見出し画像

人狼の空想 #3つのお題で空想のひらめきを

この村には人狼が潜んでいた。人狼は、夜の間に村人を喰い荒らす。
発覚したのは、朝のこと。筋肉自慢の若い男が喰い殺されていた。複数の人狼に食い荒らされたのか、部位がバラバラになって飛び散っている。

村長は、潜んだ人狼を炙り出すため、昼の時間に村人全員を招集し、会議を行った後、多数決による処刑を執り行うことを決定。

即日行われた1日目の会議は、喰い殺された男の妻が立候補した。
「彼がいなければ生きる理由がない。疑われて殺されるくらいなら、ここで処刑された方がましよ!」
情報が少ない中、無造作に処刑者を決めるのが心苦しい。という意見から、希望通り、処刑されることとなった。

吊り縄で長時間苦しみ、顔中から液体があふれて止まらなかった。
息絶えた彼女の顔は、夫に逢える喜びを噛みしめているようだった。

僕は、選ばれなかったことに安堵しつつも、夜間に喰い殺されるかもしれないと思うと、絶望を感じずにはいられなかった。

***

2日目の朝。窓から入る朝日を感じて起き上がる。
昨日の出来事は、夢だと思いたかった。だが、無残にも村の教諭をしているおばさんが切り裂かれ、血だまりができていた。

今日もまた、会議が執り行われることになった。
会議が始まった刹那、第一に声を上げたのは、占い師を名乗る村人。ただし、2人いた。
人狼を見破る占い師は、1人だけ。どちらかが嘘をついている。

先に名乗り出た年頃の彼女。本当なら今日、この村を出ていく予定だった。
彼女は、もう1人の占い師を名乗った男を調べ、「人狼」と言った。
占った理由は、なんとなく。自ら名乗り上げてくれたおかげで、証拠は揃ったも当然だと豪語している。

もう一方の男は、この村の最年少の少年を占い、「人間だ」と言った。
この2人は血は繋がっていないものの、村いちばんの仲良し兄弟だと噂になるほど。

少年は男に対して、なんで占ったのかを聞いた。
「俺は、コイツの疑いの目を今のうちに晴らしたかった。日が重なるにつれて、人狼かもしれないと思われるのが嫌だった」と弁明。

占い結果から、兄弟愛を信じるか否かの議論になった。彼らは互いを信じあっているからこそ占ったのだ。いや、相手を信じさせることで人狼であることを隠している。議論は白熱しているものの真実に到底たどり着かない。

そこで名乗り出た人物が1人。霊媒師として名乗り出た妖艶な女性。
このまま夕方を迎えてしまうのは勿体ないと、議論に割り込んだ。
「昨日、処刑された彼女は人狼だった。歪んだ愛だったわ」と語る。

人狼が自ら処刑されにいった事実に、周りは驚きを隠せない。女性は続ける。
「贖罪として処刑を選択したのなら、彼女なりの誠意で夫に会いに行ったのでしょうね」
村人全員が納得し、誰も霊媒師の女性を疑わなかった。

議論終了の鐘が鳴り、疑いが定まらぬまま多数決を迎えた。
結果、票は占い師の2人に集中した。処刑されるのは、彼女の方。
彼女は、強引に処刑台へ連行された。
「兄弟愛に騙されないで。あいつは人狼の守り人。少年を守ろうとしている人狼よ!」
村の数人は俯きながら、何も答えなかった。僕もその一人だ。村の決まりとはいえ、彼女を誰一人として咎めることができない。

金切り声は数十分、村中に響き渡った。人狼か人間か、まだ分からない。
村中に広がるのは、門出を台無しにされた恨みの声なのかもしれない。

***

3日目の朝。外に転がっていたのは、霊媒師として発言していた妖艶な女性の姿だった。ただ、これまでと違っていたのは、四肢が無くなっていたことと、切り裂かれた布の隙間から、剥き出しの肌が晒されていた。

血に混じる異様な匂い。女性の秘部には、白く乾いた液体の跡が付着していた。腹部の両側に、人狼の爪が深く突き刺さっていたであろう複数の深い傷跡が、こと・・を物語っていた。

今日も会議がはじまる。
昨日と同じで、発言をしたのは占い師の男。
占ったのは、僕だった。判定は人間。良かった!疑いが晴れた…?

安堵の気持ちは、一瞬にして過ぎ去った。
もう一人の占い師の彼女は処刑され、判定できる霊媒師は夜のうちに亡くなってしまった。つまり、真の占い師が判らなくなってしまった。

議題は、男を真とするべきか、処刑すべきか。になっていた。
機能同様、埒が明かないと踏んだ村長は、1つの提案を持ち掛けた。

「村の女性が、村長の妻(老婆)と10歳になったばかりの少女だけ。
もちろん、やむを得ず処刑した私たちにも非があるが、人狼を排除ができても、村の繁栄をするにしても比が重すぎる。今できることは、人狼を他の村に逃がさないことが重要だ。彼の疑いが晴れたわけではないが、他に潜んでいるかもしれない人狼を彼の占いを加味して審議したい。たとえ、村人が2人になってもな」

混乱は、村長の意見で一旦の終息を迎え、他の者を処刑する方向に変わった。占いを真と見て、不明になっている村人の中で多数決を行った。
結果として、議論に比較的参加していなかった青年が処刑された。

果たして、これで良かったのだろうか。
何もできないまま、僕は家に戻った。

・・・

今日は満月。月明りに照らされながら考えに耽っていた。
ドアが吹っ飛んだ。グルル。グルルルル。後ろから唸り声が聞こえる。
今日の獲物が決定した。残念だ、もう生きられないなんて。

人狼は、僕の背中を目掛けて飛びついてきた。
噛みつかれた肩から出血している。だが、嚙み千切られることはなかった。

僕は思いっきり後方に振り返る。人狼は、家の壁に叩きつけられた。
ぶつけた背中を擦りながら立ち上がると、僕の顔を見て驚いているようだ。

「なんで、お前が『人狼』の顔をしているんだよ」
「…」

満月の夜、この時だけ思い出すことがある。
満月の記憶
が正しければ、僕は造られた人狼という種族らしい。
人造人狼。満月の時だけ発揮する、人狼としての血筋。

「なあ、お前が人狼ならさ、一緒に喰いつくそうぜ。偽善ぶってた村長とかさ。な?」
「…」

人狼へ、ゆっくりと歩みを進める。
人狼として村を破滅へと進める存在。人間を喰い、繁殖をして、新たな世界を築くための存在。

「喰うのが嫌なら、あの少女に種付けしてもいいんだぜ。絶望に歪んだ顔を見ながらヤるのがよかった。昨晩、あの美女の四肢を少しずつ喰いながら乱暴にするのがたまらなかった。特殊性癖ってやつ?やっと理解できたぜ」
「…」

一歩、また一歩。近づいて。
僕は、この世界の常識を変えるためだけに生まれた。
僕は、人狼に腕を伸ばす。

「おお。分かってくれたか。襲撃の夜に出てこなかったのは癪だが、まだ仲間がいるって分かって嬉しいぜ。あの少女、今から調教してもいいがもう少し熟れてか…ら…」

鋭い爪が伸びた大きな手を、人狼の腹部に一突き。口から一気に吐血した。
まだ何か喋ろうとしているが、昇った血でガラガラうがいをしているようにしか見えなかった。

突っ込んだ腕を外してやると、ピクピクしていた。失血死するまで時間の問題だろう。僕は、人狼の肉体に嚙みついた。肉という肉をむさぼり、跡形もなく吸いつくした。これまでの死体と違い、灰色に近い白さが目立つ。

家の外に出ると、黒い影が1つ立っていた。
「よう、お兄さん。お目覚めですか」
「…知っていたのか」
「占い、したんだけどな」

この口ぶり、あの男か。平然と占い師を騙っていたとは。
僕でも、月に一度しか呼び起こせない記憶を忘れていたのに、この男は人狼と見破っていた。何者なんだ。

***

人狼が絶滅危惧種として指定され、人間は大いに喜んでいた。

ただ、一部の生物保護団体がそれを許さなかった。非人道的であると。
人狼が生まれたのは、一種の食物連鎖の中に生まれたものであって、家畜で食肉を肥やす人間。それを喰らい頂点に立つのが人狼だと主張する。

非人道的行為だと振りかざし、各地でデモが行われていた。
ただ、世間の目は冷たいものばかり。賛同を得られなかった。

人類であるのに、人狼というだけで差別をする人々を憎んだ。
非人道的行為を繰り返すなら、私たちも非人道的行為に及び、人々の過ちを正そう。そこで発足したのが、人造人狼プロジェクトだった。

改造される標的となったのは、人狼を殲滅した村の生き残り。
保護団体は人狼に襲われないように村の少し外れに息をひそめ、村人が出てきたところを誘拐する。僕もその一人だった。

高い知能を持ち、夜に抗えない習性を埋め込んだ人狼に改造させられた。
狼の守り人として、生き残る手助けをするために。

改造されるまでの記憶は、満月が出てくるまで思い出せなかった。怪異になぞらえたのか、なにかのエラーが発生して、個体に差が出たのか。真実は、満月が示す通りなのかもしれない。

満月が出るたびにそのことを思い出していたのに、悪夢だと切り捨てて今まで生きてきてしまった。

***

「さて、お兄さん。ここで2つ選択肢がある。1つは、この村を殲滅すること。もう1つは、別の世界線に飛ぶこと」

男は片手に、ガラスで作られたペンを持っていた。月の明かりに照らされてとてもキラキラしている。

運命を書き換えるペン。今日処刑された彼が持っていたものだよ」
「どうしてそれを」
「夕暮れにうっすらと見えた満月が教えてくれた。満月の記憶とでも言うべきかな」

僕と同じくして作られた筆記具。人間の良心をかき集めて作られた魔法のペン。これを知っていたのは、経過観察をしてくれていたお姉ちゃんが読み聞かせで読んでいた絵本に出ていたから。


『どうしても戻りたいな。思った時、満月にこのペンをかざして書いてみて。明日からは、その夢が叶っているから。』


「もしかして、お前も」
「お兄さんとは違うよ。親の快楽で産まれた人間と人狼のハーフ。文章的におかしいけどね」

男は続けて語る。

「俺は、本当にアイツを守ってやりたい。真っ当な人間として生きていて欲しい。でも、それは叶わない。喰われるか、改造されるか」

男から涙がこぼれ落ちる。

「本当は今日、決行するつもりだったんだ。保護団体にいたあの青年と結託して、人狼という概念が全て無くなるように。けど、お前を襲った人狼が早く動きすぎたせいで計画がめちゃくちゃになった」


なんで人間と仲良く寝てるんだよ。浮気しに来たんじゃねえんだぞ。
人狼は人狼と大人しく、俺様に抱かれてればいいの。
はあ?きめえな。きもすぎ。
分かった。お前には俺様しかいないってことみせてやるよ。


「俺はアイツが改造されて、悲しい人生を歩むくらいなら、自らの手で葬りたい。今夜それを決行する」

男の目は充血していた。もうそろそろ、人狼の本能に飲み込まれそうになっている。僕はどうするべきなんだ。

『喰え。守れ。人狼の繁栄を。』

短い言葉が、僕の頭を支配する。悪夢を見たときに、必ず聞こえていた。
このままでいいのか。疑って、人口を減らして、最終的に人狼だけにする。
疑い続けて、信用することができない、この世の中を、どうしたい。

僕は、僕は…。
僕が人間だったころの、僕が住んでいた村の人狼を思い出した。

そこに、笑顔はなかった。そこに、憎しみしか生まれなかった。
僕は逃げた。逃げた先に、何者かに強い打撃を与えられて。

「僕は、運命を書き換えたい」
「…よしきた。早くこっちへ」

僕は、男のいる方へ走った。男は、ペンを天にかざし叫ぶ。

「お願いだ、運命を書き換えるペンよ。人狼を」
「人狼と人間が共存できる未来に書き換えろ!」

僕は精一杯叫んだ。彼の言葉を遮って、共存を願った。
ペンが宙に浮かび、ペン先を走らせる。ペン先から、オーロラの線が生み出され、願いが書き出された。

『人狼と人間の共存へ。』

オーロラは、村中を包み込む。ここで起こった惨状が塗りつぶされるように、周囲がオーロラで満たされてゆく。

***

翌朝。俺は心地よく起きることができた。2階の窓から、近くに住んでいる少年が元気そうに学校へ登校している姿が見えた。
朝日がとてもまぶしい。外は森に囲まれてほのぼのとした雰囲気。
さて、今日はどこへ狩りに出かけようか。

シカにクマ、イノシシがいたら最高だな。
けれど、一番のお目当ては迷い込んだ人間。洞窟を心霊スポットって言っているやつを食べるのが一番いい。事故で片付けられるからな。

と、いけない。人間の畑を守るため、害獣駆除の任務をこなさないとな。
窓から相棒も見えたことだし、いっちょ頑張りますか。
純正のハーフと改造の…養殖のハーフで、共存共栄の一日だ。


🎈お題①:「狼の守り人」
🐾お題②:「満月の記憶」
⏳お題③:「運命を書き換えるペン」

参加しました!
空想のひらめき✨

いいなと思ったら応援しよう!