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羨望映画「顔を捨てた男」

憧れるのやめましょう

大谷翔平のカッコいいセリフ。確かに一日だけならできるかもしれない。
でも羨ましがり屋が 名言を聞いても羨む性根は消えない。
僕がそうだ。

僕はジャッキーチェンに憧れ、ケンカに負けた悔しさから空手を始めた。
弱虫って劣等感から抜け出す為に続けた。
それは今も消えてない。別の誰かに勝って無くならない。
自分が弱者、アイツが強者と決めつけてしまったから。
今もアイツにバカにされてる気さえする。顔も覚えてないのに。

エレファントマン

エレファントマンと呼ばれたジョゼフ・メリックは19世紀のイギリス人で体が変形する病にかかった。
色々あって見世物小屋で働く事になり、最後は病院で穏やかな日々を送れたそうだ。
彼は症状が悪化する前は優しく知的な人だった。
しかし周囲は彼の話し方や容姿で知能が低いと決めつけた。
「The Elephant Man」って映画のモデル。
「顔を捨てた男」は邦題、原題は「A Different Man」で言葉遊びになってる。※1
他にも女性に優しく接してもらい感激するシーンはジョゼフの体験が元で、そのシーンは両方の映画にある。

要は二作とも監督がジョゼフに自分を重ねて映画を制作した。
The Elephant Manは監督自身の嗜好とジョゼフの容姿を重ねて「自分も人間だ」って話。
一方のA Different Man は監督の口蓋裂が無ければ、人生が変わったのかって話。※2

プラセボ効果

薬効の無い薬でも思い込みで効果が出る現象。
エドワードはやたら「プラセボか」と気にする。顔が変わった後もその単語を出す。 彼の思い込みと言えば、イングリッドを素敵な人とした事だ。

初恋の相手を理想化しちゃうのはわかる。
でも彼女は最初から危ない女だ。
連れ込む男が毎回違ったり、脚本にモデルがいるのを隠したり
陳腐な自殺で劇を締めくくったり、手のひらを返したり
「警告はしたからね」と魔性の女感も出す。でもエドワードは彼女を女神と決めつけた。

彼は思い込みが激しい。
電車内のニヤつくサングラスの男も、嫌々包帯を変えた看護師も、
眉ひとつ動かさないパントマイマーすら 自分を笑っている様に感じる。※3

一方のオズワルドはパントマイマーを見ても演技に感動する。
自分の容姿を気にしてなさそうだし、バーでは女性に言い寄られてたし、人前で歌える。
エドワードはそんな彼に嫉妬する。自分と同じなのに気さくで魅力的な男だから。でも本当に彼は魅力的なのか?

バーで彼は「投資で一山当てた」と言う。
ならこうも考えられる。
『オズワルドは金を持ってるのでタカられている』
バーの女は友達と笑いながら話してる。
あれを「彼って素敵ね」と取るか「また奢ってくれるってさ」と取るか。
自分は笑われ、他人は敬われてると取る。

オズワルド役のアダムピアソンは自分の役について
「彼はヒーローでも悪役でもない。ただ現れただけさ」と答えた。
つまり彼の登場に特別な意味はない。
でもエドワードはそう思わない。
彼がオズワルドをどう思ったのかは分からない。
自分が捨てた顔を拾って現れたように感じたのか?
自分の人生を乗っ取ったように思ったのか?
なぜならエドワードの心境が語られるシーンはほぼないから。

夏目漱石「草枕」

「智ちに働けば角が立つ…」って言い回しで有名な小説。
「とかくに人の世は住みにくい」だって他人が気になるから。

全てが思い込みだとは思わない。現実には顔を笑う人はいるし、差別はある。でももし、エドワードが最初からあの顔だったとしてもオズワルドの様には生きられなかった気がする。イケメン化しても主張は弱い人だったし。
つまり、彼は自分が顔のせいで不幸になった思い込んだ。
だからオズワルドに恐怖する。自分の説を否定する存在だから。
「同じ顔でも理想的生活を送ってる」と思い込んだ。
そうじゃないかもしれないのに。

エドワードが憧れた二人はカルトとコカインにハマるちょっとアレな人だった。
自分の人生をネタにした映画はどうやらコケたっぽい。
彼が焦がれた青い芝はよくある雑草だった。
そんな二人を前にしてエドワードは苦笑いを浮かべる。
「なんだこんな奴らだったのか」と ……そう僕は決め付けた。
これも思い込みだ。妄想を考察って言い換えてるだけ。

ホントは彼の苦笑が何を意味するかなんて分からない。
変わらない自分への自嘲なのか、それとも二人への嘲笑なのか、
監督が自分の思い込みに気付いた失笑なのか。
答えは出ない。だって僕とエドワードは違う人なんだから。

まとめ

思い込みで人生は変わる。

備考&備忘録

※1
エレファントマンはカラーじゃなくてあえてモノクロで映画を撮ってる。
顔を捨てた男はザラザラとした感じあるアナログっぽい絵になってる。
フィルムグレインってエフェクトらしい。虚構感を出す為にも使う。
要はどっちも古い風合いを出す撮影法を使ってる。
口笛が吹けないって言うのもエレファントマンにあった気がする。

※2
口蓋裂って唇の疾患。監督は手術してるが痕は残る。

※3
グラサン男は別の事で笑ってたのかもしれないし、看護師は血が嫌いなのかもしれない。勿論エドワードを見て笑い、気持ち悪がってる可能性もある。

・赤い扉と赤いタイプライターは本当に意味はないのか?

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孤独のシネマ 読んでくれてありがと、ジュースがコーラが好きです。

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