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630shio
現金な奴
ポケットから千円紙幣を取り出して、自動販売機へ滑らせるように入れた。同じ口から、ペロッと紙幣を出してきた。機械的で可愛げのない舌出しにイラつきを覚える。
キャッシュレス決済機能が備わっていない自販機で、昔ながらの現金な奴。そして、現金の持ち合わせがこの1枚だけ。受け取って貰わないと、何も買うことができない。
返された紙幣を確認して、心なしパリッとなるように伸ばしてみる。さっきと同じように滑らせながら投入する。返答は同じ表情で、ペロリと紙幣を出してきた。
何が気に入らない?
千円紙幣を千円の価値として受理するだけでいいのに、そのまま返してプラマイゼロにしてくる。欲しいものは価値じゃなくて、冷やされた飲料。あとは、お釣り。
もう一回、投入してみた。結果は同じだった。
現金な奴め。イライラしたので、側面を蹴ってやった。
ガゴン。
ん?何か音がしたな。もしかして、サービスしてくれるのかな?ありがたい。
ガゴン。ガゴン。ガゴン。…
取り出し口が排出された大量の飲料で埋まった。蓋を押しても隙間ができず、取り出せない。
くそ。もてあそびやがって。
故障の電話をするから、お前なんか撤去されちまえ。
「おいお前さん。ここで待っとれよ」
「え?」
「お前さんが蹴って、壊れたの見とったからな」
「マジですか…」
横から現れたおじさんが睨み付ける中、事情を正確に話した。
今回は古い機種だったこともあり、見逃してくれることになった。
「次からやるなよ。チッ」ガコン。
おじさんの舌打ちに合わせて、飲料が落ちた音がした。
もしかして、修理費をせがもうとしたのか。
本当に、現金なやつめ。
参加させていただきました。
いつもよりもショートショートなショートショートです。
でしたが、後日ちょっと文章を増やして、普通のショートショートになりました。
