【エッセイ】四騎獅子狩文錦(しきししかりもんきん)
【エッセイ】四騎獅子狩文錦(しきししかりもんきん)
昔、国語の授業でよんだ、
四騎獅子狩文錦が忘れられない。
一枚の布が、人類を語っていた。
「国宝」と聞くと、古くて立派なもの。
そんなイメージしか持っていなかった。
ところが、
その授業で出会った一枚の布は違った。
その名は、
四騎獅子狩文錦(しきししかりもんきん)。
最初は難しい名前だな、
くらいにしか思わなかった。
でも調べれば調べるほど、
この布は織物ではなく、人類そのものだった。
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一枚の円の中に、四人の騎士がいる。
翼の生えた馬に乗り、
振り返りながら獅子へ弓を放とうとしている。
真ん中には一本の木。
左右対称。
美しい。
だけど、僕が驚いたのはそこじゃない。
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この布には、
日本人だけが作れる模様は存在しない。
獅子を狩る王の姿はペルシア。
文様はシルクロードを旅し、
中国で織られ、
千年以上前に日本へ渡ってきた。
つまり、
一枚の布の中に、
何千キロもの旅が織り込まれている。
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面白いのは、
シルクロードは「物」を運んだ道ではないということだ。
運ばれたのは、
価値観。
美しさ。
権力の象徴。
神話。
デザイン。
そして、
「かっこいい」という感覚。
僕たちは昔から、
文化を輸入してきた。
だけど、そのまま真似はしない。
日本人は必ず、
日本人らしく料理してしまう。
だから、この布はペルシアでもなく、
中国でもなく、日本でもない。
全部だった。
⸻
文化って、不思議だ。
国境は越えられる。
言葉も越えられる。
宗教も越えられる。
何千年も越えられる。
でも、
人は案外、それに気づかない。
⸻
僕は、この布を見て思った。
人類は昔から争う以上に、
真似をしてきた。
学んできた。
憧れてきた。
受け継いできた。
そうやって世界は少しずつ豊かになってきたんだろう。
⸻
だから僕は、
四騎獅子狩文錦を、
「国宝」とは呼びたくない。
もちろん国宝なんだけど、
それだけでは小さすぎる。
これは、
人類が千年以上かけて共同制作した、
一枚の作品なんだと思う。
布なのに、
そこには人間の歴史が織り込まれていた。
それが、たまらなく格好いい。
⸻
そして、このまま大事にしまっておくなんてもったいない。
国宝だからといって、
ガラスケースの向こう側で眺めるだけでは寂しい。
千年以上、人から人へ渡り、
国から国へ渡ってきた文様だ。
だったら、今度は僕が受け継ぎたい。
しかも、毎日使える形で。
ネクタイ?
違う。
Tシャツ?
ありきたりだ。
どうせなら、一番身近なところで身につけたい。
ならば、パンツしかないだろう!





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