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2026年5月16日詳解①:高齢癌患者プレハビリテーション:「介入強度」が効果を決めるエビデンス再評価

皆様
本記事に関心を持っていただきありがとうございます。
2026年5月16日ー高齢者のフレイル評価と周術期管理の詳解①:高齢癌患者プレハビリテーション:「介入強度」が効果を決めるエビデンス再評価についてです。


Executive Summary

Already Known(従来の理解)
プレハビリテーション(術前最適化)は、運動・栄養・心理社会的支援を組み合わせた多モード介入として、術後合併症低減と機能回復促進に寄与する周術期戦略です。PREHAB試験(JAMA Surg 2023)は国際多施設RCTで、4週間の院内監視型多モードプレハビリが結腸直腸癌術後の重篤合併症を有意に低減(17.1% vs 29.7%、OR 0.47)し、ランドマーク試験として位置づけられてきました(1)。一方、高齢者・フレイル合併患者を主対象とした試験では、6分間歩行や在院日数で「有意改善なし」の報告も並立し、メタ解析の結論は割れていました。

What's New(この知見が加えたこと)
2025-2026年にエビデンス基盤が大きく動きました。中国15施設で65-85歳のフレイル合併(Geriatric 8 ≤14)胃癌手術患者347名を対象としたGISSG+2201試験は、2週間以上の多モードプレハビリで30日合併症率を28.7%→17.2%に有意低減(P=.01、遵守率93.75%)しました(2)。カナダ13施設のJAMA Surg 2025在宅型RCTは、CFS≥4の60歳以上待機的手術患者を対象に、コーチ支援型在宅プレハビリの実効性を多施設プラグマティック設計で評価しました(3)。大阪国際がんセンター中心のYamamoto試験はHMB補充を含む多モード介入で除脂肪体重保持を示すも、機能・術後転帰差は認めませんでした(4)。スコーピングレビュー13研究と12試験n=1,229のメタ解析は、「高強度・監視付きプログラムが合併症低減・在院短縮を達成する一方、低強度・最小限監視介入では術後便益が限定的」というパターンを明確化しました(5,6)。

So What(だから何が変わるか)
「プレハビリは効くか」という問いは、「どの強度・誰に・どう実装すれば効くか」へ移行しました。日本のホスピタリスト・地域連携医にとって、「短期間・自宅自主トレ・指示のみ」型の紹介では効果は限定的であり、運動療法士・栄養士・看護師による監視付き多モード介入の構造化と、本邦の高齢化・地理的制約に適合した在宅・遠隔支援モデルの整備が次の課題となります。


1. テーマの位置づけと意義

高齢化する手術患者群において、フレイル・サルコペニアは術後合併症・機能低下・死亡の独立リスク因子として確立しています。日本では2025年時点で大腸癌・胃癌の根治手術患者の過半数が65歳以上を占め、フレイル合併症例の周術期管理はホスピタリストの日常業務の中心に位置づいています。米国麻酔科学会の2025年版周術期高齢者ケアPractice Advisoryはプレハビリテーションを「個別介入の集合」ではなく「フレイル・認知機能評価から始まる周術期パッケージの中核要素」として位置づけました(7)。一方で、入院期間が欧米より長い本邦の臨床現場でも、プレハビリの保険適用は外来では限定的であり(8)、「効くと信じて広く実装する」段階から「強度・対象・実装方式を最適化する」段階への移行が求められています。本レポートは、2025-2026年の高インパクトRCTおよびエビデンス統合研究を踏まえ、プレハビリの効果のドライバーを特定し、臨床医・施設管理者がエビデンスに対する確信度をどう校正すべきかを論じます。


2. 論文の深掘り分析

2-1. 従来の標準的理解

プレハビリテーションの概念は、Carliらモントリオール大学グループが2010年代に提唱した「3要素型プレハビリ(trimodal prehabilitation)」、すなわち運動・栄養・心理社会支援の3本柱が出発点となります。理論的根拠は、フレイルの生物学的基盤として確立されたFriedらの表現型定義(5項目:意図しない体重減少、疲労感、握力低下、歩行速度低下、低活動)と一致します(9)。すなわち、術前の限られた期間(多くは2-6週間)に運動容量・栄養状態・心理的レジリエンスを「最適化」することで、手術侵襲に対する生理学的予備能を底上げするという発想です。

2023年6月にJAMA Surgery誌で発表されたPREHAB試験は、この分野の最も影響力のあるランドマーク試験となりました(1)。Molenaarら(オランダ・カナダ・スペイン・イタリア・デンマークの国際共同)は、転移のない結腸直腸癌待機的手術患者251名(年齢中央値69歳)を、4週間の院内監視型高強度多モードプレハビリ(週3回の高強度運動、栄養介入、心理支援、必要時喫煙中止支援)または標準ケアにランダム化しました。主要評価項目は包括的合併症指数(CCI、Comprehensive Complication Index)スコアおよびCCI>20の患者割合、ならびに術後4週時点の6分間歩行距離(6MWD)です。

結果として、重篤合併症(CCI>20)はプレハビリ群17.1%(21/123)に対し標準ケア群29.7%(38/128)と有意差(OR 0.47、95% CI 0.26-0.87、P=.02)を示しました。呼吸器系を中心とする内科合併症もプレハビリ群で有意に少なく(15.4% vs 27.3%、OR 0.48、P=.02)、術後の機能回復も全体としてプレハビリ群が優位でした(1)。一方、術後4週時点の6MWD群間差は+15.6 m(95% CI -1.4 to 32.6、P=.07)と有意水準には届かず、COVID-19パンデミックによる試験の早期終了という限界も含まれます。

本邦では、日本リハビリテーション医学会の『がんのリハビリテーション診療ガイドライン第2版』(10)および日本癌治療学会のがん診療ガイドライン(リハビリテーション領域)(11)が、術前リハビリテーションを「害が少なく益が大きい」介入として位置づけてきました。しかし、保険適用の現状は入院での「がん患者リハビリテーション料」算定要件に限定され、外来での体系的なプレハビリ実施は診療報酬上の障壁が残存しています(8,12)。高齢者がん診療ガイドラインにおいても、プレハビリは肺癌領域を除いて「今後の研究課題」として位置づけられており、本邦の臨床現場での実装は施設個別の判断に委ねられているのが実情です(13)。

2-2. この知見が付け加えたこと

2025年から2026年にかけて、高齢者・フレイル合併患者を主対象とする質の高いRCTが立て続けに報告され、エビデンス基盤が根本的に強化されました。

最も影響力のある新エビデンスは、JAMA Surgery誌2025年掲載のGISSG+2201試験です(2)。Wangらは中国15施設で、65-85歳のフレイル合併(Geriatric 8スクリーニングツール ≤14)胃癌待機的手術患者368名を、術後回復促進策(ERAS)単独群または2週間以上の多モードプレハビリ追加群に1:1ランダム化しました。修正intention-to-treat集団347名(プレハビリ群169名、ERAS群178名)の解析で、術後30日合併症率はプレハビリ群17.2%、ERAS群28.7%と有意低減を示しました(P=.01)。特に軽症合併症(Clavien-Dindo分類I-II)の低減が顕著であり、遵守率は93.75%という高水準でした。本試験は、PREHAB試験が示した一般成人での効果が、フレイル合併高齢者集団でも再現可能であることを多施設RCTで確認した点で、本邦の臨床への含意が大きい研究です(2)。

同じくJAMA Surgery誌2025年掲載のMcIsaacらの在宅型プレハビリRCTは、別の角度から重要な知見を提供します(3)。カナダ13施設で、CFS(Clinical Frailty Scale)≥4の60歳以上の待機的非心臓手術患者を、コーチ支援型在宅多モードプレハビリ(運動・個別化栄養推奨、行動科学理論に基づく遵守強化)または対照(一般的活動・栄養ガイドライン)に割り付けたプラグマティック多施設試験です。共主要評価項目は術後30日の患者報告型障害度(WHODAS 2.0)および入院中合併症発生としました。本試験は「監視つき院内プレハビリは効くが、在宅で同等の効果が出せるのか」という実装上の核心的問いに答える設計です。

加えて、Yamamotoらの大阪国際がんセンターを中心とする単施設RCT(Gastric Cancer誌2026年掲載、n=101、65歳以上の根治的胃切除予定患者)は、HMB(β-hydroxy-β-methylbutyrate)補充を含む多モード介入が、術前評価時点の除脂肪体重減少を有意に抑制(介入群+0.1 kg vs 対照群-0.3 kg、平均差0.4 kg、95% CI 0.02-0.86、P=0.043)したことを示しました(4)。一方、身体機能・術後アウトカムには群間差は認められず、サブグループ解析で女性、低CRP、低骨格筋指数(skeletal muscle index, SMI)群でLBM保持効果が大きいこと、抵抗運動コンプライアンスが除脂肪体重増加と相関することが示されました(4)。本邦の高齢胃癌患者集団における生物学的シグナルを示した一方、機能・術後転帰までは届かないという「ニュアンスのある」結果です。

メタ解析のレベルでは、LiらのAm J Phys Med Rehabil誌2025年掲載論文で12試験n=1,229を統合し、多モードプレハビリが術前6MWDを平均+30.1 m(95% CI 14.8-45.4)改善、在院日数を-0.86日短縮、全合併症をリスク比0.67(95% CI 0.57-0.79)、重篤合併症をリスク比0.77(95% CI 0.61-0.97)低減することを定量化しました(6)。死亡率・再入院率には影響なしという所見も含めて、効果の「形」が明確化されてきています。

スコーピングレビューとしては、Asmareら(BMJ Supportive & Palliative Care誌2026年)が65歳以上癌手術患者のプレハビリ研究13件(RCT 6件、コホート3件、準実験2件、実現可能性1件、RCTプロトコル1件)を統合し、決定的なパターンを明示しました(5)。すなわち、「高強度・監視付きプログラムが合併症重症度低減と在院日数短縮を達成する一方、低強度・最小限監視介入では術後便益が限定的」というドーズ依存性の構造です。フレイル・超高齢患者でも実現可能性と遵守性は許容範囲内でした(5)。

加えて、CarliらのBJA誌2025年掲載のプラグマティック実装-効果ハイブリッド試験は、結腸直腸手術前のERAS強化型多モードプレハビリ(栄養教育・補食・スマートウォッチを用いた歩行・機能運動・深呼吸)を検証しました(19)。試験は早期終了(n=110)ながら、術後6週時の6MWDで群間差+38 m(95% CI 9-67 m、術前タンパク質不足の有病率比0.59)を示し、在院日数では差を検出できませんでした。現実世界条件下での「中強度・指導付き」介入の効果と限界を浮き彫りにした研究です(19)。

実装面での補完エビデンスとして、McIsaacらの別のパイロットRCT(BJA Open誌2026年、n=144)は、コーチ支援型在宅プレハビリの登録率93.5%・施設毎月8.4例の良好な実装性を報告しました(14)。行動科学的調査結果は、「結果への信念」「能力」「社会的役割」が促進要因となる一方、「環境的文脈」「感情」が障壁になることを示し、3つのクラスター分析パターンが遵守率の28%を説明することを示しました(14)。Liuらが中国で実施した高齢肺癌患者14名の質的研究は、COM-B(能力・機会・動機・行動)モデルで遠隔運動プレハビリの遵守要因を分析し、症状負担・デジタル格差・家族の過剰な懸念が障壁であり、グループ運動・個別化プログラム・心理介入が促進要因であることを示しました(15)。

長期予後への影響については、英国シェフィールドの「Active Together」プレハビリサービスを評価した観察コホート(n=305 vs 869 historical)が、プレハビリ受診群の1年生存率がサービス拒否群より有意に高い(95% vs 85%、P=.013)こと、プレハビリが対照より費用対効果で優位となる確率が結腸直腸・肺・上部消化管癌で58-60%であることを報告しました(16)。

体組成と長期予後の関連も明確化されつつあります。Huangらのアジア人結腸直腸癌コホート(n=923)は、サルコペニア肥満が術後合併症発生率を27.5%(正常11.9%)に上昇させ、5年全生存・無再発生存の独立予測因子(ハザード比1.92、1.87)であることを示し、L3レベルCTによる体組成評価のリスク層別化への組み込みと「ターゲット型プレハビリ」の必要性を主張しました(17)。

2-3. 批判的吟味:研究デザインと解釈の妥当性

GISSG+2201試験(2)は、フレイル合併高齢者集団を主対象とした多施設RCTという点で、PREHAB試験(1)を補完する強力な証拠です。ただし、いくつかの注意点があります。第一に、Geriatric 8スクリーニングツール ≤14 を「フレイル」の定義として用いており、これはJ-CHS基準(日本版心血管健康調査改訂版基準)やCFSと完全には一致しません。本邦では国立長寿医療研究センターのJ-CHS基準が広く用いられており(18)、G8の感度・特異度プロファイルとの直接比較・換算は今後の課題です。第二に、中国の医療システム下での遵守率93.75%という高い数値は、患者の入院・通院アクセス特性に依存する可能性があり、本邦の通院プレハビリへの一般化には注意が要ります。

JAMA Surgery 2025のMcIsaac在宅型RCT(3)は、CFS≥4という「軽度〜中等度フレイル」を含む幅広い対象を採用しています。本邦の臨床現場では、CFSの普及はここ数年で進んだものの、外来でのルーチン評価は限定的です。在宅型介入の「外部から見えにくい」介入強度の管理が、コーチによる定期的な遠隔支援で可能かどうかは、本邦の医療人材配置の現実とすり合わせる必要があります。

Yamamoto試験(4)は本邦発の単施設RCTとして貴重ですが、Primary endpointとしてLBM変化を選択した点が興味深い設計です。LBM保持という生物学的シグナルが、術後機能・合併症転帰に翻訳されなかったことは、「予備能の代理指標」と「臨床アウトカム」の間に存在する gap を示しています。サブグループ解析で示された女性・低CRP・低骨格筋指数(SMI)群での効果増強は、「ターゲット型プレハビリ」の必要性を強く示唆します。一方、サンプルサイズ(n=101)の制約から、サブグループ知見は確認的ではなく仮説生成的であり、本邦のリスク強化型多施設試験で再検証が必要です(4)。

Asmareスコーピングレビュー(5)が明示した「高強度 vs 低強度」の対比は、本分野の「効くか効かないか」論争を整理する上で決定的です。ただし、「高強度」「監視付き」の定義は研究間で異なり、週あたり運動セッション回数(多くは3回以上)、運動強度(70% 1RMなど)、栄養介入の構成(タンパク質>1.2 g/kg/日、HMB等のサプリメント有無)、心理支援の頻度(週1回以上)といった具体的パラメータの統合は今後の課題です。Liら(6)のメタ解析でも、I²統計量は中等度〜高度の異質性を示しており、効果サイズの一般化には慎重さが要ります。

PREHAB試験(1)の早期終了(COVID-19の影響)も解釈上の留意点です。サンプルサイズ計算上想定された統計的検出力に到達しないままintention-to-treat解析が行われ、6MWD主要評価項目で有意水準(P=.07)に届かなかった点を踏まえると、効果推定の精度には限界があります。同様に、Carliら(19)のERASプラグマティックRCTは早期終了で在院日数差を検出できなかった一方、術後6MWDで+38 mの有意差を確認しており、設計と評価指標の相互作用が結果解釈を複雑にしています。

本邦における実装課題としては、(a) 外来プレハビリの保険診療上の位置づけ(8,12)、(b) 運動療法士・栄養士・心理職の人的配置と地方医療機関でのアクセス格差、(c) ERAS導入率の施設間ばらつき、(d) 神経内分泌療法・化学放射線治療等の術前治療下でのプレハビリ実装(20)、(e) 後期高齢者・要介護高齢者でのプログラム実現可能性などが挙げられます。次節以降では、これらを踏まえてエビデンスの読み替えと確信度の校正を行います。


3. 臨床的思考の深化と再構築(エビデンス再評価型)

3-1. エビデンスの読み替え

PREHAB試験(1)以降の「プレハビリは効くか」という問いに対する標準的回答は、「効くことが示された(重篤合併症 OR 0.47)」というものでした。しかし、2025-2026年の知見群を統合した読み替えは、効果推定そのものを修正するというより、「適用範囲と効果のドライバーの理解が変わった」と整理するのが妥当です。

具体的には、3つの読み替えが必要です。第一に、「効くかどうか」のレベルでは、高強度・監視付き多モードプレハビリの効果は、フレイル合併高齢者集団でも再現された(2,3)と言えます。リスク比でいえば全合併症 RR 0.67、重篤合併症 RR 0.77 という効果サイズは、術後ケアの多くのバンドル介入と同等あるいは優位です(6)。

第二に、「どの強度で効くか」のレベルでは、Asmareスコーピングレビュー(5)とLiメタ解析(6)が示すドーズ依存性が決定的です。「低強度・自宅自主トレ・指示のみ」型のプレハビリは、術前機能改善には届くかもしれないが、術後合併症低減には届かない可能性が高い、と読み替えるべきです。すなわち、本邦の臨床現場でしばしば見られる「術前に歩いてくださいと指示する」だけの介入は、エビデンスベースのプレハビリとは別物として区別すべき段階に入りました。Carliら(19)のプラグマティック試験は、現実世界での「中強度・指導付き」介入が術前栄養不足の改善と術後6MWD改善には届く一方、在院日数のようなハードアウトカム改善には届かない可能性を示しており、「介入強度の閾値」を考える上での重要な参照点となります。

第三に、「誰に効くか」のレベルでは、Yamamoto試験(4)のサブグループ知見が示唆するように、女性・低CRP・低骨格筋指数群といったベースライン状態が効果サイズを規定する可能性があります。Huangらの研究(17)が示すサルコペニア肥満集団のように、「ターゲット型プレハビリ」の概念が今後の核心となります。「全員に同じ介入」から「リスクプロファイル別に介入を最適化する」への移行です。本邦では、術前CT画像が外科的計画のためにほぼ全例で実施されており、L3レベルの骨格筋指数・内臓脂肪面積を二次利用したリスク層別化は、追加コストなしで実装可能な強みがあります。

3-2. 類似構造への外挿

このエビデンス再評価の構造は、他の周術期および非周術期の機能介入領域にも類比的に適用可能です。

第一の類比は、心不全リハビリテーションです。REHAB-HFpEF試験(21)は、入院中急性HFpEF高齢患者を対象に、入院期・外来12週・在宅3か月維持の3相多モードリハビリの臨床イベント抑制効果を検証中です。プレハビリと心不全リハビリは、いずれも「ベースライン状態の脆弱性」「短期間の集中介入」「機能容量改善」「ハード臨床アウトカム改善」という構造的共通性を持ちます。プレハビリで明らかになった「高強度・監視付きが効果のドライバー」という所見は、心不全リハビリにも外挿可能と予測されますが、HFpEFという表現型固有の運動応答性は確認が必要です。

第二の類比は、心臓外科プレハビリです。TAVR(経カテーテル大動脈弁置換術)後せん妄が1年死亡ハザード比2.73を予測することが報告されており(22)、術前フレイル評価とプレハビリの統合の含意が大きい領域ですが、心臓外科特有の急性期スケジュール制約(弁膜症の進行速度等)が「数週間のプレハビリ期間」設計と衝突します。「短期集中プレハビリ」のプロトコル開発が必要であり、結腸直腸癌・胃癌で標準化された「2-6週間」モデルをそのまま転用できない可能性があります。

第三の類比は、生体肝移植ドナーにおけるプレハビリです。PROPELLERフィージビリティRCT(23)は、生体肝ドナー30名を対象に多モードプレハビリの実装可能性を検証し、コンプライアンス≥75%、介入関連有害事象なし、フェーズIII試験へ進行可能と結論しました。「健常人ドナーへのプレハビリ」という概念自体が新規であり、結腸直腸癌患者で検証された効果サイズが、リスクプロファイルの異なる集団でどう変化するかは慎重な検討を要します。

第四の類比は、緊急手術領域への外挿の限界です。緊急手術では「数週間のプレハビリ期間」が存在しないため、待機的手術で示された効果を直接外挿することは不可能です。むしろ、緊急手術後の「ポストハビリテーション」の強化や、慢性的フレイル管理を通じた「予備能の常時最適化」が代替戦略となります。

3-3. 確信度の再校正

これらの知見統合を踏まえ、臨床医・施設管理者が自身のエビデンスへの確信度をどう校正すべきかを論じます。

確信度を「上げるべき」領域:(a) 高強度・監視付き多モードプレハビリは、フレイル合併高齢者の待機的腹部癌手術で術後合併症を低減する。エビデンスレベルは、複数の多施設RCT(2,3)と統合解析(5,6)で支持される強推奨レベルに達しました。(b) コーチ支援型の在宅プレハビリは、コンプライアンス管理が適切に行われれば施設型に近い実装性を達成可能(3,14)です。(c) ターゲット型プレハビリ(低栄養・低SMI・低CRPなどのリスクプロファイル別最適化)は、効果サイズを増強する可能性があります(4,17)。

確信度を「下げるべき」領域:(a) 低強度・最小限監視介入のプレハビリの術後アウトカム改善効果は、限定的または不明であり、「とりあえず歩いてもらう」ことで合併症が減るという期待は支持されません(5)。(b) 6MWDなどの代理指標の改善が、必ずしもハード臨床アウトカム改善に翻訳されるとは限らない、ということを認識すべきです(4)。(c) 介入期間2-6週間という「主流の」プロトコルが、すべての手術領域・患者集団に最適とは限らず、術前治療コースを利用した「神経内分泌療法併用プレハビリ」(20)など、新しいデザインが必要な領域があります。

確信度の「保留すべき」領域:(a) 後期高齢者(85歳以上)や要介護状態の患者でのプレハビリ実現可能性とアウトカム改善効果は、本邦のJ-CHS基準に基づく具体的なエビデンスが不足しています(18)。(b) コア・アウトカム・セットが標準化されつつある(25)中で、過去研究のエビデンス統合可能性が今後変動する可能性があります。(c) 費用対効果については、英国のActive Togetherサービスの観察データ(16)以外に多施設経済評価が乏しく、本邦の医療経済評価(厚生労働省の医療技術評価枠組み等)への組み込みは未確立です。

「エビデンスレベルが高い=信じてよい」という単純な図式の限界が、ここで明確になります。PREHAB試験(1)のようなJAMA Surgical誌掲載のランドマークRCTでも、早期終了・主要評価項目の有意水準未到達・代理指標と臨床アウトカムの解離など、解釈上の留意点が残ります。臨床医に求められるのは、「強推奨」のラベルを機械的に受容することではなく、効果のドライバー(強度・対象選択・実装方式)を理解した上で、自施設の文脈に翻訳する判断力です。本邦のホスピタリスト・地域連携医にとって、紹介先プログラムの「強度プロファイル」を意識的に確認し、外来診療報酬の制約下で実装可能な構造化プログラムを設計することが、エビデンスを臨床に翻訳する具体的なアクションとなります。


4. 今後の展望:何がわかれば決着するか

進行中の重要試験として、膵癌手術前の多モードプレハビリを評価するPIPS試験(n=238、サンラファエレ研究所、CCI主要評価)が4-6週間の高強度多モード介入の効果を検証中です(25)。Pre-KiT試験は腎腫瘍手術前の老年プレハビリRCTとして設計されており(26)、PROPELLER延長フェーズIII試験(23)は生体肝ドナーでの予防的プレハビリの臨床的便益を確認する予定です。

決着のための残存課題は、(1) コア・アウトカム・セットの国際合意確立(24)、(2) ターゲット型プレハビリ(リスクプロファイル別最適化)の検証、(3) 在宅・遠隔支援モデルの本邦への移植可能性、(4) 術前神経内分泌療法・化学放射線療法併用下でのプレハビリ統合プロトコル(20)、(5) 後期高齢者・要介護高齢者集団での実現可能性、(6) 医療経済評価と保険適用の整合化、です。「プレハビリは効くか」という問いは、「どの強度・誰に・どう実装すれば、何が改善するか」という多次元的な問いへ進化しました。本邦の周術期老年医学コミュニティに求められるのは、これらの問いに自国データで応える多施設臨床研究基盤の構築です。


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終わりに

最後までお読みいただき、ありがとうございました。本記事が少しでも皆様のお役に立てれば幸いです。今後とも良い記事を配信していけるよう努めて参りますので、どうぞよろしくお願い致します。
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本記事は生成AI Claudeで作成したものを、一部加筆修正して公開しています。

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