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医療にお金を出す住民、出さない住民~負担と受益の意識格差。ふるさと納税は他所にするが、地域医療への寄付はしない。住民の本音と向き合う|Day279

【メディカルキャストnote企画#279】

「蛇口をひねれば水が出るように、医療があるのは当たり前」

多くの住民にとって、医療は空気のような存在です。しかしその空気を維持するためのコストが限界に達したとき、私たちは残酷な現実に直面します。

豪華な返礼品を求めて他自治体へ「ふるさと納税」を送り続ける一方で、
足元の病院の窮状には無関心。この意識の格差を埋めない限り、どんな財務戦略も砂上の楼閣です。

「受益」の不可視化が招く、過度な権利意識

日本の優れた健康保険制度は、医療費の「真のコスト」を住民の目から隠してしまいました。

窓口で払う金額が実際の医療コストのすべてだという錯覚。残りの7割を誰がどう支えているのか(Vol.271)を実感する機会が圧倒的に不足している「3割負担」という魔法。救急車が数分で駆けつけ夜間でも専門医が待機しているその「待機コスト」がどれほどの行政予算(税金)で維持されているか。

「当たり前」のコストを、私たちは語ってこなかった。「無料に見えるもの」を人は大切にしません。

ふるさと納税に見る「対価」のゆがみ

住民は「損得」には敏感ですが、「公共の維持」には鈍感になりがちです。

1万円の寄付で肉をもらう満足感と、地元の小児科が存続することの価値。返礼品 vs 命のインフラ、この二つが住民の頭の中で同じ天秤に乗っていない。

医療は「病気になったとき」しか恩恵を感じにくいからこそVol.174の「健康の学校」のように日常的に受益を実感できるタッチポイントが必要な「見えないサービス」への投資。

「恩恵が見えない」から「お金を出したくない」という心理は、情報で変えられます。

「当事者」としての財布を開いてもらうために

寄付や負担増をお願いする前に、徹底した情報の「共有」と「納得」が必要です。

Vol.187の「見える化」を使い「あなたの寄付が、この救急車のガソリン代や新しい保育器の導入に使われました」と成果をダイレクトに報告する医療版ふるさと納税の設計。「病院があるから、この街の地価が維持されている」「病院があるから、安心して共働きができる(Vol.173)」という医療がもたらす経済的恩恵の再定義。

「納得した人のお金」だけが、本当の意味で地域医療を支えます。

「お客様」から「オーナー」へ

住民を、サービスを受けるだけの「消費者」から、地域の医療を共に支える「共同オーナー」へと引き上げます。

Vol.234の地域医療債をより身近にし住民が自分たちの街の医療を「自分の
お金で支えている」というプライドを持てる小口投資(クラウドファンディング)の活用で「1円を投じた」という事実が、その人を永遠の支持者に変えます。

おわりに

お金の話は、ともすれば「冷たい」と思われがちです。

しかし、住民が自らの意志で1円を投じることは、その医療を「自分たちの宝」だと認める最高の意思表示でもあります。負担と受益のバランスを
オープンに語り合う。その痛みを伴う対話こそが、真の「地域経営」の始まりです。

次回予告|Vol.280「医療ファイナンスを『語れる街』は強い~財務リテラシーが未来を拓く」

お金の話をタブー視せず、経営の危機も希望も数字をベースにオープンに議論できる文化。その知的なガバナンスが街の未来をいかに切り拓くかを、Week 49の総括としてお届けします。

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