能力や人柄に関係なく、組織で意図的に作られるローパフォーマーとは? -精神分析的視点から考察-
皆さん、こんにちは。
たけもと心理・労務オフィスの竹元です。
今回は組織が意図的に作り出すローパフォーマーについての話をします。心理学(精神分析)的視点から、考察しています。
「前はもっと仕事に自信があったのに、今の職場に来てから自分がダメ人間に思える」
「どんなに頑張っても、上司から『期待外れだ』と責められてしまう」
皆さんはこんな経験をしたことはありませんか?
もし今、そんな風に自分を責めているとしたら、まずは一度、深く息を吐いてみてください。
あなたが苦しんでいるのは、あなたの能力が足りないからではありません。臨床心理学(精神分析)の視点から見ると、むしろあなたが「誠実で、期待に一生懸命応えようとする人だから」こそ、組織のバグに巻き込まれている可能性が高いのです。
なぜ、優秀な人が追い詰められてしまうのか。そのメカニズムを少し専門的な視点から解剖してみましょう。

始まりは「お気に入り」だったはずなのに
この現象の最も不可解なところは、あなたが最初から嫌われていたわけではない、ケースが多いという点です。むしろ最初は、仕事ができて頼りになる「お気に入り」として迎え入れられていたはずです。
そうすると上司と部下の関係は以下のようになります。
あなた: ある程度アバウトな要求も、持ち前のスキルと責任感で形にする。
上司: 「この人なら期待できる(悪い表現をすると思い通りに動いてくれる)」と、次々に仕事を振る。
最初はうまく回っているように見えます。しかし、人間のエネルギーには限界があります。 度重なる無理難題を受け続けることはできないですし、こなせる仕事量にも限界があります。
あなたの心と体が限界を迎え、アウトプットにわずかな綻びが出たり、健康な違和感(ブレーキ)が働いたりする瞬間がやってきます。
普通の職場なら「大丈夫?少し業務を調整しよう」となるべき場面です。
しかし、心に余裕のないリーダーは、ここで手のひらを返したように「一発アウト」の烙印を押してきます。

自分の不安を押し付ける「投影同一化」の罠
なぜ、急に態度が急変するのでしょうか。ここに心理学的な病理が隠れています。
過圧的(いわゆる詰めてくる)なリーダーは、内面に「自分の設計ミスや無能さを認められない」という強烈な不安を抱えています。あなたが限界を迎えたとき、彼らは「自分のマネジメントが悪い」とは絶対に思いません。
そこで、自分の焦りや無能感という心のゴミとなるものを、一番近くにいるあなたに押し付けます。これを心理学で「投影同一化(とうえいどういつか)」と呼びます。
※投影同一化とは、自分が持っている感情(不安)を受け止めきれず、相手に働きかけを行って、自分が本来持っている感情(不安)を相手に持たせてしまうという心理的機制です。
自分の怒りを認めたくない人が、相手をわざとイライラさせ、相手が怒ることで「相手が悪い」と正当化するのもこの一例です。
「私が悪いのではない、お前が期待外れの無能なんだ」と責め立てることで、彼らは自分のプライドを守り、あなたを「組織のストレスを引き受ける生贄(スケープゴート)」に仕立て上げるのです。
真面目な人ほど、「自分が悪いのかな」と内省して受け止めてしまうため、この罠にハメられやすくなります。

あなたの「限界」は、人間として正しいサイン
上司から急に「期待外れだ」なんて言われると、深く傷つきますよね。
でも、知ってください。 あなたが限界を迎えたのは、能力が低いからではなく、「これ以上は心が壊れてしまうよ」という、人間としてごく正常なブレーキが働いたからです。
組織の歯車(マシーン)になりきれず、自分の尊厳を守るために、心身が正しくSOSを出してくれた。それは決して、あなたの敗北ではありません。
心のシャッターを、そっと半分下ろそう
もし今、その苦しい渦中にいるのなら、これ以上その上司に「100点」で向き合うのはやめましょう。相手の言葉はあなたへの正しい評価ではなく、ただの「不安の鳴き声」です。
言葉を手前で弾く: 「あ、今上司は自分のミスを私のせいにしたいんだな」と客観的に眺める。
業務は「仕様通り」に淡々と: 感情をオフにして、合意されたことだけを事務的にこなす。

あなたが身を挺して、その職場の歪みをすべて背負う必要はないかもしれません。 あなたの力はもっとあなたを大切にしてくれる、温かい世界のために取っておく、という選択肢もあるのかもしれません。
次回は、これを組織ぐるみで行われているケース、職場のゆがみにどっぷりハマる人とそうでない人を考察します。
当オフィスでは、組織風土を精神分析的視点から考察を行っています。
なぜ、この組織では問題が起きて、ある組織では問題が起きないのか、心理学の視点を用いて、より本質的に解決を目指しています。
