妖精の存在 #せりふ三題噺
「ほんとにいたんだって!」
「そりゃ、骨折したんだからね。痛むはずさ」
お母さんは僕の脚を指して、ツンツンしている。矯正器具と包帯をぐるぐる巻きにされているので、長靴を履いているみたいだ。
僕が言いたいのはこれではない。
「ほんとにいたんだって!」
「ネモフィラの旬が過ぎるからね。傷んで枯れるはずさ」
お母さんは窓から見える花園を指した。風に揺られているネモフィラが所々元気を失くしている。
僕が言いたいのはこれでもない。
「違う!ほんとにいたの!」
「なにさ、何がいたのさ」
「妖精だよ。妖精がいたんだよ」
「妖精が骨折していたのかい?それとも、キューティクルが失われていたのかい?」
「違うよ!いたんだよって、そのいたんだよじゃなくて」
「もしかして、異端なのかい?宗教かい?いつの間に信仰していたのかい?」
「一旦、『いたんだ』とか『いたん』とかで言葉遊びしないでよ。ややこしいから」
「なにさ、何が言いたいのさ」
「だから、妖精がいた…、んーと。存在したんだよ。信じてよ」
「なーにいっているの。妖精は存在するでしょ。夢でも見ているのかい」
「だから信じて…って、え?妖精がいるって知ってたの?」
「当たり前でしょ」
花園を向いて、お母さんは語りを交えて話し出した。
「花園はあじさいに植え替えて、妖精に梅雨の要請をするの。雨が降ったら転びやすいから、あなたが骨折しないようにカルシウムを摂らないとね」
「なんで転ぶ前提なんだよ」
「もう少しで治るでしょ?水溜まりを踏むことになるから長靴を買ったのよ。ちょうど、矯正器具が取れる頃でしょうから」
お母さんは、骨折をしていない左足を中指で弾いた。
「これは痛んだかも」
「それはないわよ」
「なんで冗談にのってこないのさ」
お母さんが本当に妖精を信じているか分からないけど、否定しないなら信じ続けようと思う。
外からノックする妖精が、口を押さえて「うふふ」と笑っている。
参加させていただきました!
■セリフ「ほんとにいたんだって!」
■三題
・長靴
・ネモフィラ
・骨
おじいさんの代わりに長靴を作っていたり、配信でマシンガントークを売りにしたり、骨密度を高くしたり。
妖精って、不思議な存在ですね。
