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DIR EN GREY新譜「MORTAL DOWNER」に寄せて

4月8日にディルのニューアルバム「MORTAL DOWNER」が発売された

このジャケット、めちゃくちゃ好きです


前作「PHALARIS」から3年10ヶ月ぶりのアルバム
「死に至る鬱」と題されたこのアルバム…何周か聴いたけど自身の中で好きか嫌いかの評価すら決めかねる超問題作になってる
いや、好きなんだけど何かが引っかかってる
タイトル通り、最初から最後までダウナーで、一才の光も無く、身動きが取れないまま闇より深い暗黒に突き落とされるようなこのアルバムは、ディルお得意の長尺曲も無く、羅刹国や残のような激しい曲も無く、多少の起伏はあれど一定の温度と湿度を纏ったまま全14曲で1曲とも感じるような異質なアルバムになっている
近年のアルバムで言えば大名盤の「DUM SPIRO SPERO」のような究極の構築美は無いものの、雰囲気は近しい気がするし、かと言って根源にあるメロディアスを重視し、贅肉を削ぎ落とした「ARCHE」のようなものも感じる
歌詞自体はひたすら他者とのコミュニケーション不全を怒りと憎しみで歌った「The Insulated World」を感じる
逆に前作「PHALARIS」とはサウンドやコンセプト面はその流れの一部かもしれないけど、アルバム全体の方向性は全然違う気がする
前作が極彩色の地獄だとしたら、今作はモノクロの地獄って感じ

過去のどのアルバムにも近いようで遠い、異質で不思議なアルバムだ
強いて言うならトータルで見れば2ndの「MACABRE」が近しいかも

でも批判覚悟で言うなら、何周も聴いているうちに今回のアルバムからは「ADORATIO」以降のsukekiyo(ディルのボーカル京の他バンド)みが随所で見え隠れしちゃって、今回の「MORTAL DOWNER」は「これこそがDir en greyだ!!」と手放しに言えなくなってるように思えた

そんなわけで客観的になるためにも曲を細分化して考える

1.ISOLATION
「孤立」というタイトルを冠した始まりのインストナンバー
流れる音は少なく、荒廃した荒野に1人取り残されたようなイメージがする

2.灰燼に帰す(跡形もなく焼けて無くなる意の慣用句)
実質的な1曲目
ヘヴィなイントロからいきなりロシア語で「どうしてこうなっちまった?お前は悪魔なのか?」(訳はなんと無くです)と低音で繰り返すカルティックな曲
ヘヴィながらテンポは大分ミドルで、今回のアルバムの1発目としては象徴的で「ここから何か始まりそう…」と予感させる
個人的には今回のアルバムでトップレベルに好き

「天寿全う 蹂躙 黙殺」

3.蜿蜒(くねくねと長いことの意)
メロディが際立つヘヴィで1番今回ディルらしいと感じる曲で、暗い曲なのに今回の中ではキャッチーにすら感じる
重たいリフに所々嫌いなアルペジオや音が重なるホール映えしそうな曲

「記憶が殺す 忘れられないまま 目を剥く」

4.Discard(廃棄)
そう、何周か聴いててこのイントロの音が聴こえた時に「ん?sukekiyo?」って思っちゃったんだよね
あと「何が違うんだ?」の後の展開
曲はカッコいいんだけど、歌詞もこれまでのディルの京とは違くてsukekiyoみを感じちゃう
いきなり「座右の銘」とか出てくる所とか
このアルバムの中では比較的アグレッシブだけど、陰鬱とした雰囲気は変わらず纏ってる

「優雅 賛美 自殺
隣り合わせの生き自慢
廃棄 賛同 自白
不釣り合わせの情時間」

5.Bloodline(血脈)
さらにテンポをグッと落としつつもヘヴィさと儚い感じが上手い具合に同居してるメロディの際立ってる曲
ドラムのShinyaが原曲を作ったらしいけど、途中のドラムロールは他の人に入れられたらしい
ただメロディアス好きのShinya作曲らしい曲で聴きやすさは今回1かも
ちなみにこの曲は当初メンバーの選考ではボツ予定だったらしいけど、京がそれに間違えてメロディを付けてそれを気に入って入ることになったらしい

「生きた全ての命 跡形も無く
生きた日は継がれる
火の雨
夢人」

6.There’s nothing else(そこには何も無い)
これまでのディルだったらただの1曲だったろうけど、今回のアルバムではフックになり得る曲
歌詞も他者に怒りながらどこか諦めもあるような、曲含め「The Insulated World」に通ずるものを感じる

「もうこれしか残ってねえんだよこれ以上追い詰めんな
言葉で人は死ぬし、そんな選択肢を植え付けた」

7.歪と雨
最初聴いた時「ギターのDie作曲っぽいなぁ」と思ったら本当にそうだった
ベースが前にグイグイ出てきつつもメロディアスさを引き立てて、ジャジーさすら感じる
曲も「誰の傷だ?」とパワーコーラスが入るところが好き
「Withering to death」に入ってても違和感が無い曲だなぁと思った
ちなみに完全に余談ですが、俺は以前羽田空港でばったりDieさんをお見かけしたことがあり、思わず話しかけたら優しく微笑みながら「応援してくれてありがとうなぁ」(関西弁のイントネーション)と言って貰えたことがあり一生の自慢です

「知ってはならぬ
それが屍の証
目を塞いで
口を塞いで
耳も削ぎ」

8.The Devil in Me(私の中の悪魔)
このアルバム唯一のシングル曲
シングル発売当初は「なんでこの曲をシングルにしたの!?」ってくらいドロドロとした凄い暗くヘヴィな曲だったのに、アムバムのこの位置に来るとキャッチーにすら感じる不思議
この曲を発売してからアルバム作りが始まったらしいので、今回の「MORTAL DOWNER」の起点になってる曲かも
実は今も昔もあまり好きでは無い曲

「人格否定を浴びて
誰が産んだ?
誰の為の地獄?」

9.MOBS(群衆)
PVも作成されたり、インタビューでDieが「この曲が出来て自分らの目指す場所が分かった」というように今回のアルバムでは中核を成す曲であり、俺もこの曲が今回のアルバムでは1番好き
「変えられないのは誰の性か」って歌詞の所のメロは初見からかなりゾクゾクしてヤバすぎると思ったし、その歌詞に入る直前に薄っすら入る京のグロウルがエグい
カルティックな怪しげなアルペジオから始まり、静かに、地を這うように展開していき、途中ではリチュアルなアプローチもあって、それでいて一気に音の重心が下がったり、今回のアルバムでは比較的盛り沢山の曲
6分台と今回のアルバムでは長い部類だけど、体感4分ぐらいで終わるほど気に入ってます
この曲は「ARCHE」から続く削ぎ落としていく音像のひとつの到達点だと思う

「笑い掛けるのは鏡越しの歳を重ねた顔を歪め
笑い掛けてるのは何時もの私」

10.Void(空虚)
MOBSに続きこちらも6分台の曲
だけどこちらはMOBSみたいに隙間を作って聴かせるんじゃなくて、細かくドラムやベースもフレージングしてヘヴィに聴かせて、ラストはそれまでのダウナーさが若干解放され、潔く終わる不思議な曲(カッコいいです)

「屍人が集まる緑の中
魂だけが
解き放たれていく死から」

11.Demand(要求する)
この曲のAメロとサビがかなり歌謡曲味があるせいか俺はめちゃくちゃsukekiyoに感じる
この歌謡曲みたいな感じは正直少し今回のアルバムからは浮いてる
曲単体で聴けばカッコいいんだけど、全体の流れの中では明らかに色が違ってる
そのせいで悪い意味で印象が強く、アルバムとしてsukekiyoみを感じてる大きな原因だと思う
そして申し訳無いけど「どうして私だけが辛いの〜」からの京の歌い方、正直俺的には無し
表現のためにそういう風に歌ってるというより、奇を衒いすぎて外し過ぎた結果全くマッチしてないように感じる
素直にシャウトかグロウル、もしくはホイッスルかがなり声で良かったと思う

「そう複雑な感情と現実の狭間
バラバラになる後悔ごと
生きた全てが」

12.楔(固く繋ぎ合わせるの意)
今作で1番激しいのがこの曲
楽器隊のコーラスも盛り盛りで、スピードは無いものの(途中に唯一の疾走パートはあるもののそもそものテンポがミドル)、ヘヴィなグルーヴですげぇカッコいい
「害虫は幸福を喰い破る」って歌詞は今作の根本にある言葉かも
この曲も陰鬱なのは変わらないけど、ストレートにカッコいい

「寝言は死んでからに
譫言の様に繰り返すばかり
致死量を超えたこの世は地獄か
はて又は」

13.盲目が故に
う〜ん不思議な曲
激し目なんだけど激しいっていう表現がしっくり来ない
獰猛って感じの曲
ただメロディの高低差の激しさは今作でもトップクラスかも
そしてあっという間に終わる笑
ラストの曲への繋ぎみたいになってしまってる惜しい曲

「拝啓、お元気ではないはず
から始まる恋文は
どうやら貴方と似ているらしいから」

14.no end(終わらない)
前作、前々作と歌モノで終わったから今作は激しい曲で終わるかな?って予想してたら外れて見事に歌モノでした(歌モノもちゃんと好きですよ)
これまでと同様にダウナーな雰囲気は纏いながらも一筋の小さな光を少し感じさせるような音
それでも希望を感じさせるというより、絶望に塗れ過ぎてやぶれかぶれの末の諦めを思わせるような光
確かに今作のひたすら深淵を彷徨い、さらにそこから落ちていくようなアルバムの最後を飾るに相応しい曲だと思う
ただ…ギターソロの音が…ちょっとズッコケました

「希 叶いますでしょうか?
何故独り
理解しているから壊す」


とまぁ、以上が完全に俺の独断と偏見による「MORTAL DOWNER」の感想です
要するに全体的にめちゃくちゃ暗く、ここまで無色なアルバムは無く、結成29年目にしてめちゃくちゃ実験作を出してきたようなイメージです
ただこれが今のディルのモードなんだなというのはかなり分かりやすいです
多分好き嫌いが分かれるし、20年前の俺なら否定していた曲、歌詞だと思う
だけど色々なことを経験して、疲れ、ほんのりとした希死念慮に苛まれる今の俺にとっては時に救いに、時に最下層まで突き落とすようなアルバムだと感じた

…ここまで書いて分かったけど、俺「MORTAL DOWNER」好きだわ笑

分かりやすさも、優しさも、干渉もない
ただただ56分間繰り広げられる漆黒をさらに黒く染め上げた世界
だけどそこでは他人はおろか自分自身も見えない
だからこそ無責任な応援ソングよりも、自分を目覚めさせてくれる
そんなアルバムです

サブスクにもあるので興味があれば是非

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