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私はドラゴンである #3つのお題で空想のひらめきを

私は、名前を忘れたドラゴンという生物だ。

私の姿を見て、人間は「ドラゴンだ」と口を揃える。つまり、ドラゴンという生物ではあるものの、私を含めて誰も名前を知らない。

私に決まった巣はなく、転々と寝床を変えている。地上はだんだん発展して、建物が目立っている。ひと休みするには空き地を見つけないといけない。だから、寝床を探して、今夜もビル街を飛ぶ。ビルは今日も明るい。私からすれば、夜を照らす街灯に等しい。

密集した街灯から離れて、孤立している小さな明かりを見つけた。降り立つには少し窮屈だが、暗がりの中にポツンと光っている様子が気になった。


できるだけ、物音を立てずに降り立つ。近くで光っているそれは、ビルよりはるかに小さく、一軒家にしても小さい。全体が吹き抜けになっていて、そこから光が漏れていた。近くには、1人の人間が立っている。
屋根が付いているのに吹き抜けで、外に人間がいるなんて。あれで夜をしのげるのだろうか。

人間がこちらに気づいて、手招きをしている。表情はとてもにこやかだ。地響きを鳴らしながら近づいて、私から見て手前の吹き抜けから覗いてみた。風通しだけは良さそうなこれについて、人間に質問する。

「これは家なのか?」
「違うよ。これは屋台というものさ。両端に車輪が付いているだろう?必要な場所に移動しながら、商売をするのさ」

なるほど。私が寝床を探すように、この屋台も必要な場所を探しているのか。私は、興味津々でいろいろ聞いてみた。

店主曰く、これは夜を売る屋台
人通りの少ない細道に構えて、彷徨っている人たちに夜を売るのだという。売っている夜は、睡眠の夜、勉強の夜、熱愛の夜など、相談事を聞きながらお客人に合った夜を提供するのが役目らしい。

せっかく立ち寄ったのだ。私に似合う夜について人間に尋ねてみた。同時に、名前を忘れたこと、寝床を転々としていることを次々と話してしまう。この人間、話を引き出すのがうまい。

「どうやら、お客さんは人間になってみたいと見える」
「私が、人間に?」
「普通なら、人間に見つからないようにひっそり眠っているのがお似合いだ。でも、臆せず夜空を駆けているし、なによりここに降り立っているしね」

ドラゴンにとっての普通、私の頭には見当もつかなかったが、人間が好きなのは間違いないのかもしれない。壊すでもなく、ただ見守り、良い場所が見つかればそこで眠る。なにも不自由はしていない。ただ、街の人間がどんな生活をしているのか気になってはいた。

人間は、夜空に浮かぶ月を指して話す。
「ちょうど、月光が差すところに1つのドアがある。興味があるなら行ってみるといい」


私は月の近くまで飛び、月光を辿りながら地上に降りた。そこには、私よりも大きなドアが姿を現している。そのドアの三日月の鍵穴に、細くなった月光が差しこんでいた。

ドアノブを捻れば、その奥にある新しい世界が見える気がした。なぜそう思えたのかは分からない。ただ、あの人間が嘘をついているとは思えなかった。

あの人間と別れる際に言っていた一言を思い出した。
「ドアノブを捻ってごらん。君の第二の生き方が始まるよ」

臆せずドアノブを捻って、向こう側へ一歩踏み込んだ。


夜を売る屋台の店主は、月を見上げて、独り言を呟いた。
「名前を無くしたドラゴン。満ちてから、またどこかで」


参加しました!

🎈お題①:「夜を売る屋台」
🐾お題②:「三日月の鍵」
⏳お題③:「名前を忘れたドラゴン」


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