おかえりなさい
ヤフオクで落札した自作CD『松の木の物語』が、ゆうメールにて本日我が家に届いた。
自分用に手元に置いてあった分が一枚だけになっていたので、もう一枚ぐらい持っていたかったのだ。
早速開封して中身を確かめたところ、意外なものを目にすることになる。
ブックレットの最終ページに自分のサインが残されていたのだ。
購入者への宛名の横には「居酒屋 戦国にて」と書き添えてある。自分で手売りしたものだったのだ。
ネットに公開されていた商品説明の添付写真では、その部分が見えていなかった。
― 居酒屋『戦国』―
あれから時が流れ、あまり思い出すことも無くなっていたが、
僕にとってあまりにも懐かしい響き。
数々の思い出が次々と蘇ってくる。
知り合って以降、店に入り浸るようになり、常連客たちとも友達付き合いすることになりった。妹も含めて一緒に飲んだりカラオケで騒いだりしていた頃が懐かしい。
マスターには本当にお世話になった。
低姿勢で接してくれるのをいいことに、当時の僕は上昇機運に乗っかってのぼせ上がり、感謝することも忘れ、自分の子分であるかのように軽く扱っていた。
思い返すと、顔から火が出るほど恥ずかしい。
その後、彼は店を畳み、僕は長野県を離れてしまった。当時使っていた携帯番号は現在使用されておらず、現在音信不通。もし会えたとしたら、かつての非礼を詫び、精一杯お礼をしたいところだが、今のところ、消息を知る手掛かりはない。
差出人の住所は愛知県津島市になっている。ブックレットに書き込まれたサインの横には、日付も添えられている。1999年3月23日。
その後二十年余りが過ぎた。どういった経緯をだどってCDが津島市まで辿り着いたのかは分からないが、サインをしたその夜、僕は間違いなく居酒屋『戦国』にいて、このCDを手売りし、マスターの秋夫さんやその仲間たちと楽しい夜を過ごしていたのだ。
あの頃があったから、今の自分がいる。思えばあの時期が自分にとってのターニングポイントだった。
忘れかけていた。
でも、確かにそうだった。
上田を離れる前に、人づてに聞いた。居酒屋《戦国》は、閉店してしまったという。
店はもうない、しかし、我が子のようなCDが、長い旅路の果てに、思わぬ形で沢山の思い出を抱えて、僕のもとに帰ってきた。
そして、
「あの頃のことを忘れちゃだめだよ」
静かに、そう語り掛けてくれた。
お疲れ様でした。本当にありがとう。
