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体の関係が欲しいだけじゃない

最初にこの仕事始めた時、正直思ってたんだよね。
お客さんって、みんな性欲の塊みたいな人ばっかりなんだろうなって。

朝から晩までやりたいって感情しか頭にない感じの。

でもさ、やってみて分かったことがある。
全然違うんだよ、これが。

確かにね、そういう人もいる。
ドアを開けた瞬間から目がギラギラしてて、挨拶もそこそこにすぐ本題入ろうとするタイプ。

やっぱり複雑な感情を抱いてる人が多いんだよね。

例えばいつの日か接客した四十代の男の人。
多分サラリーマンだね。

見た目は普通の、どこにでもいそうな男の人。

プレイが始まる前に、ずっと喋ってた。
会社の愚痴、家庭の愚痴、人生の愚痴。

で、あたしが相槌打ちながら聞いてたら、途中で泣き出しちゃってさ。
結局その日は何もしないで帰って行った。

料金はちゃんと払ってくれたけど。

二十代の若い子で、明らかに女の子と喋るの慣れてない感じの子もいたな。多分初めて風俗来たんだろうなって分かる。

緊張しすぎてカチコチで、こっちが色々誘導しても全然乗ってこない。

でも話してるうちに分かったの。

その子、別にHがしたくて来たんじゃないんだよ。
ただ誰かに触れられたかっただけ。ハグしてほしかっただけ。

それで満足して帰ってった。

おじいちゃんとかもいる。もう七十過ぎてるような。
正直、できるのかなって最初は思うよ。

でもそういう人に限って、意外と元気だったりする。

っていうか、元気とかじゃなくて、なんか必死なの。

まだ俺は現役だって証明したいみたいな。
そういう気持ち、なんとなく分かる気がする。

で、話に戻るんだけど。
そんなにHしたい?って、お客さんに直接聞いたことあるんだよね、何回か。冗談ぽく、軽い感じで。

そしたら面白いことに、みんな答えが違う。

ある人はうん、めちゃくちゃしたいって即答。まあこれは予想通り。
でも別の人はいや、別に...…って言いながら照れ笑いする。
じゃあなんで来たの?って聞くと、なんとなくとか、家に帰りたくなくてとか、寂しかったからとか。

寂しかったから、っていうの、実は一番多いかもしれない。
セックスがしたいんじゃなくて、誰かと繋がりたいだけ。

肌を重ねることで、一瞬でも孤独を忘れたいだけ。
それって性欲とは違うよね。

もっと根本的な、ニンゲンとしての欲求みたいなもん。

あたしも最初は分かってなかった。
この仕事って、ただ体を売るだけだと思ってた。

でも違うんだよ。
売ってるのは、もっと別のもの。
安心感とか、居場所とか、認められてる感じとか。
そういう目に見えないものを、あたしたちは提供してる。

面白いのが、リピーターのお客さん。
月に一回とか二回とか、定期的に来る人たち。

そういう人に限って、あんまりHしないもいるんだよね。
会って、喋って、ちょっとイチャイチャして、それで満足して帰る。

で、また来月来る。
まるで恋人に会いに来てるみたいに。

ある常連さんが言ってたの。
君に会いに来てるんであって、Hしに来てるわけじゃないって。

最初は社交辞令だと思ってた。
でも本当にそうなんだよね、その人。
いつも時間の半分以上は雑談。残りの時間で軽くプレイして、また来るね」って爽やかに帰ってく。

逆にHしか求めてない人って、意外と続かない。
一回来て終わり。

あるいは何回か来ても、すぐ別の子に移る。
それはそれでいいんだけど、なんか虚しい気がする。

こっちもニンゲンなんだから、やっぱり関係性がある方が嬉しいよね。

この仕事してて一番驚いたのは、男の人の脆さかな。
普段は強がってても、ここに来ると素が出る。

弱音吐いたり、泣いたり、甘えたり。そういうの、外では絶対見せられないんだろうな。

そう思うと、この空間の大切さみたいなものを感じる。

結局みんな何か別のものを探してる。
愛情だったり、承認だったり、逃げ場だったり。

Hは、その手段の一つでしかない。

風俗嬢って、体だけじゃなくて、心も癒してる。

セックスセラピストっていうか。
まあ、そんな大層なもんじゃないけど、でもそういう側面は確実にあると思う。あたしがそう信じたいだけかもしれないけど。

だからたまに思うんだよね。
この仕事、もうちょっと社会的に認められてもいいんじゃないかって。
別に堂々とする必要はないけど、もう少し理解されてもいい気がする。

あたしたちだって、ちゃんと人の役に立ってるんだから。

結局みんな、ただ誰かに必要とされたいだけ。

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