ポケットメモ#49 録画する女
■今日のポケットメモ
噂 ランチタイム 加工
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女子の多い部署メンバーでのランチタイム。
話題に事欠くことがない。
好きなアーティストのこと。
昨日見た映画。
他部署との飲み会。
どこで聞いてきたのか、同僚の噂。
大抵は、その場限りの「あはは」って笑って終わる内容。
でも、その日は違った。
他部署のきれい系女子が、怪しいお店に出入りしている。
とか、何とか。
ん?
少し前に、そのきれい系女子の話がでてたよね?
その話に似ているけれど、微妙に違う。
・・・というか、やけに加工されているような。
私は相当怪訝な顔をしていたらしい。
はす向かいに座っていたデイ子と、目が合った。
デイ子も首を傾げている。
同じ疑問を感じたらしい。
***
数週間後。
ランチタイムの話題は、イイ氏の話で持ちきりだ。
営業のイイ氏が社内の女性をお持ち帰りした、らしい。
それも、「私、見ちゃったの」って話ではなく。
「・・・らしいよ」
という、微妙な言い回し。
誰が、と言うことにも触れていない。
この手の話題って、
「あの人があの人を」
って、具体的な名前が出そうだけれど。
***
会議まで、まだ30分ある。
飲み物、買ってこよう。
階下の自販機コーナー。
飲み物を選んでいると、デイ子がやってきた。
「ねえ、お昼の時の話だけど」
・・・どうやら、自販機コーナーで会ったのは偶然ではなかったらしい。
「この間の営業部との飲み会。あの時の話じゃない?」
確かに。
あの飲み会には私も行ったけど、そんな話は記憶にない。
自慢じゃないけど、私は下戸だ。
酔っ払いのテンションに合わせてわあわあ騒いでるけれど、こっちは全部覚えてる。
「あの時、ワイ美も行っていたよね」
「うん。行ってた。席が遠かったから、
どんな様子だったか、よく見てなかった。」
記憶を遡る。
「そういえば、2次会でお開きになった時、イイ氏は女子と同じ方向だからって、一緒に帰っていったわ。
もしかして、ネタ元はそれ?」
デイ子はそれには答えず。
「怪しいお店に通っているって話、覚えてる?」
もちろん覚えている。
「両方の話の時にいたのが、ワイ美なんだよね」
***
午後の会議は、全然集中できなかった。
確かにワイ美は、両方にいた。
でも、面白がって話を大きくしちゃうようなタイプには見えないんだけど。
おっと、まずい。
議長の声、意見を述べている人の声。
聞こえているけれど、脳みそを通過していない。
こんなに気になるなら、ワイ美を観察するしかない。
***
翌日のランチタイム。
「ちょっと聞いて。ここだけの話だけど」
みんなが箸を止め。
一斉に顔を寄せる。
「実はさ、見ちゃったんだ。」
「・・・えー?そうだったの?」
「知らなかったぁ」
みんなでキャアキャア盛り上がっている時。
ふと、気づいた。
いつもおしゃべりなワイ美が、やけに静かだ。
隣にいたデイ子を肘で突っつく。
「ちょっと。ワイ美、やけに静かじゃない?」
二人でワイ美を見ると。
ワイ美は目を見開いて。
瞬きもせず。
まるでその場の話を、まるごと録画しているかのようだった。
ジージージー。
どこからか、機械音が聞こえてくる。
そんな気がした。
<Fin.>
コチラもどうでしょう?
