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こどくのち#1【#創作大賞2026 #ホラー小説部門】

#創作大賞2026 #ホラー小説部門


【あらすじ】
大学最後の旅行で琵琶湖へ向かった悠真たち七人。
しかし山中で道に迷った彼らは、
地図にも存在しない廃村へ辿り着く。

そこは、一度足を踏み入れた者が
二度と帰れない忌地だった。

笑う女、首を狩る落武者、
見る者を狂わせる異形――。
次々と襲い来る怪異を前に、
一人、また一人と消えていく仲間達。

逃げ場のない恐怖の中で明らかになる村の秘密。
そして全ての謎が繋がった時、
彼らを待つのは想像を超える真実だった。

あなたはこの結末を予想出来るか?


眼前に延びる深淵は、永遠に続く様に思えた。

そこは、右手に握るバッテリー残量10%の
スマホのライトでは
あまりに心許ない地下トンネルだった。

連続して訪れてくる激しいアップダウンには、
左手に握った日本刀ではトレッキングポール
の代わりににもならない。

「はぁ、はぁ、はぁ。
 くそっ、どっちに行けば良いんだよ!」

二股に分かれた分岐点。
悠真は、突如運命を変えるかもしれない選択を
余儀なくされて焦りが募る。

額に滲む汗は顔についた血飛沫と合わさり
水滴となって地面に滴る。

その地面は行手を阻むようにぬかるみ脚を取り、
着実に体力を削って来た。

そんな中、ついに頼りだったスマホの
バッテリーが切れ、悠真の身体は
一瞬で闇に包み込まれた。

人工的な小さな光は、精神衛生上でも
支えになっていた事を痛烈に思い知る。

「うわっ、マジかよ、クソっ!」
焦りはいつしか恐怖へと変貌し、
やがて絶望へと成る。

トンネルの壁を手探りで進もうとしたその時、
背後から「ざっ、、ざっ、、ざっ」
とゆっくりとした足音が響いた気がした。

来た、、来た、、来た。

あまりの恐怖に頭が真っ白になり、
膝が笑う、呼吸の仕方を忘れて
口からはヒューヒューと変な音が鳴る。
心臓の鼓動もうるさい。

どこで選択を間違えたのだろうか?
意味の無い思考に押されて後悔が襲ってくる。

もう無理なのか。
諦めかけた時、突如前方から声が聞こえる。
「こっちだよ」
「うわっ!えっ?」

一瞬の驚愕。
しかしすぐにそれが
聴き馴染みのある声だと気付き、
言いようのない安心感が漂う。
いや、そんなまさか。

呆気に取られ突っ立つ悠真に再び檄が飛ぶ。
「良いから早くこっちに来て!」
暗闇の中で顔ははっきりと見えない。

「まっ、待ってよ!」
突如現れたその声は、大きな希望となった。
藁でも苔でも縋りたい悠真は、
何の疑いもせずに慌てて後をついていった。

相手はトンネルの中を全速力で駆けて行く、
遅れまいと悠真も必死で追いかけた。
独りでは無くなった事、
絶望の中に一筋の希望が見えた事に、
胸が高鳴っていくのを感じる。

絶対にこのチャンスを逃してはならない、
これを逃してしまったら死が待っている。
なぜかそんな気がしていた。

どれだけ走ったのだろう、
息が上がり脚がもつれかけた時、
眼前の通路に薄い陽の光が差し込んで来た。

「やった!そ、外だ!がっ!」
喜んだのも束の間、
突如現れた壁に顔面から
激しくぶつかって鼻を強打した。
「いってー、何だよ!?」

そこは木で出来た格子で封鎖された
行き止まりだったのだ。

そして気付くと先程まで前方を走って
先導してくれた
人物は煙の様に消えていた。

「あれ、どこいったんだよ?それにここは、、」
悠真はその場所に見覚えがあった。
足元に散らばった、一貫性の無い雑多な物。
日本人形、こけし、髪飾り、石、
鏡、位牌、日本刀、具足等。
「ここは、もしかして、橋の近くの祠の中か、、?」

格子の外を覗くと、案の定そこには
悠真達が乗って来た車があった。
「おーいっ!誰か!誰かいないかーっ!」
力の限り大声で叫んだが、
言ってすぐに意味の無い事だと思い直す。

「クソッタレ!」
悠真のついた悪態を闇が飲み込んだ時、
代わりに絶望を纏った音が
遠い背後から追いかけて来た。
「ざっ、、ざっ、、ざっ」
ゆっくりと獲物を追い詰める様な、
余裕を持った足音。

この状況でこの足音が出せるのは狩る側だ。
悠真の背中に悪寒が走る。

「クソッ!開けよ!開けよ!」
格子を揺らしても、蹴りをくらわせても
開きそうに無い。

手にした日本刀で思いっきり切り付けるが、
傷がつくばかりだ。
どうする?どうする?
少し冷静になって考える。
すると格子の間に扉となる
隙間がある事に気付いた。

悠真は神経を集中させてその狭い隙間に
縦一閃刀を振り下ろした。
バキッと音を立てて割れる閂。

「やっ、やった!」思わず叫ぶ悠真。
急いで格子を蹴り飛ばすと扉は勢いよく開いた。
胸を撫で下ろした悠真だったが、
同時に、すぐ背後から聞こえた
「べちゃべちゃっ」と気色の悪い音に
心臓が飛び跳ねる。

悠真は恐る恐る背後を振り向いた。
そこにはただただ伸びる漆黒。
いや、よく目を凝らして見ると、
少し先の地面に何か塊が落ちている。

少し目が闇に慣れて来ると、落ちている塊が
人の頭だと気付いて絶望が押し寄せてきた。

この村に来て散々な目に遭って来たが
絶望的な状況とは中々慣れないものだ。
落ち着いていた心拍数が、
恐怖という燃料を焚べられて一気に噴き上がる。
息の仕方を忘れ、膝が笑う。

「な、直人?直人なのか?
 おい、趣味悪いぜ起きろよ、直人?」

手を伸ばそうとしたその時、
その頭がわずかに動いた。
悠真はびくりと肩を揺らして動きを止める。

するとそれは首をもたげる
蛇のように段々首を起こした。
それに合わせて引き攣っていく悠真の顔。

そしてそれは首だけを不自然に立てた。
暗いからか、首から下がよく見えない。

「うわぁっ!!」
その顔を見た悠真の叫びは、
トンネルを逆流し村全体に響き渡った。
外に向かって走り出そうと振り返ったその時。

ドンッと強い衝撃と痛みが胸から背中に走った。
「えっ?」
下を見ると胸に何かが突き立っている。

握り締められていた日本刀は、
悠真の手から落ち、かしゃりという
頼りない音を立てて
地面に横たわった。


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