ポケットメモ#110 駐車場の海水浴
■今日のポケットメモ
パラソル おじさん 海パン
◆◆◆
暑すぎる・・・。
もう、夕方の6時だっていうのに!
夕食を作ろうと、キッチンに立って。
冷蔵庫を開けたら。
肉を買い忘れてる。
なんてこった。
今日の夕食メニューは、子ども達に予告済みだ。
急に変えたら、怒られるだろうなぁ。
仕方なく。
一番近いスーパーまで、自転車を走らせる。
手押し信号を渡って。
カーブしている道を、どんどん走る。
と。
小さな会社の、駐車場に。
大きなパラソルとテーブルに椅子。
おじさんが3人。
ビール片手に、楽しそうにおしゃべりしていた。
夏の夕暮れに、打ち水をして縁側で涼む。
昭和の時代の、懐かしい風景がオーバーラップする。
令和版、夕涼みだ。
つい、自転車のスピードを落として。
じっと見てしまった。
◆◆◆
数日後。
たまには違うコースをウォーキングしよう。
特にあてもなく。
右に曲がり。
左の小道を通り。
あれ。
また、あの小さな会社のところに出ちゃった。
うわー。
今日はおじさん3人で、バーベキューしてる。
懐かしい、夏の定番曲が聞こえてくる。
確かに彼らの敷地なんだろうけど。
住宅街だよ。
いいのか、これ。
◆◆◆
今日は金曜日だ。
あー。やばい。
郵便局に行かなきゃ行けなかったのに。
間に合うか?
こんな時に、自転車がパンクしてるなんて!
日傘片手に、ひたすら歩く。
夕方5時少し前だけど。
夏の日差しは、まだ容赦なく照りつける。
あの小さな会社の前を通って、あと5分くらいで郵便局だ。
手押し信号を渡ると。
大きなパラソル。
リクライニングしたビーチチェアに。
サングラスをかけ。
ヘッドフォンをした。
海パンのおじさんが3人。
マジか?
まだ仕事の時間じゃないの?
今日は休みなの?
・・・わけ、分からん。
◆◆◆
会社の玄関ドアが。
バン!
勢いよく開く。
若い女性が出てきた。
と思ったら、外水道をギュッとひねり。
散水ホースから思いっきり水を出す。
おじさん3人に。
冷たい水を容赦なく叩きつける。
「お父さん、まだ仕事中よ!
いい加減にしなさい!!」
ビーチチェアから転げ落ち。
ヘッドフォンが吹っ飛ぶ。
ザザー。
ザザ-。
かすかに聞こえる、波の音。
彼らは、海水浴場で日光浴をしていたのだ。
冷たい水道水は。
現実に戻る合図だった。
◆◆◆
冷たい水しぶが、私の足にもかかる。
あー、郵便局!!
慌てて、私は走り出す。
見入っている場合ではなかった。
はぁはぁと肩で息をしながら。
郵便局の自動ドアの前に立つ。
が。
ドアはピクリとも動かなかった。
