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「北欧のあかり展」で学んだ照明を楽しむヒント5選。

暗い部屋に住むことを余儀なくされた我々の先祖は、いつしか陰影のうちに美を発見し、やがては美の目的に沿うように陰影を利用するに至った。

谷崎潤一郎『陰翳礼讃』


日本橋高島屋で開催されていた「ヒュッゲな暮らしをデザイン北欧のあかり展」に行ってきました。


▼ 展覧会リンク

https://www.takashimaya.co.jp/store/special/hokuou_akari/


ポール・ヘニングセン|PHスノーボール


「ヒュッゲ」とは、居心地の良い時間や空間を表すデンマークの言葉。

北欧の人々は、高緯度ならではの気象条件のもと、間接照明やキャンドルのあかりを上手に活用しながら、ヒュッゲな暮らしを楽しんでいます。

日本は気象条件こそ異なりますが、北欧のあかりを取り入れることは、デザインと実用性の両面で心地良く暮らすためのヒントになると思います。



今回は、「北欧のあかり展」で学んだ照明を楽しむヒント5選についてお話しします。

展覧会で撮影した北欧の名作照明の数々とともにお届けします。ぜひ最後までご覧ください。


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① 「暗さ」を中心に考える


ポール・ヘニングセン|PHアーティチョーク


照明を楽しむヒント1つ目は、「「暗さ」を中心に考える」こと。

照明と聞くとどうしても「明るさ」に目が行きがちですが、北欧の人々は明るさを確保するのではなく、適度な暗さ(陰影)を確保することを中心に考えます。

まず自然の暗さがあって、そこに必要な分だけ人の手であかりを灯していくのです。


ヴァーナー・パントン|ペンダントランプ〈フラワーポット〉


暗さによって光は際立ちます。光自体が見せる淡い表情や、光に照らされた物の陰影に美しさを感じるのです。

暗がりの中にぽうっと浮かぶ優しいあかりは、落ち着きや安心感をもたらす効果もあります。

また暗さを中心に考えるため、北欧では「多灯照明」が前提です。



<多灯照明>
複数の照明を組み合わせて
空間のあかりを確保すること。

部屋全体はしっとりとした暗さに包まれながらも、キッチンや読書スペースなどの作業場所には適切な明るさを、という考えで複数の照明を取り入れます。

日本の住宅で多く見られる「明るさ一辺倒」ではなく、暗さと明るさをうまく使い分けてこそ快適な空間を作れるのだと思います。


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② 間接照明をつないで「グラデーション」をつくる



先ほども触れましたが、暗さを中心に考えると、部屋の中に「暗がり」が必要になります。

天井照明一灯で照らす場合、均一な光が部屋全体に行き渡り、明るさはありますが陰影は生まれません。

どこか表情に乏しくのっぺりした印象で、物足りなさを感じます。



照明器具から発せられた光は、美しいグラデーションを伴って壁や床を伝い、ゆるやかに暗がりへと消えていきます。

そして消えたと思う頃に、その先にある別の照明の光のグラデーションがはじまるのです。まるで、光の島々を渡っていくように。



北欧ではこのようにお部屋の中で間接照明のグラデーションをつなぎ、全体としてあかりの演出を完成させています。

そのためには、お部屋の中に照明をバランスよく配置することが重要。偏りがあると、過度な対比が生まれて違和感につながってしまいます。



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③ 「眩しさ」は必要ない


アルヴァ・アアルト|A330S〈ゴールデンベル サヴォイ〉


照明を灯すうえで「あかり」は必要ですが、「眩しさ」は必要ありません。

北欧の人々は、この2つを明確に区別しています。


ポール・ヘニングセン|PH5


たとえば、ポール・ヘニングセンが設計した名作照明「PH5」

幾層にも重なるシェードが美しいペンダントライトですが、見心地の良さもさることながら、顔の近くで灯しても眩しさを感じないよう緻密に設計されています。

シェードの曲線によってどの角度からも光源が見えず、眩しさを感じない仕組みです。

一方で単純に光を覆い隠しているというわけでもなく、適切な光量が拡散されるよう、シェードの角度が計算されています。


PH5の断面図


日本で一般的に知られている「一畳あたりに必要な明るさ = 30〜40W」は、少し眩しすぎる気もします。

一度思い切って光量を落としてみると、意外に不便を感じず、生活が変わるかもしれません。

また、お部屋の中に強い対比があると不快な眩しさにつながりますので、やはり優しく穏やかな光のグラデーションを作ることが大切です。


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④ 「自然」と調和させる



北欧の人々は、「キャンドル」のあかりとともに暮らしています。

北欧ではキャンドルは特別な日に灯すものではなく、日常的に使う身近な存在。

夜はもちろん昼間でもつけますし、落ち込んだ時やリフレッシュしたい時にもそっと火を灯すのだそうです。

キャンドルや暖炉といった炎の揺らぐ生きた光と照明のあかりの組み合わせが、美しい情景を生み出します。


パーヴォ・ティネル|ペンダントランプ 1965


また、北欧では窓辺に照明を配置して外の景色との調和を楽しみます。

北欧では昼間でも間接照明を灯すことが多く、窓から差し込む自然光と照明のあかりとの調和を味わうのだそう。

外に広がる緑の風景とあかりを調和させたり、窓からの光を受けつつ読書灯を灯して本を読んだりと、自然の光をうまく活用する文化があります。


ヴァーナー・パントン|ファン シェル


自然界に存在するあかりも、生活のあかりの一部。

それらをうまく活用し、人間のあかりとの「調和」を楽しむと、より照明の幅が広がるように思います。


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⑤ 「暮らしのリズム」に合わせて光を変える


ターエ・クリント|ペンダントランプ モデル1


北欧の人々は、あたたかみのあるオレンジ色の光を好みます。

くつろぐ空間には、パキッとした白いあかりより、あたたかみのあるオレンジのあかりがよく似合いますよね。

オレンジ色の夕焼けの光は、水平線近くの低い位置で現れます。

あたたかいあかりが低い位置にあることで落ち着きを感じるのは、私たちのDNAに刻まれた自然の摂理でしょう。



ですが、必ずしもオレンジであれば良いというわけでもないようです。

北欧の人々は、「暮らしのリズム」にあわせて光の色を使い分けています。


コペンハーゲンにある照明ブランド「ルイスポールセン」のオフィスを例に取ってみましょう。

空間全体の明るさを担うシーリングライトは、生体リズムに合わせた調色機能つき。

朝はあたたかみのあるオレンジの光に、午前中は徐々に白昼色のようになり、少し疲れの見える昼食後はより寒色に。

そして午後になると、再び光はあたたかみを取り戻していきます。


ヴァーナー・パントン|ペンダントランプ〈フラワーポット〉


たしかに、何が作業に集中したい時には青白い光の方が適しています。

このように、生活や人体のリズムに合わせて光の色や強さを使いこなすことで、健康かつ豊かに暮らしているのです。


* * *


あの名作家具を体感。「北欧のあかり展」の見どころ


アルネ・ヤコブセン|スワンチェア


さて、ここまで「北欧のあかり展」で学んだ照明を楽しむヒントについてお話ししてきました。

今回の展覧会では、北欧の名作照明はもちろんのこと、数々の名作チェアにもお目にかかることができました。

中には憧れのチェアに座れるブースもあり、北欧家具好きにとっては非常に楽しめる展覧会になっています。

ということで、私が展覧会を訪れて「おお〜っ」と感動したチェアや照明の写真とともに、今回の記事を終えたいと思います。


アルヴァ・アアルト|パイミオチェア


ハンス・J・ウェグナー|PP503〈ザチェア〉


ヴァーナー・パントン|パントンチェア


アルネ・ヤコブセン|エッグチェア
実際に座ることができて感動、意外に硬質な感じだった


内山章一|エニグマ545
今回の展覧会でエニグマを知ったことが1番の収穫


ポール・クリスチャンセン|ペンダントランプ モデル172〈サイナスライン〉


ポール・ヘニングセン|PH5 リテイク
製造時に傷などがつき弾かれたものを再利用している


最後までお読みいただきありがとうございました。



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