『Make Me Wonder』にみる、Official髭男dism流UKロックの系譜と到達点
2025年12月29日、Official髭男dismの新曲『Make Me Wonder』がリリースされた。TVアニメ『ダーウィン事変』のオープニング主題歌となるこの曲は、彼らのルーツにはない、しかし着実に積み上げてきたUKロックからの影響を感じさせる一つの到達点といえるサウンドアプローチになっている。
藤原聡はインタビューで「UKロックにルーツはない」と語っている。しかし、彼らの出世作となった『Pretender』は、制作時にプロデューサーから「UKロックみたいな感じにしたらどうか」と提案され、UKロックに詳しいスタッフの助言を受けつつ楽曲を完成させたというエピソードがある。
そういったエピソードから見えるOfficial髭男dismとUKロックの繋がりは、コンフィデンスマンJP劇場版の主題歌である3曲(『Pretender』『Laughter』『Anarchy』)から、よりはっきりしてくる。
Spotify『Official髭男dism「Anarchy」Music+Talk』では、映画の制作側から『Pretender』にはザ・フー、『Anarchy』にはザ・クラッシュといった具体的なUKロックのモチーフが挙げられていたことが明かされている。
『Laughter』は叙情的なギターに壮大なストリングスとメロディの高揚感を前に出したブリットポップ以降のUKロックを思わせる響きがある。
また『Anarchy』からはザ・クラッシュだけではなく、タイトなドラムや繰り返される印象的なベースのフレーズから、Gorillazの『Feel Good Inc.』を想起させる。
(しかも『Anarchy』のジャケットは猿、そして今回の『Make Me Wonder』では、人間とチンパンジーの間から誕生した「ヒューマンジー」の少年を描いた物語となっている点も、不思議な連続性を感じさせる。)
こうしたモチーフやサウンドの積み重ねを経て、彼らは常に自分たちのルーツにはないUKロックを取り入れつつ、「進化」と「深化」に挑み続けてきた。
というわけで今回の『Make Me Wonder』だ。
僕はこの曲をOfficial髭男dismがメンバー4人編成で行ったファンクラブ限定ライブ「OFFICIAL HIGE DANDISM one-man tour FOUR-RE:ISM」のZepp DiverCity公演で、リリースより一足先に聴くことができた。
間違いなく最新型のOfficial髭男dismであり、ロックバンドとしてのフィジカルの強さを証明する圧倒的なパフォーマンスに釘付けとなりつつ、そのサウンドアプローチから90年代のU2を強く想起させられた。
世界最高峰のロックバンドであるU2は、90年代にテクノやダンスミュージックの要素を大胆に取り入れ、「電脳三部作」と呼ばれる実験的なアルバム3作品をリリースした。(アイルランド出身なので厳密にはUKロックではないが、その文脈として。)
Official髭男dismの『Make Me Wonder』では、冒頭のシンセサイザー、ダンスビート、無機質に歪ませたギターなど、まさにその頃のU2を思わせるサウンドが鳴っている。
無機質でありながら強いフィジカルを感じさせるサウンドスケープは、『Anarchy』からの飛躍ともとれ、『Pretender』に始まったOfficial髭男dism流のUKロック路線が、ここにきて彼らの大きな個性として立ち上がってきたように感じられる。
『Pretender』の爆発的なヒットから、日本を代表するロックバンドへと登りつめた彼らは、いまもなおバンドとして殻を破ろうとしている。
ルーツではなかったはずのUKロックを、借り物ではなく自分たちの個性として盛大にブチかますところまで来た。
その現在地を示す一曲が、『Make Me Wonder』だ。
