おかあさんのたまごトースト
日曜日、早起きをすればちょっとした「とくべつ」が待っていた。
早起きするつもりがない日でも、たまたまかけてもらったその声で目が覚める。
「たまごトースト食べる?」
母の作る日曜日のたまごトーストが好きだった。ねぼすけな私が、それだけのために午前中から起きることだってあった。
我が家は父を除いてみんなギリギリで生きている人たちだから、家がもはや戦場と化している平日の朝にはどう足掻いても食べられないものだった。どれくらいギリギリ行動かというと、家を出る10分前にようやく布団から這い出てくるレベル。KAT-TUNもびっくり。
そんなわけで平日の朝ごはんなんて菓子パン一つ口に放り込めればいい方で(でも一度も朝ごはんを欠かしたことはなかった)、のんびりトーストを味わう暇すらなかったのだ。
そして土曜日もなんだかんだで忙しい我が家にとって、日曜日は貴重な安息日だった。日曜日は唯一ゆっくりと朝の時間を過ごせる。
そこで母がいつも用意してくれて、私も妹も大好きだったのがたまごトースト。トースターで焼いた食パンにスクランブルエッグもどきを乗せただけのものだけれど、私たち姉妹は何よりも卵料理に目がなかった。オムライスも卵焼きも卵かけご飯も(料理……?)、出てきた瞬間に目を輝かせてしまう。卵って安い日だと10個で数十円だから、今思えば素晴らしくコスパのいい娘たちだったと思う。知らんけど。
焼きたてサクサクのトーストに卵の甘さ、黄身のとろみ、白身のやわらかな歯ごたえ。このたまごトーストを食べると、ほっこりとした幸せに包まれながら一日を始めることができる。母がたまごトーストを作ってくれるときは決まって機嫌もいいから、たまごトーストは我が家の平和の象徴みたいなものだ。
そういえば我が家のたまごトーストといえばもう一つあった。トーストにスクランブルエッグではなく、目玉焼きを乗せただけのもの。「天空の城ラピュタ」でシータとパズーが卵を乗っけたパンを頬張るシーンから、母が「ラピュパン」と名付けた。あれも一時期我が家でブームになっていたけれど、いつの間にやら作られなくなってしまった。ジブリ好きの我が家にとって、あれもまたどこか「とくべつ」だった。
ここまで引っ張っておいてなんだけれど、たまごトーストの作り方はすこぶる簡単だ。要はレンジでスクランブルエッグもどきを作るだけ。
まずは卵を器に割り入れて10秒ほどレンチン。爆発しないように事前に黄身を軽くつぶしておくのが大事。
そして固まった部分をお箸か何かで軽くほぐして、それからまた10秒ほどレンチン。この作業を何度か繰り返すうちに全体的に固まってくる。半熟か完熟かはお好みで、いい感じになったなと思ったら塩胡椒を混ぜて、焼きたてのトーストにかけたら出来上がり。
多めに見積もっても10分あればできる。なんなら5分。たったこれだけの作業を、たかが平日にすらできない我が家がいかに限界なのかはひとまず置いといて、これがまた美味しいのでぜひ作ってみてほしい。レンジと卵は偉大なり。
このズボラ母直伝たまごトーストは、一人暮らしを始めた私にも受け継がれている。受け継ぐなんてたいそうな言葉で言い表すほどのものでもないのだけれど、やっぱりこれは私にとって「とくべつ」感が否めないのだ。
特に理由はないけれど、私も決まって日曜日にたまごトーストを作る。とにかく料理ができない私にとって、レンジ一つでできる朝ごはんレシピはとてもありがたい。しかも卵の様子を見ながら少しずつ仕上げていく過程は、なんとなく料理してる感が出る。自分で作ってみると、母に用意してもらうときとはまた違った充足感が得られてほくほくしてしまう。
本当はこの記事も日曜日に書きたかったのに、昨日はあいにくお昼までぐっすりだった。そんな日もある。たまごトーストは不定期日曜日配信なのだ。
でもこうして書いているうちにお腹が空いてきたから、今日は作ってしまおうかな、お母さんのたまごトースト。
2021/02/14
編集部の今日の注目記事に載せていただきました。ありがとうございます🌷
さらにちょっとしたエピソードを添えて、初めての本に掲載することになりました。
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