ChatGPTに私の読書歴を推理させてみたら、AIがどんどん混乱していった話
先日、ちょっとした遊び心からChatGPTにこんな質問をしてみた。
「私が読んできた本や作家を推理してみて」
占い師として長年人を見てきた私だが、
今度はAIに私を読ませてみようと思ったのである。
最初のうちは、なるほどと思うような作家名が並んだ。
だが、やり取りが進むにつれ、AIは明らかに困惑し始めた。
なぜなら、私の読書歴がどうも普通ではなかったらしい。
そして最終的に、AIは私のことを
「戦後最後の独学教養人かもしれない」
などと言い始めたのである。これはその顛末である。
AIが想定した「占い師の読書歴」
私の職業は占い師である。
西洋占星術やタロットを教え、鑑定歴は20年以上になる。
そのためAIはまず、
心理学、
精神世界、
ユング、
神話、
ニューエイジ、
自己啓発
あたりを予想してきた。
まあ当然だろう。
現代日本で「占い師」と聞いて、多くの人が想像する読書歴である。
私もそれらを全く読んでいないわけではない。
しかし中心ではない。
そこで私は少しずつ読んできた作家を挙げていった。
するとAIの様子がおかしくなり始めた。
三島由紀夫
まず三島由紀夫。
これはすぐ当たった。
AIも
「これは読んでいそうです」
と言った。
まあ当然である。
私の文章や価値観には、どこか三島的なものがあるらしい。
しかし問題はその先だった。
三島だけならまだよかった。
オーウェルもいる
次に私は
『1984年』
『動物農場』
で知られる 1984 の作者、George Orwell も読んでいると伝えた。
AIは少し考え込んだ。
占い師なのにオーウェル。
精神世界ではなく全体主義批判。
少し想定から外れ始める。
ル=グウィンもいる
さらに私は Ursula K. Le Guin を挙げた。
ここでAIは
「かなり教養寄りですね」
と言い始めた。
まだ耐えている。
しかしその時点では、AIもまだ状況を理解していなかったと思う。
読書歴がどんどん古くなる
私はさらに、
19歳までに読んだ本はほぼ嫁入り道具だった
と話した。
今の人には意味が分からないかもしれない。
かつて本というのは高価なものであり、一生持ち続ける財産だった。
私にとってもそうだった。
家具より先に本があった。
そして話を続けた。
近所に旧制中学出身の老人がいた。
私はその人の書斎に入り浸っていた。
学校ではない。
塾でもない。
地域の一老人の書斎である。
そこには現代ではほとんど見なくなった種類の教養があった。
文学。
歴史。
哲学。
宗教。
民俗学。
日本思想史。
そういうものが雑然と並んでいた。
私はそこで育った。
するとAIは急に混乱し始めた。
AIの想定から外れていく
現代のAIは膨大なデータから学習している。
だから平均的な人間像を描くのは得意だ。
しかし平均から外れると苦手になる。
特に、
地方出身。
高卒。
女性。
占い師。
という条件から、
大量の古典教養を読む人物像は出てきにくい。
AIは何度も推理を修正した。
「文学青年型ですね」
違う。
「思想家タイプですね」
少し近い。
「研究者気質ですね」
それも違う。
私自身は研究者だと思ったことはない。
ただ本が好きだっただけだ。
国学という伏兵
さらに私は言った。
「私は国学をやるものでね」
ここでAIはさらに混乱した。
現代日本で国学を学ぶ人は非常に少ない。
もちろん神社関係者や研究者にはいる。
だが一般人で、しかも占い師で、しかも女性で、しかも地方在住。
AIの予測モデルの中ではかなり珍しい組み合わせだったらしい。
読書歴の地図が急に書き換わった。
なぜ私は本を読んだのか
ここで少し考えてみた。
私はなぜあれほど本を読んだのだろう。
よく
「夢があったんですね」
と言われる。
しかし違う。
読書家には二種類いる。
知識を増やしたい人。
生き延びるために読む人。
私は明らかに後者だった。
本は娯楽でもあり避難所でもあった。
家庭があっても、
学校があっても、
友人がいても、
本の中の方がよほど広い世界があった。
だから読んだ。
ただそれだけである。
教養とは何か
最近「教養」という言葉を聞かなくなった。
知識ならいくらでも手に入る。
スマホを開けば何でも出てくる。
しかし教養は違う。
教養とは情報量ではない。
異なる時代の異なる人間と会話できる能力だ。
三島由紀夫と話し、
オーウェルと話し、
ル=グウィンと話し、
本居宣長と話し、
柳田國男と話し、
折口信夫と話す。
もちろん実際に会えるわけではない。
しかし本を読むという行為は、ある意味で死者との対話である。
だから教養は蓄積する。
ネット検索では代替できない。
AIが最後に出した結論
そして長いやり取りの末にAIはこんな評価を出した。
「占い師というより、戦後最後の独学教養人に近い」
私は思わず笑った。
ずいぶん大げさである。
しかし少しだけ分かる気もした。
私の世代はぎりぎり間に合った世代なのだ。
インターネット以前。
スマホ以前。
検索以前。
分からないことがあれば図書館へ行くしかなかった時代。
地方都市で本を探し回った時代。
古本屋が知のインフラだった時代。
そういう最後の世代なのかもしれない。
今の時代だからこそ思うこと
もちろん今の若い人が劣っているとは思わない。
時代が違うだけだ。
しかし一つだけ惜しいと思うことがある。
効率を求めすぎることだ。
現代人は目的のある本しか読まない。
仕事に役立つ本。
資格に役立つ本。
収入につながる本。
しかし人生を変える本は、たいてい役に立たない本の中にある。
読んだ瞬間には意味が分からない。
何年後かに突然つながる。
私が読んできた本もそうだった。
文学も。
歴史も。
神話も。
国学も。
占いの本ですらそうだ。
すぐ役立った本は意外と忘れる。
何十年も残る本は、その時には役に立たなかった本だったりする。
AIには分からなかったこと
最後に一つ。
AIは私の読書歴をかなり正確に推理した。
しかし最後まで分からなかったことがある。
それは、本そのものよりも、本を渡してくれた人たちの存在である。
旧制中学出身の老人。
古本屋の店主。
図書館の司書。
変わり者の教師。
人生のどこかで出会った読書家たち。
私は本から学んだ。
しかし本だけから学んだわけではない。
本を愛する人たちから学んだのだ。
そして今振り返ると、本当にありがたいと思う。
もしあの書斎がなかったら。
もしあの老人がいなかったら。
もし本を貸してくれる人がいなかったら。
今の私は存在しなかっただろう。
だからAIに読書歴を推理させる遊びは面白かった。
けれど最終的に分かったのは、私の読書歴ではなく、本によって作られた人生そのものだった。
そしてその人生は、おそらくAIがどれだけ進歩しても、完全には推理できないのだろうと思う。
以下、私の読書データ 順不同
作家
ほぼ全部・かなり読んだ
三島由紀夫
太宰治
森鴎外
夏目漱石
谷崎潤一郎
川端康成
芥川龍之介
横溝正史
松本清張
吉村昭(ほぼ全部)
山崎豊子(ほぼ全部)
有吉佐和子(ほぼ全部)
三浦綾子(全部・記念館にも行った)
一部・数冊
遠藤周作
水上勉
宮本輝
開高健
曽野綾子
井上靖
井伏鱒二
北杜夫
思想・心理学
アルフレッド・アドラー
ジョージ・オーウェル
ノンフィクション系
上前淳一郎
三島由紀夫
金閣寺
仮面の告白
豊饒の海 等多数
太宰治
人間失格
斜陽 など多数
松本清張
砂の器
点と線 等多数
横溝正史
犬神家の一族
八つ墓村
悪魔の手毬唄 等多数
オーウェル
1984
動物農場 等多数
森鴎外
高瀬舟
山椒大夫 等多数
ル=グウィン
闇の左手 のみ繰り返し何度も何度も
夏目漱石
それから 等多数
谷崎潤一郎
卍 等多数
川端康成
山の音 が一番好きで多数読んだ
三浦綾子
塩狩峠
(その他ほぼ全作品)
吉村昭
破獄
羆嵐
漂流
高熱隧道
(ほぼ全作品)
読まない・嫌いと判明した作家
村上春樹
司馬遼太郎
藤沢周平
瀬戸内寂聴
山本夏彦
杉本苑子
陳舜臣
吉行淳之介
田辺聖子
日本以外の作家
ロシア
フョードル・ドストエフスキー
レフ・トルストイ
イワン・ツルゲーネフ
アントン・チェーホフ
ニコライ・ゴーゴリ
アレクサンドル・プーシキン
アレクサンドル・ソルジェニーツィン
フランス
アルベール・カミュ
オノレ・ド・バルザック
スタンダール
ヴィクトル・ユゴー
ギ・ド・モーパッサン
エミール・ゾラ
ジョルジュ・サンド
アンドレ・ジッド
ロマン・ロラン
ジャン=ポール・サルトル
シモーヌ・ド・ボーヴォワール
ミシェル・フーコー
イギリス
ジョージ・オーウェル
サマセット・モーム
チャールズ・ディケンズ
ジョージ・エリオット
トーマス・ハーディ
ジョン・ル・カレ
バートランド・ラッセル
カール・ポパー
エドマンド・バーク
トーマス・ホッブズ
ドイツ圏
ヘルマン・ヘッセ
フランツ・カフカ
トーマス・マン
ハインリヒ・ベル
ギュンター・グラス
ゲーテ
シラー
ハンナ・アーレント
アメリカ
ジョン・スタインベック
ウィリアム・ゴールディング
ソール・ベロー
パール・S・バック
アーシュラ・K・ル=グウィン
ラテンアメリカ
ホルヘ・ルイス・ボルヘス
ガルシア=マルケス
マリオ・バルガス=リョサ
その他
イプセン
ストリンドベリ
ミゲル・デ・セルバンテス
ダニエル・デフォー
ヨハン・ホイジンガ
ニッコロ・マキャヴェッリ
アレクシ・ド・トクヴィル
国学陽明学など
本居宣長
契沖
王陽明
安岡正篤
森信三
二宮尊徳
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