なんにもしない日の、贅沢。
ゴールデンウィークのあいだ、 ずっと仕事をしていたからだろうか。
ぽっかりと空いた平日の休みが、 やけに広く感じる。
今日は、なにもしないと決めた。
予定も立てず、 意味も持たせず、 ただ、ぼーっとするためだけの一日。
…といいつつ、 ちゃんとコーヒーは淹れてきているあたり、 自分でもちょっと抜け目がないと思う。
広い芝生に腰を下ろすと、 遠くで子どもたちの声がして、 それに重なるように、囀る鳥たち。

なにもないがぜんぶある
風はやわらかくて木々のあいだを通るたび、 「まあまあ、そんなに急がなくていいよ」 とでも言っているみたいだ。
家で淹れてきたコーヒーをひとくち。
すこしだけ冷めはじめているのに、 その温度が、ちょうどいい。
たぶん今の自分も、それくらいの温度なんだと思う。
熱すぎず、冷たすぎず、ただ、ここにいるだけでいい温度。
気づけば、何分も何も考えていなかった。
…いや、正確には、
「このまま昼寝してもいいかな」とか、
「いやでも靴脱ぐのめんどくさいな」とか、 どうでもいいことだけは考えていた気もする。
芝生のにおいとか、 光のゆらぎとか、
コーヒーの余韻とか。
そういうのを全部まとめて、
「なんかいいなあ」って思っているだけ。
それで十分な日がある。
コンビニで買ったゴハンも、 ちょっとだけ特別に見えるし、 ペットボトルの水でさえ、 やけにおいしい気がする。
不思議なもので、外で食べると、だいたい全部おいしい。 たぶん空気がいい仕事してる。
「なにもしない」って、 けっこう忙しい。
感じることに、ちゃんと時間を使うから。
そんなことを思いながら、 またひとくちコーヒーを飲む。
ああ、いいなあ。
今日はこれでいいや。
いや、これがいいや。
なにもしないを、
全力でやりきった日のこと。


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