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【Re:02】清酒の定義と呼称について②

【01】清酒?日本酒?【02】清酒の定義 の内容を再構築し、新たな情報も追記して【Re:02】としたものです。取り扱う項目は基本的には同じですが、追記等の都合で話題の順序も変わっています。

【Re:01】ではことばの由来や意味するところを中心に話を展開しましたが、【Re:02】では清酒の定義における製造法上の話をしていきます。


「酒類」の定義

日本のお酒を規定する法律が「酒税法」ですが、その中で「酒類」の定義がまず以下の通りです。

第二条 この法律において「酒類」とは、アルコール分一度以上の飲料(薄めてアルコール分一度以上の飲料とすることができるもの(アルコール分が九十度以上のアルコールのうち、第七条第一項の規定による酒類の製造免許を受けた者が酒類の原料として当該製造免許を受けた製造場において製造するもの以外のものを除く。)又は溶解してアルコール分一度以上の飲料とすることができる粉末状のものを含む。)をいう。

酒税法 第二条 (e-Gov法令検索より)

「アルコール分一度以上」が酒類の要件なので、一度未満であれば酒類としては扱われません。
「ノンアルコールビール」が出始めた当時は微量のアルコール分が含まれていましたし、現在ではアサヒビールをはじめとして各社「微アル」というジャンルのアルコール分0.5%の商品なども市場に出ていますが、品目としては「飲料」扱いです。
ただし、酒類としては扱いませんが、体内におけるアルコール濃度が規定値を超えれば飲酒運転になりますのでご注意ください。また「酒類の広告・宣伝及び酒類容器の表示に関する自主基準」により、20歳未満が飲用しないよう、酒類同等に製品表示等を取り扱うこととされています。

粉末状のもの

それよりも気になるところは「溶解してアルコール分一度以上の飲料とすることができる粉末状のもの」でしょうか。私も最初この条文見たときに何それ? と思いましたが、世の中には「粉末酒」なるモノがあるのです。
1966年(昭和41年)に発明され、1981年(昭和56年)の酒税法改正で新たに酒類に加えられたとのことです。以下はその製造メーカーです。

粉末清酒の製造方法について、酒類総合研究所の「お酒のはなし 7」に以下のように記載されていました。
キットカットの日本酒フレーバーにも粉末酒が用いられており、原材料に「粉末酒(清酒、デキストリン)」という記載がありました。

 製造方法としては、目的とするアルコール飲料にマルトデキストリンというでんぷん質の粉末を加えて溶解します。その混合液をスプレードライという装置で噴霧すると熱風により水分だけが瞬時に蒸発してお酒の粉末が出来上がります。
 水分が蒸発するのになぜアルコール分が蒸発しないのか不思議に思われるかも知れません。ここにデキストリンを添加する理由があります。水分はデキストリン層を通過して液滴の表面に移動し蒸発しますが、アルコール分はデキストリン層を通過できず中に閉じ込められるため、粉末酒が出来上がるのです。

独立行政法人酒類総合研究所 「お酒のはなし【特集:みりん,雑酒,粉末酒・合成清酒】(7号)」  より

「清酒」の定義

次に「清酒」の定義は以下の通りです。

七 清酒 次に掲げる酒類でアルコール分が二十二度未満のものをいう。
  米、米こうじ及び水を原料として発酵させて、こしたもの
  米、米こうじ、水及び清酒かすその他政令で定める物品を原料として発酵させて、こしたもの(その原料中当該政令で定める物品の重量の合計が米(こうじ米を含む。)の重量の百分の五十を超えないものに限る。)
  清酒に清酒かすを加えて、こしたもの

酒税法 第三条第七号(e-Gov法令検索より)

ロはまた別の法令を見ないとわからないのが難点ですが、その内容は以下の通りです。

(清酒の原料)
第二条 法第三条第七号ロに規定する清酒の原料として政令で定める物品は、アルコール(同条第九号の規定(アルコール分に関する規定を除く。)に該当する酒類(水以外の物品を加えたものを除く。)でアルコール分が三十六度以上四十五度以下のものを含む。以下同じ。)、焼酎(連続式蒸留焼酎又は単式蒸留焼酎をいい、水以外の物品を加えたものを除く。以下同じ。)、ぶどう糖その他財務省令で定める糖類、有機酸、アミノ酸塩又は清酒とする。

酒税法施行令 第一章第二条(e-Gov法令検索より)

注釈がいちいち長いので抜き出すと、「醸造用アルコール、焼酎、ぶどう糖その他財務省令で定める糖類、有機酸、アミノ酸塩または清酒」となり、「その他財務省令で定める糖類」という文字があるので、それを拾いに行くと以下の通りです。

(清酒の原料となる糖類)
第一条の二
酒税法施行令(昭和三十七年政令第九十七号。以下「令」という。)第二条に規定する財務省令で定める糖類は、ぶどう糖以外の糖類ででん粉質物を分解したものとする。

酒税法施行規則 第一条の二(e-Gov法令検索より)

そして有機酸やアミノ酸についてはさらに別の場所に記載があります。

5 酒類の原料物品等の定義
 法、令及び規則に規定する「ぶどう糖」、「水あめ」、「有機酸」、「有機酸の塩類」、「アミノ酸」、「アミノ酸の塩類」、「糖類」、
(中略)
とは、それぞれ次に定めるところによる。
 なお、これらの物品が化学的合成品である場合には、その使用に当たって食品衛生法の適用を受けることに留意する。
(1) 「ぶどう糖」とは、例えば、結晶ぶどう糖、精製ぶどう糖のようにでん粉質物を高度に加水分解し、かつ、十分に精製したものをいう。
 なお、ぶどう糖とデキストリン等が共存するものについては、固形分中の純粋なぶどう糖の含有率が100分の50を超える場合はぶどう糖として取り扱う。
(2) 「水あめ」とは、加水分解の程度が低いでん粉質物分解物のうち精製程度が高く、不純物の含有量が少ないものをいう。
(3) 「有機酸」とは、例えば、乳酸、こはく酸、酒石酸、くえん酸をいう。
(4) 「有機酸の塩類」とは、例えば、こはく酸ナトリウムのように有機酸がナトリウム、カリウム等と結合したものをいう。
(5) 「アミノ酸」とは、例えば、グルタミン酸、グリシン、L-イソロイシン又はそれらのものの混合物をいう。
(6) 「アミノ酸の塩類」とは、アミノ酸がナトリウム等と結合したものをいう。
(注) アミノ酸の一つであるグルタミン酸は、ナトリウムと結合したグルタミン酸ナトリウムの形で純粋な結晶として市販されている。
(7) 「糖類」とは、例えば、ぶどう糖、果糖、しょ糖、麦芽糖のように比較的低分子で水に溶け一般に甘味を有する炭水化物又はこれらのものの混合物をいう。
(注) 「比較的低分子」とは三糖類以下のものをいう。

酒税法及び酒類行政関係法令等解釈通達 第2編 第3条 (共通事項) 第5号 (国税庁WEBサイト)より

「例えば」とありますが、基本的に記載されているもの以外は認められにくいと考えられますし、この規定外の物質を原料として加えた場合には、清酒として取り扱われないケースがあります(後述の「その他の醸造酒との違い」のところで説明します)。

そして「酒類の原料として取り扱わない物品」についても規定がありますが、一旦ここまで。

清酒の原料

基本的な原料としては、

・米こうじ(麴)
・水
の3点で、他は政令等で使用を認められた物品を添加しても良い、ということになります。よく用いられているのは、醸造アルコール、糖類(ブドウ糖や水飴)、酸味料(有機酸、アミノ酸など)でしょうか。これらの添加の是非についてもいったん飛ばします。

「こしたもの」

それと「こしたもの」がポイントです。
先に示した原料を加えてもろみとし、発酵させたものを「こす」工程が必要です。
たいていは酒袋と呼ばれる布や自動圧搾機などで固液分離するのですが、「こす」方法について、目の大きさや材質には具体的な定めはありません。

11 「こす」の意義
酒類の製造方法の一つである「こす」とは、その方法のいかんを問わず酒類のもろみを液状部分とかす部分とに分離する全ての行為をいう。

酒税法及び酒類行政関係法令等解釈通達 第2編 第3条 (共通事項) 第11号 (国税庁WEBサイト)より

上記のとおり、何らかの方法で醪の固体と液体を分けられれば良いということで、遠心分離機(※)を用いた方法も今は認められています。
2014年の下記報文で仕組みが解説された「吟醸もろみ上槽システム」は、報文掲載時の時点で何社か導入されているとあり、獺祭などで商品化されたのは記憶にありますが、現在どれくらい使われて商品化されているのか数えたことはありません。
Google検索で出てきたのは「獺祭(獺祭)」、「北雪(北雪酒造)」、「開華(第一酒造)」、「赤城山(近藤酒造)」「山聚楽(佐々木酒造)」といったところでした。
品質上は良いものがとれるものの、作業効率が良くないのが課題のようですね。

※遠心分離機の原理については、長いですがわかりやすいこちらの製造メーカーの説明をご覧ください。
遠心分離機とは?遠心分離機の仕組み・動き方・用途を初心者向けに徹底解説 (株式会社松本機械製作所WEBサイト)

なお、醪を「こす」ことなく、そのまま詰めて出すのが「どぶろく(濁酒)」で、これは酒類としては基本的に「その他の醸造酒」の扱いです(製法等により他の酒類に分類されているものもあります)。

で、この話題になると必ず「にごり酒」と「どぶろく(濁酒)」の違いが問われるのですが、にごり酒は何かしらで「こした」(先述の通り、目の大きさや材質の規定はありません)清酒ですので、固液分離のための操作と認められる工程を経ている必要があります。笊とか網とかいろいろ聞きますけど、米粒くらいは取り除ければよさそうな感じです、たぶん。

アルコール分

もう一つ、2006年の酒税法改正で追加された要件が「アルコール分が二十二度未満のもの」です。
それまでは清酒においてアルコール分の上限は定められておらず、「高アルコール清酒」というジャンル(概ねアルコール分25度以上のもの)もありましたが、醸造アルコール等の添加量の上限を引き下げるとともに(後述します)、アルコール分22度未満という上限が付加されました。

何で「22度」なのか調べてみたところ、2006年の酒税法改正の変更点がまとめられた、当時の日本醸造協会誌の報文中に以下の記載がありました。

(3)酒類の定義の見直しにより次のとおり改められた。
 ①アルコール分が22度未満のものに限定する。
 清酒を醸造酒類として位置付けることとも関連し、原料である米の発酵により得られるアルコール度数の上限が現在21度台であることから、この限度いっぱいまでを清酒の定義として取り込むこととされたものである。
(後略)

酒税法改正について」(蓮尾徹夫, 日本醸造協会誌, 101, (7), 470-486(2006))より

清酒酵母は培地上では22度以上のアルコール分を生成できるものもいますけれども、清酒醪中ではそこまでアルコール分が高くなる前に死滅を始めて活動が弱まります。
なので22度を超えることは想定していなかったと思うのですが、「玉川たまがわ」(京都府・木下酒造)が、2019酒造年度に蔵付き酵母で醸した純米酒醪がアルコール分22度を超えてしまったので「雑酒②」として発売した、ということがありました(その後も何度か「範囲外」の酒が同蔵では造られています)。
玉川の中でも、酵母の発酵に任せ、毎年コンスタントに20度はオーバーするという仕込みの清酒ですが、使用している(?)のは蔵付き酵母で醪日数40日超、今のきょうかい7号系統とは一線を画した酵母だそうです。

【自然仕込】
木下酒造の「自然仕込」は純粋培養酵母を添加せず、土壁蔵に棲みついている酵母の力で醸す昔ながらの製法。この蔵付き酵母は、一般的な酒造りで使用される清酒酵母と異なる驚くべき特徴があります。それはアルコール耐性の高さです。清酒酵母はアルコール18%を超えると弱って死滅するというのが醸造学の一般論。しかし、玉川酵母は元気よく発酵を続けます。
【白ラベル】
蔵付き酵母の発酵力の限界に挑む企画が「白ラベル」という限定品です。その年の米と、そのとき蔵に棲んでいる酵母の特徴の組合せにより、結果はさまざま。日本酒度は+10~+22の辛口。 アルコールは発酵の常識を超えた21%台があたりまえで、22%を超えることも数回ありました。
【雑酒】
酒税法による日本酒の定義は「21.9%まで」。22%を超えると「清酒」ではなく「雑酒」というカテゴリーに分類されます。 温暖化の影響でアルコール生成の伸びが悪くなっている中、2025酒造年度でも昨年度に引き続き、22%を超えて「日本酒」の枠を飛び出しました。一般的な発酵期間の約2倍をかけた酒は、申し分ない迫力の個性豊かな味わいに仕上がっています。

木下酒造WEBサイト 「玉川 自然仕込 雑酒(山廃)白ラベル 無濾過生原酒」より

アルコールを添加しない場合でこの有様なので、さらに後述する規定内の醸造アルコールを添加したら当然22度は容易に超え得るのですが、そこはどう解釈したら良いのか?となります。

使用できる物品量の制限

醸造アルコール等の添加量についても、2006年の改正時に上限の引き下げが行われています。
法第三条第七号ロに規定されている、「その原料中当該政令で定める物品の重量の合計が米(こうじ米を含む。)の重量の百分の五十を超えないものに限る。」との記載がそうですが、端的に示すと水を除いた重量の値が「(米+米こうじ)÷2 > その他の物品」でないとダメです、ということです。米の総重量が1000kgなら、その他の物品は500kg未満でなければなりません。

戦中戦後の米不足により、醸造アルコールの添加、そして酸味料や糖類を添加する「増醸法」が行われるようになったのですが、米不足が解消された後においても、コスト抑制の観点から製造が継続されていた増醸酒(純米酒に比べて3倍量の酒になることから「三倍増醸酒」と言われていました)について、酒税法改正に伴い新たに「醸造酒類」に分類される清酒がそれは如何なものかと、添加できる物品の上限が厳しくなりました(それでも2倍量程度にはなるのですが)。

この判定基準の判断においては全て「重量」で算出しますが、糖類は含まれる水の重量分を除く必要があります。

6 糖類の重量計算
(1)
 令第2条《清酒の原料》に規定する「ぶどう糖その他財務省令で定める糖類」の重量には、当該糖類に含有される水分の重量を含めないことに取り扱う。ただし、当該糖類に含有される水分の重量を測定することが困難な場合には、当該水分の重量を含めて計算することとして差し支えない。

酒税法及び酒類行政関係法令等解釈通達 第2編 第3条 (共通事項) 第6号 (国税庁WEBサイト)より

例えば75%水飴を100kgを使用したとしたら、25%は水として取り扱うため、糖類の使用量としては75kgとなります。

糖類以外で、例えば濃度90%の醸造用乳酸の場合、これは10%を水として扱ってよいのか(重量計算時に除外しても良いのか)が調べてもわかりませんでした。使用時に希釈する場合にはその希釈水は水に含めて差し支えない(希釈前の重量が適用される)のですが……。

醸造アルコールについては計算(換算)にも決まりがありまして、95%(v/v)に換算してからその比重を掛けて求める、となっています。詳細は特定名称酒の話の際に触れようと思いますが、以下の通りです。

9 アルコールの重量の計算
アルコールを酒類の原料とする場合における当該アルコールの重量の計算は次による。
 当該アルコールの数量(リットル)×当該アルコールのアルコール分(度)÷100=純アルコール数量(リットル)
 純アルコール数量(リットル)÷0.95=アルコール分95度換算数量(リットル)
 アルコール分95度換算数量(リットル)×95度アルコール1リットル当たりの重量(0.8157キログラム)=原料用アルコールの重量(キログラム)

酒税法及び酒類行政関係法令等解釈通達 第2編 第3条 (共通事項) 第9号 (国税庁WEBサイト)より

また、上記制限は仕込ごとの制限ですが、その製造場が1年間に使用できる醸造アルコール量についても決まりがあります。

2 法第3条第7号ロに規定する清酒を製造する場合の承認の取扱い
(1) 清酒の製造方法の承認基準について
 法第50条第1項第1号《承認を受ける義務》に規定する法第3条第7号ロ《清酒の定義》に規定する清酒を製造しようとする場合の承認は、次による。
イ アルコール使用限度数量
 製造場ごとの原料用アルコールの使用数量は、その製造場が毎酒造年度に製造する清酒の原料として使用する白米1,000キログラムにつき280リットル(アルコール分100度に換算したもの。)を乗じて得た数量(この数量に1位未満の端数がある場合には、その端数を切り上げて1位にとどめる。以下この数量を「アルコール使用限度数量」という。)の範囲内とする。

酒税法及び酒類行政関係法令等解釈通達 第50条 承認を受ける義務 (国税庁WEBサイト)より

この基準は2006年の酒税法改正以前より定められており、普通酒や増醸酒が売れるからといってアルコール添加量の多い酒ばかり造ると、上記の制限に抵触します。
1937年から1974年まで、1蔵あたりの清酒生産量の制限が課されていたものの、その規制解除後も未納税移出入(桶売り/桶買い)が続いていたのは、この総アルコール使用量制限の側面もあったのではと推測しますが、その論説は見つからなかったので根拠はありません。
あとさらりと「承認を受ける義務」とありますが、醸造アルコールなどの「政令で定める物品」を使用した清酒を製造する場合は、事前に税務署へ届出して承認を受ける必要があります。毎年。

酒類の原料として取り扱わない物品

なお、「酒類の原料として取り扱わない物品」については、「原料」ではないことになるので総重量割合の上記規定に当てはまりません。そもそも使用量が少ないから原料扱いしないことになっているのですが。
清酒で適用可能な物品について抜粋すると以下の通りです。

7 酒類の原料として取り扱わない物品
 次に掲げる物品は、酒類の原料として取り扱わない。
なお、その使用について食品衛生法の適用を受けることに留意する。
(1) 健全な酒母の育成を図るための手段として、酒母に加える培養酵母又は酵母に付随している必要最少量の培養液
(2) 発酵を助成促進し又は製造上の不測の危険を防止する等専ら製造の健全を期する目的で、仕込水又は製造工程中に加える必要最小限の次の物品
 イ 酸類(乳酸(乳酸菌を含む。)、りん酸、りんご酸、無水亜硫酸、酒石酸)
 ロ 塩類(食塩、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸二水素カルシウム、リン酸二水素アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、メタ重亜硫酸カリウム、亜硫酸水素カリウム液、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、硝酸カリウム、硫酸アンモニウム)
 ハ ビタミン類(チアミン塩酸塩)
 ニ 除酸剤(炭酸カルシウム、アンモニア)
(注) 炭酸カルシウムの成分規格の一つである炭酸カルシウムⅡについては、ぶどうを主原料とした果実酒及び甘味果実酒にのみ使用できることに留意する。
 ホ 発酵助成剤(不活性酵母、酵母エキス(酵母自己消化物を含む。)、酵母細胞壁、リン酸二水素アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム、硫酸マグネシウム、硫酸亜鉛、チアミン塩酸塩、葉酸、パントテン酸カルシウム、ナイアシン、ビオチン又はこれらで組成されるもの)
 へ タンニン(抽出物)、ポリビニルポリピロリドン
 ト 酸素、炭酸ガス(二酸化炭素)、アルゴン
(中略)
(3) 酒造の合理化等の目的で醸造工程中に加える次の酵素剤
 イ 清酒、合成清酒及びみりんの製造の際に米こうじと併用する原料(清酒については米、合成清酒については令第3条第1項第1号《合成清酒の原料等》に掲げる物品、みりんについては米及びとうもろこしに限る。)の重量の1,000分の1以下に相当する酵素剤
(中略)
(5) 変調を来したもろみ等の救済のために使用する規則第13条第8項《みなし製造の規定の適用除外等》に掲げる物品
(中略)
(7) 蒸し米の粘結化を防ぎ、酒造操作を容易にする目的で原料米処理工程中に使用するグリセリン脂肪酸エステル
(8) 泡を消す目的でもろみ等に使用する必要最少量のシリコーン樹脂

酒税法及び酒類行政関係法令等解釈通達 第2編 第3条 (共通事項) 第7号 (国税庁WEBサイト)より

ただし米麴の酵素を補填するのに用いられる酵素剤については、あくまで「米麴と併用」するもので、上記引用の(3)イにあるように、清酒の場合は米の重量の1/1000以下と定められています。総米1,000kgの仕込なら1kgまでです。製麴のコストカットのために米麴を少なくして酵素剤ドバー……というのは認められていません。とはいうものの、麴米ではなく総米の重量の1/1000以下だと結構な量ですけどね。

醸造用乳酸は速醸系酒母に使用する分は原料として取り扱われませんが、酸味料として醪へ添加する分は食品添加物となり原料に含まれる(したがって酸味料として用いた乳酸の量はその他の原料と合わせて総米重量の50/100未満の適用を受ける)とか、発泡性を持たせるための炭酸付与に用いた炭酸ガスは食品添加物として取り扱われて原料表示が必要だとか、同じ物質でも用途により取り扱いが異なります。

近年、それらの物質についても添加しません、という主義主張をされる製造者も増えており、代表的なのが「新政あらまさ」「仙禽せんきん」などです。それの是非については各蔵の考え方ですし、消費者がそれをどう受け止めるかに委ねられるものだと考えますので、どっちがどうとか言うつもりはないです。
が、メディアや一部商品宣伝(製造者ではなく委託業者によるものが多い)に見られる、「無添加」の価値をアゲるために他方をサゲる手法については、それはダメだろうというのが個人的見解です。

ラベル記載義務のない添加物も用いることはありません。
------ 酒税法上、あらゆる酒類において、安全醸造のため用いられる添加物についてはラベル記載義務を免れています。代表的なものは、速醸酒母や補酸に用いられる「醸造用酸類」、あるいは「除酸剤」、麹の代替として使われる「酵素剤」、発酵助剤である「無機塩類」・「ビタミン類」などです。当蔵では、醸造における純粋性を尊ぶために、これらの添加物を酒に使用いたしません。

新政酒造WEBサイト 「Policy」 より

清酒かす

清酒の定義を定めた酒税法第七条ロおよびハに「清酒かす」の文字があるのですが、これはあまりなじみがない事項なので解説しておきます。

まずロの場合の、原料として清酒かすを加えて発酵させたものですが、「粕四段」と言って、吟醸酒の酒粕を普通酒に入れて香味の調整を図っていたものが該当するようです。

(5)その他の四段
イ かす四段
精米歩合70%以下、かす歩合30%以上の新鮮なかすを白米1,000kg当り200kg内外添加する。吟醸かすの再利用という点で、吟醸仕込のあとに増醸酒仕込を計画して増醸もろみに添加すると、風味をつけることと、おりが少なくなる利点があり、ぜひ行なう必要がある。

日本釀造協會雜誌 1966年第61巻1号 「四段掛あれこれ」より

上記の内容は書籍版の「灘の酒用語集」にも確認できました(WEB版では割愛されていますので、西野金陵のWEBサイトより引用しています)。

粕四段
醪の添・仲・留の仕込が終わった後に、醪中に清酒粕を投入する仕込方法をいう。粕四段は、吟醸粕の有効利用、異臭(ジアセチル臭)の除去、その他香味の調整などの目的で行われる

西野金陵株式会社webサイト「酒用語集【か】」より

普通酒や増醸酒に用いられていた古い手法のようで、この場合原材料表記として「清酒かす」が記載されるため、特定名称酒では要件に該当しなくなります。

そしてハに規定される「清酒に清酒かすを加えて~」については、以下の役割があることが書籍より発見できました。先の引用にもジアセチル臭の除去とあるように、酵母による精製酒中のジアセチルの低減のために認められています。

3) 清酒に清酒かすを加えて漉したもの。これは、万が一の救済策として、規定されているようです。つまり、上槽(ふねで搾ること)時期などを間違えて、ヂアセチル臭などが感じられる場合に、新鮮な酒粕(生きている酵母が含まれていることが条件)を加えて、2~3日置くと、ヂアセチルを酵母が分解して香りを改善してくれる効果が期待されます。したがって、このような処置をして酒質を復元することを救済策として認めているのです。

なぜ灘の酒は『男酒』、伏見の酒は『女酒』といわれるのか」(石川雄章, 実業之日本社, 2011)より

現在は上槽前のピルビン酸測定などで適切な上槽時期の判定ができるようにもなりましたので、このような救済措置の出番が減ったものと考えられます。なお、この場合は清酒が一度完成していることに加えて、「こす」ことで除かれますから、原材料表記に「清酒かす」の記載が必要なのかどうか?
実際に使用されたケースを見たことが無いので現時点では不明です。

その他の醸造酒との違い

【Re:01】で「クラフトサケ」について述べましたが、製造法上では主に「その他の醸造酒」に分類されます(稀に雑酒などもあります)。
「その他の醸造酒」は2006年の酒税法改正時に新設(「その他の雑酒」から細分化)された酒類品目で、【07】清酒の製法的分類でも述べていますが、清酒との違いについてまとめておきます。
まず「その他の醸造酒」の定義は以下の通りです。

十九 その他の醸造酒
 穀類、糖類その他の物品を原料として発酵させた酒類(第七号から前号までに掲げる酒類その他政令で定めるものを除く。)でアルコール分が二十度未満のもの(エキス分が二度以上のものに限る。)をいう。

酒税法 第三条第十九号(e-Gov法令検索より)

「第七号から前号(第十八号)までに掲げる酒類」とは、酒税法第三条第七号から順に定義される酒類で、品目のみ取り上げると以下の通りです。

七:清酒、八:合成清酒、九:連続式蒸留焼酎、十:単式蒸留焼酎、
十一:みりん、十二:ビール、十三:果実酒、十四:甘味果実酒、
十五:ウイスキー、十六:ブランデー、十七:原料用アルコール、十八:発泡酒

酒類としての分類は第七号から順に定義されていくので、ここまででこれらの酒類に属さない酒類であることが前提となります(第二十二号の粉末酒までのどこにも分類されない酒類が「雑酒」になります)。なおホップを原料に使用し、発泡性がある場合には第十八号の規定が優先され「発泡酒」になるケースがあるとのことです。

次に「その他政令で定めるもの」とは

(その他の醸造酒の範囲)
第八条 法第三条第十九号に規定する政令で定める酒類は、次に掲げるものとする。
 アルコール以外の酒類を原料の一部としたもの
 アルコールを原料の一部としたもので、アルコール分が十五度以上のもの又はその原料中アルコールの重量が水以外の原料の重量の百分の三十以上のもの

酒税法施行令 第八条(e-Gov法令検索より)

これらを「除く」ので、醸造アルコール以外の酒類の使用は不可、醸造アルコールを用いた場合もアルコール分と使用量に制限が掛かっています。これらの制限を超えたものについてはリキュールまたは雑酒に分類されるのではないでしょうか。

では近年「クラフトサケ(協会の定義による)」で注目され、そのジャンルが拡がっている「その他の醸造酒」にはどのようなものがあるのか、簡単に説明していきます。

「こす」工程のないもの

清酒と濁酒の違いは「こす」工程の有無です。清酒と同様に米と米麴と水で醸した醪でも、こさなければ清酒の定義から外れます(原料やアルコール分の規定によっては「その他の醸造酒」ではなく「雑酒」になる場合もあります)。
「その他の醸造酒」に属するもののうち、「米、米こうじ及び水を原料として発酵させたもので、こさないもの」については、例外表示として「濁酒」の表記も認められます。

4 前三項の規定による酒類の品目の表示は、当該品目の名称以外に一般に慣熟した呼称があるものとして財務省令で定める酒類については、当該酒類の品目の名称に代えて財務省令で定める呼称によることができるものとする。

酒税の保全及び酒類業組合等に関する法律施行令 第八条の三(e-Gov法令検索より)

(品目の例外表示)
第十一条の五 令第八条の三第四項に規定する財務省令で定める酒類は、次の表の上欄に掲げる品目の酒類とし、同項に規定する財務省令で定める呼称は、当該酒類のうち、同表の当該中欄に掲げるものにつき、同表の当該下欄に定める呼称とする。
(中略)
上欄:その他の醸造酒
中欄:米、米こうじ及び水を原料として発酵させたもので、こさないもの
下欄:濁酒

酒税の保全及び酒類業組合等に関する法律施行規則 第十一条の五(e-Gov法令検索より)

米麴のみで醸したもの

清酒の原料は「米、米こうじ、水及び清酒かすその他政令で定める物品」となっていますが、米麴と水のみで仕込んだものは「米を使っていない」という捉え方になり、清酒の定義から外れます
この領域を巡って1%のコメで分かれる「麴歩合99%の清酒」「全麴のその他の醸造酒」は既に世に出ていますが、2026年には福島県の豊国酒造とhaccobaがその2種の醸造酒を共同醸造するプロジェクトを立ち上げています。

豊国酒造合資会社(福島県石川郡古殿町)と株式会社haccoba(福島県南相馬市)は、清酒とクラフトサケの“境界”をテーマにした共同醸造プロジェクトを始動します。
「たかが1%、されど1%」をコンセプトに、わずか1%の違いによって制度上は異なる酒となる二つの酒を醸造します。豊国酒造は清酒免許の範囲内で「99%麹酒」を、haccobaはその他の醸造酒免許の範囲で「100%麹酒」を醸し、清酒とクラフトサケの垣根を越えた新たな対話を福島から生み出します。

PR TIMES 「豊国酒造とhaccoba、清酒とクラフトサケの“境界”をテーマにした共同醸造プロジェクトを始動」より

清酒の原料として認められていないものを添加したもの

背景として、清酒の製造免許の新規発行が認められていない中で、清酒の原材料として認められていない物品を添加することで「その他の醸造酒」とすれば、その製造免許が新規で取得できることから、ここ数年でジャンルとして定着したものです。

こちらは酒税法上は「その他の醸造酒」に分類されるけど、品質上はほぼ清酒、という現行制度への問題提起となった「稲とアガベ」の開発経緯です。

とめ仕込みの段階でアガベシロップを加えるのですが、糖分なので酵母がアルコールに変えてしまい、味にはほとんど影響がないんです。でも、副原料を添加しているため、法律上は『清酒』ではなく『その他の醸造酒』となり、お咎めを受けることはない。ほとんど日本酒と同じなのに日本酒とは呼べない、現行制度に疑問を呈するようなお酒です」

「清酒製造免許の新規発行が認められる未来を目指す」稲とアガベ醸造所・岡住修兵さんインタビュー【SAKEの時代を生きる vol.8】より

「財務省令で定める糖類は、ぶどう糖以外の糖類ででん粉質物を分解したもの」であり、アガベシロップはこの糖類に該当せず清酒の原料として認められないので、このような状況になったわけですが、現在ではこの制限を逆に利用し、清酒では不可能である、さまざまな原料を用いた醸造による多種多様なフレーバーを持つその他の醸造酒が増えています。その自由さとクオリティで、クラフトサケブリュワリー協会会員による「クラフトサケ」が知られるようになりました。

仕込水の一部に果汁のほか、茶や出汁を加えて発酵させる(製成後の混和はリキュールになるので醪の段階で使用する必要があります)ほか、米以外の穀物を用いた「LINNÉ 800ヤオ」なども出てきました。

LINNÉ初の醸造となるブランド800(ヤオ)は、「異を醸す酒」をコンセプトに、複数の植物由来原料を組み合わせた「クロスボタニカル」を醸造の軸としています。名前は八百万の神などの八百(=物事の数の多いこと)に由来。

LINNÉ公式サイトより

法令区分と酒の本質

前段で清酒の原料として認められないもの、として米以外の穀物を挙げましたが、戦後(1953年(昭和28年))に定められた酒税法において、米以外の一部の穀物も清酒の原料として認められていました

(清酒の原料)
第二条 法第三条第三号ロに規定する清酒の政令で定める原料は、左に掲げる物とする。但し、第二号に掲げる物については、米、水及び米こうじとともに清酒の原料とする場合に限る。
一 麦、あわ、とうもろこし、こうりゃん、きび、ひえ若しくはでんぷん粉又はこれらのこうじ
二 前号に掲げる物の外、アルコール、焼ちゆう、ぶどう糖、水あめ、有機酸又はアミノ酸塩

「酒税法施行令(昭和二十八年政令第二十七号)」国立公文書館デジタルアーカイブ より

日本醸造学会誌を見ていても、それらの穀物をどう加工し利用すれば品質の良い清酒ができるか、という研究が残っています。
元は戦後のコメ不足から、発酵に必要な糖類(でんぷん質)の供給を他の穀物からでも確保するための措置のようですが、原料米の供給に問題が無くなり、制度自体が形骸化し造るところが無くなってからもこの法令は変わることなく、正式に除外されたのは制定から50年以上が経過した2006年の酒税法改正時でした。

国税庁WEBサイト 「酒税法等の改正のあらまし(平成18年4月)」より

ではそれらの方法で醸した「旧法清酒」について、現在はどう扱うのが適切なのか?という疑問は当然出てきます。
先の麴99%と100%の2種類の酒類の話でもそうですが、法令上の線引きは確かにあるのだけれども、それぞれの酒の本質的なところで明確な線引きはできないでしょうし、もっと過去へ遡れば「延喜式」にも見られるように麦や粱も用いられていました。LINNÉ 800ヤオの米以外の穀物を利用した酒造りも、それらの延長線上にあると言えるかもしれません。

酒税法における定義は「まずは酒ありきで、それを制度上分類するためにつくられたもの」と元国税局の方から聞いたことがあります。まず酒があって、そこに法律を当てたものなので、米の醸造酒という広い範囲の中でそのときどきの都合で線を引いて区分しているに過ぎないのです。

SAKE Street 「そのお酒は『日本酒』を名乗れるのか?──広がるSAKE、揺らぐ日本酒(前編)」より

【Re:01】でも上記の図を引用していますが、この「SAKE」の中の枠について、日本の法令上ではこう区分しているというだけで、その線引きは日本の国内法が適用されない海外ではさほど大きな意味を持たないのではないでしょうか(地理的表示で保護された「日本酒」は枠組みが定められていますが)。
海外だけでなく、国内の消費者にとっても、酒類の細かい品目分類は概念でしかなく、税金(役所)と免許(製造者)の都合は知ったこっちゃありません。酒税も間接税ですので商品価格の中に内包されていますし、すでに消費者にとってはあまり意味を持たないものになっているとも考えられます。

では何故普段から私がメディアに対して「正しい表記をしろ」というのか。

清酒にせよ日本酒にせよ、それが示す「酒」の造りの歴史そのものに比べると、ことばが普及したのは最近の話で、制度ありきの呼称と言えます。なので辞書にどう書かれようとも、やはり法令上の定義に基づいて正しく使われるべきなのではないか、と私は考えます。

【Re:01】でも上記のように書きましたが、ルールはルールなので従いなさい、と言いつつも、そのルールは絶対だとか、ルールに重要な意味があるとか、そこまでの意図は含めていません。法令も時代で変わりますから。
ただ少なくとも地理的表示や商標といった、保護されることを目的としたものを蔑ろにしてはいけないと考えています。ことばを使っておカネをいただく職業の方がその辺のルールを守れないのはプロじゃないですよ、ということです。

【01】【02】併せて1万字の記事がどうして2.5万字になるのかはさておき、「清酒」「日本酒」「SAKE」にまつわる話題は以上です。
「料理酒」というややこしいジャンルを残していますが、それに関しては【07】で以前に触れていますので、そちらをご覧ください。

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