どもたちへ。
母にしてくれて、ありがとう。
母となって、たくさんの人たちとの温かいつながりの中で、毎日暮らせていることに心から感謝の気持ちがわいてくる。
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※2026年4月15日 リライト
