子連れ狼と受け継ぐこと
歌舞伎にいって、面食らった。
中村獅童さんの芝居や、既存の枠にとらわれない革新的な発想が好きで、以前から注目していた。のびのびと育つ息子さんふたりの活躍を見ながら、リアル『国宝』を追いかけているような気持ちになれるのも嬉しい。
6月の大歌舞伎は、中村獅童さん念願の、小川家の親族が一堂に集結する「家族の舞台」でもあるとのこと。血筋や家の芸を受け継ぐ世界が、実際にどのような形で舞台に現れるのかを見てみたかった。
さらに興味を惹かれたのは『子連れ狼』。人気時代劇を原作とした舞台に挑戦するという。
歌舞伎の伝統を守ることだけを目的とするのではなく、外の才能を積極的に取り込みながら、新しい魅せ方を探ろうとしている。その試みは、私自身が映画に対する価値観を考えるなかでも、とても勉強になる。
……そんなことを考えている暇もなく、
それはもう、とにかく大豪華で面食らった。
歌舞伎座の美術と日本一の廻り舞台は圧巻で、見どころが次から次へと現れる。
音楽面は、メインテーマ以外は新たに作曲したものもみたかったが、壮大な場面は豪快に見せつつも、全体には品格があり、歴史の重みを感じさせる演出で素敵だった。
映画の仕事をしていると、「伝統」と「革新」はしばしば対立するものとして語られる。
受け継ぐものを大切にしながら、その時代の観客に本質的なものを届ける形へと更新し続けること。
最近はそんなことをよく考えている。
『子連れ狼』、もっとたくさんの人に観てもらえたらいいなと思う。
5歳児 夏幹さんの堂々たる芝居も、4分にわたる殺陣も、尾上松也さんと中村獅童さんのびしょ濡れの戦いも、生で観ることができる。
幕見なら『子連れ狼』だけ観ても2,400円。
でも、金閣寺も戻駕色相肩も華やかでだいぶ入りやすいので、今月はかなりおすすめです。
