うつろいの岸辺にて
風が変わった。
かつては季節を運んでいた風が、
今は喧騒と焦燥を巻き上げてゆく。
街の灯は眠らず、
言葉は速く、浅く、
心は置き去りにされたまま、
誰もが何かを追い、何かを失っている。
それでも、ふとした瞬間に、
雨の匂いに懐かしさを覚え、
落ち葉の舞いに胸が疼くのはなぜだろう。
それは、忘れられぬ「もののあはれ」。
移ろいゆくものにこそ、
命の深さと、哀しみの美が宿ることを
私たちの奥底は知っている。
変わりゆく世の中で、
変えてはならぬものがある。
それは、感じる力。
それは、静かに涙する心。
あはれとは、弱さではない。
あはれとは、強さのかたち。
壊れやすきものを、壊さぬように抱く手のぬくもり。
それが、私たちの誇りだったはずだ。
今、再び問う。
この風の中で、私は何を守るのか。
この光の速さの中で、私は何を見つめるのか。
答えは、沈黙の中にある。
そして、あはれの中にある。
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