見出し画像

キルトピーストケラウノス#04

#創作大賞2026 #ファンタジー小説部門


ワンは写真を見ると、眉間に皺を寄せた。
「この娘はある人物の娘さんで、
 昨日新宿のクラブで何者かに拉致されたらしい。
 それでその娘の救出をお願いされて
 探してるって話だ」

そこまで話すと、ハトはせっかくだったら
コーヒーでも飲みたいなと言いながら
チョウを見つめた。

ワンはチョウにコーヒーを
入れるように指示すると、
思案するように天を仰いだ。
「なぁ、取り敢えず俺も一服してもいいか?」
テーブルに置いてあった電子大麻の箱を摘んで
顔の横で振りながら聞くと、
ハトは手を上げて促す。

ワンは落ち着いた様子で
取り出した大麻のジョイントを
機器にはめると吸引して紫煙を燻らせる。

「いやぁ、こっちもちょうど
 一服しようとしていたら
 お前が来たもんでな」
とソファに深くもたれた。

「なに気にするな、それじゃあ本題に戻ろうか」
ハトはテーブルの上の写真を滑らせて、
ワンの目の前に突き出すと、
ワルサーのスライドを引き銃口を向ける。

チョウがコーヒーを二つ持って来て
2人の間に置いて行く。
静まり返った部屋にチョウの震える手が奏でる
カタカタという音が響き渡り、場は緊張感を増す。

「これ以上の無駄話もなんだから
 単刀直入に聞こう。
 分かってると思うが、
 返答は間違えない方が良い。
 この女の子が分かるか?」
ハトは冷酷さを貼り付けた表情で、
ワンを覗き込む。
その深淵の様な瞳に、思わず喉を鳴らす。

「いや、知らないな」
そう、ワンが言った時、
後ろに立つチョウの目が泳いだ。

「そうか、おれが得た情報によると、
 昨日渋谷のクラブから
 出た所で攫われたらしいが、
 その中にお前の部下がいたとの事だったんだよ。
 ちなみに、そこのチョウ君も
 関わってるようだが?」

ワンの眉間がピクリと動き、
振り返りチョウを見上げる
チョウは顔面蒼白で冷や汗をかき
目を泳がせている。

「もちろん俺も確かな情報を得て
 ここまで来ている。
 大人しく今すぐ返すなら
 これまでで手を打つが、
 しらばっくれるなら、
 残念だが2人ともこの場で
 殺さなくちゃならなくなる」

そう言ってハトはワンの前に置かれた方の
コーヒーを手に取ると、一口啜った。

するとやはり毒でも盛っていたのか、
チョウは慌てたように中国語で
ワンに話し始めて、ワンはそれを
片手を上げて制した。

「言っとくが、下っ端が個人的に攫ったなんて
 言わないでくれよ、
 若い男が数人でお前達が使う
 黒いバンに無理矢理乗せたのが
 目撃されてるんだ。
 お前らの素性は全て把握している、
 もっぱら人身売買の商品にでも
 するつもりなんだろう?」

さあ、早く答えてくれないと
コーヒーのおかわりが必要になると言い、
ハトはソファに深く背を付けながら
ワルサーの銃口をワンに向ける。

ワンは一つ細い息を吐くと、
「わかった、わかったから
 一先ず銃をどかしてくれ」
と両手を上げて言う。

そして電子大麻からガラになった
ジョイントを外すと、
灰皿に落としソファに深く座り込んだ。

「せっかくきてもらって悪いが、
 おれは知らない」
「そうか、残念だ」
そう言ってハトは躊躇う事なく
チョウの眉間を撃ち抜いた。

ワンの顔に血飛沫が降りかかり、
背後からどさっとチョウが倒れる音がする。
ワンは額に血管を浮き出し、
顔を真っ赤にして
血走った目でハトを睨みつけてくる。

「まぁまぁ、落ち着けよ。
 だから前もって言ったじゃないの?
 しらばっくれるなら殺すって。
 今の反応は撃たれたいんだなぁと思ったんだよ?
 違ったなら謝るから、次は気を付けてくれよ?」

ハトはコーヒーを一口啜り、
テーブルに戻す。
「よし、それじゃもう一度聞く、
 この娘は今何処にいる?」

興奮していたワンは天井を仰ぎ見ると、
大きく息を吸って深いため息を一つ吐く。

「ちっ、あぁ、確かにお前が言う通り昨日部下達が
 (人身売買の)商品を仕入れてきたと言っていた。
 それの事だろう、詳細は本当に知らない
 あいつらがどこかに隠したんだろ」

それを聞いてハトはぱあっと破顔した。
「そうだよな、それじゃあ今すぐ知ってる部下に
 電話を掛けて居場所を聞き出せ。
 但しスピーカーにして日本語で会話しろ。
 今の状況を悟られたら殺す」

銃でワンを指して促すと、
ワンは不承不承スマホを手に取り、
スピーカー機能を使って部下に電話を掛ける。
数度のコールの後、
若い男が緊張を交えた声で元気よく電話に出た。

「あ、もしもしご苦労様です!」
「ああ、ちょっといいか?お前ら昨日商品を
 仕入れたと言ってたよな、何処に隠した?」

「あ、はい、商品は品川の埠頭の
 コンテナに隠してて、
 明日の夜20時に中国行きの船に載せます。
 今はまだ薬で寝てるでしょうが、、
 どうかされたんですか?」

「いや、なんでもない。わかった。」
ハトは再び銃口をワンの眉間に当てると口パクで
どのコンテナだと言うように指示した。

「あぁ、ちょっと待て、ちなみにどのコンテナだ?」
「え?あ、はい、海ベタのB556て書いてある
 青色のコンテナですけど。」
ワンがわざわざそんな事を
聞く事が珍しいのだろう、
部下も訝しげに答えている。
しかしハトは容赦無く
「警備はいるのか?」と口パクする。

「あ、あぁ後あれだ。警備はいるのか?」
「はい、一人つけてますけど。増やしますか?」
その問いにハトはゆっくり首を振った。

「いや!いや、いや大丈夫だ。
 一人で大丈夫だ。
 いや、何でもない。分かった」
ワンは電話を切ると、
額の汗を拭いハトを見据えた。

「分かったな?もういいだろう?
 お前の事は追わないから、
 今すぐ出て行ってくれ」

ハトは銃を下ろすと、
タバコを灰皿で消す。
「あぁ、そうだな。
 それじゃあ後は女の子を助けに行くとしよう」

ハトは立ち上がり踵を返して玄関に向かう。
しかし部屋の扉の前に来ると、
ふと足を止めて振り返った。

「んーそうだな、
 やっぱりお前を生かしておいても、
 また同じ事を繰り返すんだろうな」

言われたワンは生唾を飲み込み、
その顔からはさっと血の気が引いていった。

その時玄関のドアがバンと
荒々しく開いたかと思うと、
アサルトライフルで武装した手下達が大勢
勢いよく傾れ込んできたのだった!


最後まで読んでいただき、
本当にありがとうございます。
「面白かった」「少しでも刺さった」
と感じていただけたら、
ぜひ“スキ”とフォローで
応援していただけると嬉しいです。
あなたの反応が、次の一篇を書く力になります。
#創作大賞2026 #ファンタジー小説部門

いいなと思ったら応援しよう!