肉じゃがをつくる
1年半くらい前、妻の就職が決まり、こどもたちの保育園が始まる時に妻とこれからの家事の分担について話をした。
これからお互い忙しくなるから、晩ごはんは早く帰った方がつくる、在宅勤務ならもちろんその人がつくる。
妻の仕事はフルタイムで残業することもあるので、腹ペコのこどもたちのお腹を一刻も早く満たすためには、どう考えても私も晩ごはんをつくるしか考えられなかった。
そして妻の仕事は想像以上に残業することが多かったり、私がほぼ毎日在宅勤務できるようになったので、自然な流れで私がわが家の料理担当をやることになった。
今まで私も料理をしてこなかったわけではないが、これまでの私の料理(と呼んできたもの)といえば、鍋とか炒飯とか、男の料理と呼んで雑さを誤魔化す簡単料理か、休日に「今日は俺がごはんつくるから」と息巻いてクックパッドで調べたものを時間をかけてつくるような感じで、妻には「隣で見てると手際が悪すぎてイライラする」と言われる始末だった。
だから保育園が始まってしばらくは、ホワイトボードに1週間の献立を書いておいて、週末に大量に妻が仕込んで冷凍しておいてくれたものを当日焼くだけ揚げるだけで仕上げるというやり方だった。私はほぼ妻にアシストしてもらい、最後の簡単なゴールを決めるだけのおいしいポジションだった。
私の壊滅的な料理の腕前とあわせて、大きな問題だったのは長女の偏食だ。
その頃の長女がお菓子以外で食べるものといえば、白米、パン、うどん、揚げ物の衣部分(かろうじて鶏肉)、目玉焼きの白いところくらいだった。俳優が役作りで短期間で太るために食べるメニューか。栄養素を炭水化物に全振りしている。
そういえばあとなぜかレーズンだけは食べていたのだけど、調べたらレーズンも炭水化物が多く高カロリーなんだそう。どれだけストイックに役作りをやる気なんだ。
慣らし保育が終わってから1週間目くらいのときに、長女が保育園の給食もおやつも全く食べないと電話があってお迎えに行ったことがある。
その日の昼食は白米がなくパスタ系の何かで、おやつもかしわご飯とかだったので、長女はひとつも手をつけることができなかったのだ。
帰宅してスナックを貪るように食べる長女を見て、これから頻繁に呼び出しがこないかと不安で震えたが、意外にもご飯を食べないことを理由に呼び出されたのはこの一回きりだった。
保育士の先生方の献身的なサポートのおかげと、長女の生存本能が食べるしかないと思ったのか、ここから少しずつ食べれるものが増えてきた。
そんなこんなで慌ただしく過ごすうちに、本当にいつの間にか、私も長女も成長していた。
先日、実家の母に味付けを聞いて、晩ごはんに肉じゃがを出したら、妻に「死ぬ前にこれ食べたい」と言ってもらえた。妻の最期の晩餐は今のところ私のつくる餃子と肉じゃがだ。いつかトリコの人生のフルコースみたいに全部埋められるといい。
長女は今でもまだ食べられないものは多いが、肉じゃがのにんじんも白滝も食べたし、最近なぜかハマっているしめじも入れたら食べた。
レーズンとかしめじとか、鶏の香草焼きとかコーヒー味のお菓子とか、独特な風味があるものが好きみたいなのが不思議だが、長女なりのがんばり方で好物が増えてきている。
年末にアマゾンプライムで『きのう何食べた?』のドラマを観た。
いろんなことがあっても、シロさんは定時に上がり、毎日ご飯をつくる。そしてそれをケンジと食べる。ひたすらそれだけの話が続くのだけど、それがとても癒されて良い。
シロさんが料理するシーンが良くて、この前作品の真似をしてコールスローをつくった。
ドラマの中でシロさんが「料理は、大きな仕事を片付けた時と同じような達成感を味わえる。毎日それが味わえるなんて料理ってすごい」みたいなことを言うのね。
平日のドタバタの中で急いでごはんを作って、家族が私のつくった料理を「おいし〜」と食べてくれると、確かに心が満たされてくる。
今読んでる途中の『餃子のおんがえし』っていう料理エッセイもすごくおもしろい。笑えるのにレシピも付いてておすすめです。
料理系の作品観てるとおいしいやつつくるぞってパワーが上がってくるので良い。
