街路樹の立ち並ぶ坂道を抜けて
物語るとは、「ある事実が、事情をよくあらわすこと」を指す。
私は車で通勤をする。毎日通る、私の通勤路。
ある景色に、ふと目が留まるようになった。
それは、両側に何本もの街路樹が立ち並ぶ一本道。
この日は十一月中旬。
葉も色づき、様々な表情を見せてくれる季節だ。
そんな木々を、人々も興味深そうに見上げている。
そんな人たちを横目に、私は車を走らせる。
街路樹が立ち並ぶ道を一直線に進んでいくと、
そこから右に大きく曲がる。
曲がってもなお、街路樹は続いている。
曲がった先は、少し上り坂。
峠に差し掛かったあたりから、今度は長い下り坂になる。
かなりの角度で降りていく。
まるでジェットコースターのように、上っては降りる。
そしてまた上り坂。今度は長い上り道。
まるで、私の感情のようだ。
この間もずっと、街路樹が立ち並んでいる。
東へ向かって登っていく。
頂上付近に差し掛かったとき、目の前に朝日が差し込む。
まぶしい。
冷え込みは鋭くなり、吐く息は白い。
精錬された空気が、冬の到来を告げていた。
私は変わらず車で通勤をする。
もちろん、あの街路樹が立ち並ぶ道を走る。
両側に街路樹が立ち並ぶ一本道。
しかし、年末が近づくこの時期。
あれほど鮮やかだった葉は枯れ落ち、道路に散乱している。
上を見上げていた人々の姿も、もうない。
そんな街路樹を横目に車を走らせる。
街路樹が続く道を一直線に進み、右に大きく曲がる。
曲がってもなお、街路樹は続く。
曲がった先は、少し上り坂。
峠に差し掛かると、長い下り坂へ。
かなりの角度で降りていく。
まるでジェットコースターのように。
そしてまた上り坂。今度は長い上り道。
以前感じた「綺麗さ」は、そこにはもうない。
東へ登っていく。
頂上付近に差し掛かったとき、また目の前に朝日が差し込む。
雪が降りそうな黒い雲に半分かかった、朝の光。
寒さは続く。その日は雪予報。
初雪が降るかもしれないと思いながら、
私はいつもどおり車に乗り込む。
あの街路樹が続く通りの少し手前の交差点で、信号に止まった。
私はとっさに迂回することを選んだ。
今日、あの長く角度のある下り坂を下ってしまえば、
上へ戻ってこられない気がした。
いつもと違う通勤路を通り、
コンビニに寄ってホットコーヒーのブラックを口にする。
いつもと「違う」通勤路。
もうすぐ年が明けようとしている。
二〇二五年も終わりだ。
思えば今年はたくさんの新しいことがあった。
子どもが産まれた。
家を建てた。
引っ越しをした。
そして、街路樹のあるあの道路に出会った。
私は来年も、あの道路を何度も何度も通るのだろう。
私があの街路樹に、
あの坂道に、
あの朝日に
何を思うのかは、まだ分からない。
ただ、これが私と、街路樹が立ち並ぶ坂道との物語。
