映画『壁の外側と内側』──描かれた微かな希望は光なのか
はじめに
otto鑑賞 21作品目。
パレスチナに対するイスラエルの侵攻を扱った作品は
ノー・アザー・ランドに続いて、2作品目。
前回の作品は、パレスチナとイスラエルに住む人々の内部から
見た作品だったのに対して、本作は日本人ジャーナリストが
外部からの目線で取材をした記録になる。
ゲストとして監督が登壇する回には参加できず、とても残念。
あらすじ
2023年10月7日、イスラエルに「壁(分離壁)」で封鎖されたガザ地区からイスラム組織・ハマスが越境攻撃を行い、それに対してイスラエル軍による「壁の向こう」へのすさまじい報復攻撃。死者は5万人を超え、そのうち1万8千人以上が子どもという惨状で、停戦が見えない中、その数はいまも増え続けている。
外国人ジャーナリストがガザに入ることが困難な中、2024年7月、同じく「壁」で分離されたパレスチナ・ヨルダン川西岸地区に、ボーン・上田記念国際記者賞の受賞経験もある中東ジャーナリスト・川上泰徳が取材に入った。今年3月に米国アカデミー賞長編ドキュメンタリー映画賞を受賞した『ノー・アザー・ランド 故郷は他にない』でも舞台となったマサーフェル・ヤッタにも入り、イスラエル軍による攻撃・破壊やユダヤ人入植者の暴力の激化を目の当たりにする。一方、イスラエル側では国民の多くが「壁」の外側の惨状に目を向けない中、兵役を拒否する三人の若者がいた。
中東を見つめつづけたジャーナリストがいま伝えたい、パレスチナとイスラエルの”現在”とは――。
感想
『ノー・アザー・ランド』でも描かれたマサーフェル・ヤッタ。
そこで続いているのは、ユダヤ人入植者によるパレスチナ人住居の
破壊や暴力、そしてイスラエル軍による強制的な排除だ。
今回のドキュメンタリーでも、
住居や学校が、根拠の薄い行政判断で破壊される、
パレスチナ人のコンクリートローラーをイスラエル軍が接収し、
再興を妨害するなど、非人道的な行為が映し出される。
報道では断片的にしか見えない暴力の構造が、
イスラエル軍にとって「抵抗のない行為」として
淡々と映し出されることに、強い衝撃を受ける。
本作で描かれるのは、イスラエル国内メディアの状況だ。
取材で語られるのは、自主的な情報統制があり、
「壁の内側」で何が起きているかが市民に伝わらないという状況。
「アラブ人のニュースは誰も読まないから」という言葉は
イスラエルに住むユダヤ人のマインドを示している。
本作では、まだイスラエルにある希望をすくい取ろうとしている。
● イスラエルで兵役を拒否する若者たち
彼らは、自国が加害者になることに耐えられず、
投獄のリスクを承知で拒否の意思を示す。
その姿は、単にヒロイックなものではなく、
迷いと葛藤を抱えながらも「自分の中にある倫理」を
守ろうとする人間の姿だ。
● アメリカ人ボランティア
国外から現地に入り、パレスチナ側の生活再建を手伝うボランティア。
彼自身もユダヤ人ということだったが、起こっていることを理解して
自らイスラエルでパレスチナ人を支援する姿はとても
前向きな姿として捉えた。
彼らの存在が、暴力のただ中にも微かな希望を見せてくれる。
最後に
前回ノー・アザー・ランドを見た後に少しだけ
この問題の解像度が上がった。
本作の監督が出演しているPodcastで別の視点を聞くことができる。
解決の難しい問題ではあるからこそ、より関心を持っていきたい。
ottoではまだゲスト回もあるのでご都合が合う方はぜひ。
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