“支援内容の検討が十分になされていない場合”って、どうやって判断するのかな?
ディラン、ママス&パパスと続いたが、ガラッと変わって今回は社会福祉法の改正について書いてみたい。
【社会福祉法等の一部を改正する法律案】
会期中の第221回国会(令和8年特別会)に社会福祉法等の一部を改正する法律案が提出されている。
(厚労省HP)
https://www.mhlw.go.jp/stf/topics/bukyoku/soumu/houritu/221.html
『概要』
https://www.mhlw.go.jp/content/001685800.pdf
では、
「質の高い福祉サービスの確保と社会福祉事業等の安定した経営基盤の確立の双方の実現に向けて、多様で複雑な福祉ニーズに対応した包括的な支援を確保するため、小規模市町村での相談支援等に係る事業や人口減少地域における特例介護サービスの類型の新設、一定の要件に該当する有料老人ホームに係る登録制度の創設等の措置を講ずるとともに、福祉人材の安定的な確保や定着を図るため、介護支援専門員の資格に係る更新制の廃止及び法定研修の見直し等の措置を講ずるほか、介護分野等における質の高い福祉サービスの確保等を図るための都道府県協議会を設置すること、一定の要件を満たす社会福祉連携推進法人における社会福祉事業の実施を可能とすること等の措置を講ずる。」
といった趣旨のもと、大きく3項目が掲げられ、大項目毎に更にサブ項目が記載されている。
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1.地域の実情に応じた包括的な支援体制の拡充【社福法、介保法、老福法、障害者総合支援法、児福法、困窮法、生保法】
① 小規模市町村における包括的な支援体制の整備を促進する事業(※)を新設するほか、地域住民の支援等を検討する会議を全市町村で設置可能等とする。
※福祉各分野の相談支援・地域づくり事業の配置基準を分野横断的な基準に柔軟化するとともに、あわせて地域住民の取組との協働促進を図る事業を行う。
② 中山間・人口減少地域での地域の実情に応じた配置基準や包括的な評価の仕組みが導入可能となる特例介護サービスの類型(「特定地域サービス」)の新設や、地域のサービス提供主体が少ない場合に市町村が事業として居宅介護サービス等を実施できる「特定地域居宅サービス等事業」の創設、事業者間の連携強化とそのための事業継続の仕組みの構築、介護予防と地域の支え合いを一体的に実施する拠点を運営する事業の新設等を行う。
③ 頼れる身寄りがいない高齢者等に対する日常生活・入院等の手続・死後事務の支援を行う事業を第二種社会福祉事業に位置付け、あわせて相談体制等の整備を図る。
④ 成年後見制度や地域における権利擁護事業の適切な利用の支援の中核的な役割を担う「地域権利擁護相談支援センター」を設置可能等とする。
⑤ 中重度等の要介護者を入居させる有料老人ホームに係る都道府県等への登録制度を導入する。また、その入居者に対する相談支援を行う「登録施設介護支援」等を新設し利用者負担を求める。
⑥ 介護サービス量等の中長期推計及び医療・介護連携等に関する介護保険事業(支援)計画の見直しや、介護サービス利用時等の電子資格確認の導入など介護被保険者証に係る見直しを行う。
2.福祉人材の安定的な確保及び定着支援【社福法、介保法、障害者総合支援法、児福法、士士法、平成19年士士法改正法】
① 関係団体等(公的機関、地域の事業者、養成施設等)で構成する福祉人材確保のための協議会の設置を都道府県の努力義務とするとともに、生産性向上、経営改善支援等の取組の促進を国及び都道府県の責務とし、関係者の連携を図る関係協議会を設置する。
② 令和13年度までの介護福祉士養成施設卒業者については、経過措置として卒業後5年間は介護福祉士の資格を有することができるものとするほか、准介護福祉士資格を廃止する。
③ 介護支援専門員(ケアマネジャー)に係る研修受講を要件とした更新の仕組みを廃止するなど、法定研修に係る見直しを行う。
3.支援基盤の強化等【社福法】
① 社会福祉連携推進法人が実施可能な業務を追加(第二種社会福祉事業等)し、社会福祉法人解散時の残余財産の帰属先に地方公共団体を追加する。
② 災害派遣福祉チーム(DWAT)として活動する人材登録の仕組みを整備する。
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【問題意識】
今回はこのうち、大項目の1の①、特に「地域住民の支援等を検討する会議を全市町村で設置可能等とする。」の部分について書こうと思う。
些か細々とした話になるが、関心のある方はお付き合いいただれば幸いである。
項目の1の①、「地域住民の支援等を検討する会議を全市町村で設置可能等とする。」は、具体的には社会福祉法改正案の第百六条の三の二に新設された「支援会議」の規定である。
これは、昨年公表された社会保障審議会福祉部会報告書(https://www.mhlw.go.jp/content/12000000/001614796.pdf )のp7の
“重層的支援体制整備事業を実施していない市町村においても支援会議の活用を可能とすること等により、体制整備を促進することが必要である。”
という記述を受け、重層的支援体制整備事業(以下、重層事業)を実施していなければ設置できなかった社会福祉法上の支援会議を重層事業を実施していなくても設置できるようにしたものと捉えられる。
この文脈からすれば、社会福祉法改正案に定める新たな支援会議は「体制整備の促進」につながることが求められるだろう。
しかしながら、現在、提出されている法案にはむしろ「体制整備の促進」を滞らせかねないのではないかと懸念する条文が含まれている。
具体的には、
社会福祉法改正案の第百六条の三の二の2
「支援会議は、生活保護法第二十七条の三第一項に規定する調整会議、生活困窮者自立支援法第九条第一項に規定する支援会議その他の他の法律に基づく会議(地域生活課題を抱える地域住民に対する支援に関する検討を行うものに限る。第五項において「関係会議」という。)において地域生活課題を抱える地域住民に対する支援の内容の検討が十分になされていない場合において、当該地域住民に対する支援の円滑な実施を図るために必要な情報の交換を行うとともに、当該地域住民が地域において日常生活及び社会生活を営むのに必要な支援体制に関する検討を行うものとする。」
だ。
社会福祉法上の支援会議は、生活保護法に規定する調整会議、生活困窮者自立支援法に規定する支援会議、その他の他の法律に基づく会議において、“支援の内容の検討が十分になされていない場合”に使える、と読める。
同様の考え方は、令和8年3月社会・援護局関係主管課長資料にも出ている。(p56〜)
(地域福祉課)
https://www.mhlw.go.jp/content/12201000/001671993.pdf
この規定は、重層的支援体制整備事業における重層的支援会議の目的である
「重層的支援会議は、
・ 既存制度等では対応できない支援ニーズや、単独の支援機関では対応が難しい支援ニーズがあり、これまでどの支援関係機関も対応できていなかった事例について、当該事例に関係する支援機関の役割分担や、支援の方向性の整理を行うことに加え、
・ 人口減少社会にあっても包括的な支援体制を維持できるよう、支援関係機関間の連携を進め、多機関協働事業を介さずとも、支援関係機関間で対応できる支援ニーズを増やしたり、
・ 既存制度等では対応できない支援ニーズにも対応できるよう、これに対応する社会資源の開発等を検討したりすることを目的とする。」
に基づくものだと思料する。
※重層的支援体制整備事業の実施について
(令和5年8月8日厚生労働省社会・援護局長ほか連名通知)
改正通知
https://www.mhlw.go.jp/content/001595344.pdf
改正後全文
(多機関協働事業はp19〜)
https://www.mhlw.go.jp/content/001595353.pdf
(最終改正:令和7年10月29日)
また前述の社会・援護局関係主管課長資料p55には、
“また、包括的な支援体制を整備する上では、まずは既存分野(介護・障害・こども生活困窮等)でどのような施策等が行われているかを把握し、これらを最大限活かしつつ、連携体制の構築を進めること、これが直ちには難しい場合には、事業等の活用により、既存分野間の役割分担の整理や支援関係機関等の連携を促すことを通じて、分野の縦割りを避け、連携した対応を行うことが重要である。”
との記述もある。
しかし、生保の調整会議や生困の支援会議の活用を前置する条文は、「重層やってない市町村でも支援会議OK」と言いながら、実際の運用では「まずは既存の会議体を活用・連携せよ」というメッセージが強く出てしまい、改正社会福祉法による支援会議の「新規の包括的ツールとしてのインセンティブ」を薄れさせるのではないか。
その結果として、福祉部会報告書で示された「重層的支援体制整備事業を実施していない市町村においても支援会議の活用を可能とすること等により、体制整備を促進」することにつながらない事を危惧する。
【社会福祉法改正案と他法改正案との関係】
提出された法律案全体の中では、介護保険法改正案で第百十五条の四十八に定めるいわゆる地域ケア会議が「支援会議」という名称で位置づけられたり、障害者総合支援法改正案で第八十九条の三に定めるいわゆる自立支援協議会が住宅セーフティネット法の居住支援協議会と同じように「支援協議会」という名称で位置づけられたりと、会議や協議会について名称が整理され、各種会議や支援協議会との連携強化も図られている。
そのような改正が並ぶ中、社会福祉を目的とする事業の全分野における共通的基本事項を定める社会福祉法の改正において、支援会議の規定が新設され、他法に定める会議や支援協議会との連携規定が置かれたことは、縦割りの壁を超えて地域の実情に応じた包括的な支援体制を構築するための極めて重要な法改正であると考える。
【結論】
社会福祉法改正案の第百六条の三の二の2の文中、
“生活保護法第二十七条の三第一項に規定する調整会議、生活困窮者自立支援法第九条第一項に規定する支援会議その他の他の法律に基づく会議(地域生活課題を抱える地域住民に対する支援に関する検討を行うものに限る。第五項において「関係会議」という。)において地域生活課題を抱える地域住民に対する支援の内容の検討が十分になされていない場合において、”は削除で良いのではないだろうか。
冒頭に述べた「概要」に掲げられている
“地域の実情に応じた"包括的な支援体制の拡充
につながる法改正になるかどうか、今後の審議の動向を注視したい。
