「年の離れた友達になってください」 【尾崎耕介】
寄稿:タイを愛する長浜市職員 尾崎耕介
人生には、勇気を振り絞った瞬間にだけ開く扉がある。
私にとってその扉の向こうにいたのは、あの『探偵!ナイトスクープ』の生みの親であり、稀代のプロデューサー、松本修さんでした。
打ち上げの夜、震える声で伝えた願い
出会いは今から27年前。滋賀県長浜市で活動していた演劇「北近江夢幻塾」の打ち上げの席でした。当時の私は文化ホールの職員として、劇団の照明を担当していました。
劇団顧問として公演のたびに足を運んでくださっていた松本さんは、私にとってまさに雲の上の存在。そんな松本さんに、私は自己紹介として、学生時代のバックパッカーの話や、就職してからもタイに通い詰め、現地の女性や料理の素晴らしさに魅了されていることを熱っぽく語りました。
すると松本さんは、私の話をとても面白がってくださったのです。その勢いのまま、私は思い切って口にしました。
「松本さん、僕と、年の離れた友達になってください」
私は22歳、松本さんは49歳、親子の年齢差でした。
周りはきっと、
「松本さんに何て失礼なやつなんだ」
と思ったことでしょう。
私自身、心臓が口から飛び出しそうなほど緊張して
絞り出した一言でした。
すると松本さんは、ふっと表情を和らげて、「いいよ」
と言ってくださいました。
そこから、不思議で贅沢な「交際」が始まったのです。

築年不詳のボロボロアパートで囲んだ鍋
それからというもの、松本さんからは、
「良いお店があるから一緒に行かないか」
とお誘いいただき、大阪、福井、滋賀と、本当にたくさんの美味しいものを一緒に食べさせていただきました。
私が結婚してからは、妻も一緒に食事に行ったり、『探偵!ナイトスクープ』の収録にも招待していただいたり……。
結婚した当時の私は、長浜駅近くの築年数も分からないようなボロボロのアパートに住んでいました。決して裕福ではありませんでしたが、そんな狭い部屋に松本さんをお招きし、一緒に鍋を突き、笑い合った時間は、今振り返ればどんな高級レストランでの食事よりも豊かなものでした。
また、松本さんにぴったりだと思った素敵な女性との食事をセッティングさせていただいたことも、今となっては微笑ましい思い出です。
トンビにさらわれた「ハンバーグ弁当」事件
松本さんとの思い出で、今でも思い出し笑いをしてしまうのが、日本海へ「磯遊び」に行った時のことです。
アワビやウニ、サザエを獲って遊ぼうと意気込んで出かけたお昼時。松本さんが楽しみにしていたハンバーグ弁当を開け、飲み物を取ろうとした瞬間でした。メインのハンバーグを、空から急降下してきたトンビが鮮やかにさらっていってしまったのです。
呆然と空を見上げ、なんとも残念そうに残り物のおかずを食べていた松本さんの表情。テレビ界の巨匠の、あまりにも人間らしくてチャーミングな姿が、私は大好きでした。
ついに叶った、真夏のタイ旅行
私の趣味であるタイ旅行の話をするたび、松本さんは、
「そんなにタイがいいなら、一緒に行きたいなあ」
と仰っていました。その約束がようやく果たされたのが、令和5年の夏のことです。
念願叶って一緒に訪れたタイ。お互いの近況や夢を語り合い、私の妻や子どもたちと一緒に過ごした時間は、かけがえのない大切な思い出となりました。
また一緒にタイを旅して、青い海を眺めながら、ゆったりと流れる時間を感じたい。あの日、打ち上げの席で「友達になってほしい」と願った自分を、今は心から褒めてあげたいと思います。
松本さん。これからも、この不思議な縁がどこまでも続いていくことを願っています。
また、タイに一緒に行きましょうね!

