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One Star


One Star


最初は、真っ暗。

光はない。

音もない。

二万人の観客がいるはずなのに、
その気配さえ闇に溶けている。

スフィアの巨大な空間は、
果てのない黒い宇宙のようだった。

誰かが咳払いをする。

その音だけが、
異様に遠くまで響く。

そして――

ひとつの光。

それはスポットライトですらない。

月明かりの欠片のような、
かすかな白い光。

その中心に、

少女が立っている。

白いワンピース。

裸足。

両手は力なく下ろされている。

顔は伏せられ、
表情は見えない。

まるで、

世界に一人だけ残された人間のように。

観客は息を呑む。

少女は動かない。

風もない。

音楽もない。

ただ沈黙だけが広がる。

やがて。

少女の足元から、

ぽつり。

小さな水滴が落ちる音がした。

誰も水など見ていない。

それでも確かに聞こえた。

ぽちゃん。

そしてもう一度。

ぽちゃん。

少女の足元に、
見えないはずの水面があるかのように。

静かな波紋が広がる。

最初は数センチ。

次に数メートル。

そして、

観客席の足元へ。

さらに遠くへ。

さらに遠くへ。

波紋は止まらない。

スフィア全体を包み込むように、
闇の中を静かに広がっていく。

その瞬間。

観客は気づく。

今まで床だと思っていたものが、

深い海の水面だったことに。🌊









おまけ




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