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この建築って何がすごいの?|モザイクタイルミュージアム①建築と自然が一体化した外観

建築業界に約10年間携わってきた「めーぐる」です。
有名建築を見て「なんとなくすごい」と感じつつ、
「でも、どこがどうすごいのかは分からない」そんな経験はありませんか?施工・施主・設計という複数の立場で建築に関わってきた経験から、建築を一緒に見に行くと「何がすごいのかわかった」「建築の見方が変わった」と言われることが多くあったため、記事を書くことにしました。
このnoteでは、有名建築をなぞるのではなく、「なぜこの建築は評価されているのか」「設計者は何を操作し、何を意図したのか」を丁寧に読み解き、”建築翻訳”という形で言語化しています。

建築の見え方が少し変わる、そんなきっかけになれば嬉しいです。


01.モザイクタイルミュージアムの設計者

設計者は、藤森照信さんで、建築と自然の調和を独創的な発想で表現された作品が多い方です。
藤森さんの有名な作品としては、秘密基地のような「高過庵」や「低過庵」、「ラコリーナ近江八幡」「空飛ぶ泥舟」などがあります。写真を見てもらえれば、お分かりいただけると思うのですが、すごく独創的で、”一度見たら忘れない”そんな作品が多い印象です。一部では”ジブリのような世界観”とも表現されることもあります。
また、45歳で初めて設計をされ、ここまで有名になっている点も、凄すぎるところだと個人的には思っています。

高過庵の画像
画像出典:Wikimedia Commons 作品名:高過庵(Takasugi-an)
撮影者:Wiiiiライセンス:Creative Commons Attribution-ShareAlike 3.0 Unported (CC BY-SA 3.0)https://creativecommons.org/licenses/by-sa/3.0/
元ページ:https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Takasugi-an.JPG
ラ コリーナ近江八幡の写真
画像出典:Wikimedia Commons 作品名:La Collina OMIHACHIMAN 01
撮影者:Tawashi2006ライセンス:Creative Commons Attribution 3.0 Unported (CC BY 3.0)https://creativecommons.org/licenses/by/3.0/
元ページ:https://commons.wikimedia.org/wiki/File:La_Collina_OMIHACHIMAN_01.jpg


では、そんな藤本照信さんの作品の一つである”モザイクタイルミュージアム”を紹介します。

02.モザイクタイルミュージアムの概要

モザイクタイルミュージアムの外観はこちらです。

モザイクタイルミュージアム

モザイクタイルミュージアムは岐阜県多治見市に位置しています。
明らかに独特な佇まいですよね。周りは住宅街となっているため、写真を見ただけでは周辺環境に馴染まないと感じる方が多いと思います。
しかし、訪問するとわかるのですが、住宅街かつ公民館や消防署に隣接しているにも関わらず、嫌な感じが全くありませんでした。

モザイクタイルミュージアム周辺図

では、なぜ独特な外観をしているにも関わらず、”嫌な”感じがしないのか。というところを言語化してみようと思います。

03.建物ではなく地形を見ているように感じる仕掛け

この建物は、見る角度によって建物の印象が違うように感じました。
では、どう見えるかを説明します。
 妻側:上り坂
 桁側:小山

この視覚効果によって”嫌な”感じがしないと思っています。
それぞれ少し詳しく解説します。

A.妻側からの見え方

妻側からは、建物ではなく坂道を見上げているように感じました。

妻側からの見え方

坂道に見える理由として、モザイクタイルミュージアムは緩やかな曲線とその曲線に沿った場所に植えられた植栽で建物のアウトラインが構成されています。
一見すると、「珍しいなぁ」くらいにしか思わないのですが、この部分に多くの仕掛けが隠されていると感じています。
それは、「外構と建物が植栽で一体化している」ところです。
多くの建物は、外構(地上部)と建物の外壁に異なる素材の仕上げが使われていることから、外構と建物は別々の存在になります。
しかし、モザイクタイルミュージアムは、外構にある植栽が外壁にも使われており、外構と建物の境界線が曖昧になっているんです。
外構から、植栽という1つのマテリアルが一定のリズムで連続することにより、地上部と建物に一体感が生まれています。

外構と建物が一体化する イメージ図

一体化することにより、建物と地上のギャップが少なくなるため、異物感が減少し、違和感がなくなっていると感じました。

また、この妻側からの写真を見てもらえるとわかると思うのですが、何となく歩いて登れそうな感覚にも陥るんですよね。建物というより、坂道を見ている感覚になるのも、これらの要素が集まった結果だと思います。

妻側からの写真

以上が妻側からの見え方でした。


B:桁側からの見え方

次に、桁側からは小山のように見える理由についてです。

桁側(正面から)の写真

正面から見ると、「この建築物が何の用途なのか」、「何階建てなのか」がよくわからないと思います。そのように見える仕掛けとして、工業製品感がないことが言えると思います。加えて、外観からの情報量が少ないことから、風景にも馴染みやすいのだと感じました。
ではなぜ、工業製品感がないのかというと、

  • 建物と空の境界が植栽帯で作られ、境界線が曖昧になっていること。

  • 緩やかな曲線により、視線を止める”角”がなく、視線移動時のストレスが少ないこと。

  • 窓の数が極限まで抑えられ、そもそも窓として認識しづらいこと。

  • 外壁が土壁仕上げとなっており、均質で工業的な表情を感じさせないこと。

  • 外観からでは、建物の高さ(階数)がわからないこと

であると考えています。
これらの要素って、実は遠くの山をぼんやり見ている時と似たような条件が揃っているんです。
それによって、建物ではなく小山を見ているような感覚になりました。

外観の解説

また、藤森照信さんは、このようなニュアンスの言葉もおっしゃっていました。

「昔の人は自分たちで住居を作っていた。そのため、建築というのは素人でも参加できる場所が多い。」

この言葉のとおり、プロではなく実際にその建物で働く方々が外壁の仕上げを施す手法をよく使われています。この建物はどうなのかわかりませんが、プロじゃない(単調すぎない)仕上がりに親近感があり、景色にも馴染むのだと感じました。

昨今の建物は、効率よく作るために工業製品の組み合わせが多く、輪郭がしっかりしていてることが多いんです。そこをあえて、様々な要素の組み合わせにより、自然(周辺)と建築物を一体化をさせる藤森さんの建築は、大量生産の時代にこそ必要な考え方だと思いました。

奇抜だから評価されているのではなく、”風景として成立している”から評価されている。そう腑に落ちた建築でした。

04.最後に

読んでいただきありがとうございました。
藤森さんの建築は、素敵なものが多いので、今後も紹介していきたいと思います!
次回の投稿ではモザイクタイルミュージアムの内部の紹介をしたいと考えていますので、また読んでもらえると嬉しいです!



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