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耳トレは「長く1回」より「短く何度も」——9年目の読者さんの質問から

10年近く経っても、まだ質問が届く本

2017年に、ヤマハから『1分で聴こえが変わる耳トレ』という本を出しました。

内容としては、トレーニング法と、それに合わせた音源をセットにしたもの。当時はまだCD媒体が主流だったので、CDを付けて、基礎トレーニングから応用トレーニングまでを収録しました。言葉で説明するというより、「響き」そのもので音への注意力を高めていく——そんな本です。

正直、売れるかどうかは分かりませんでした。ところが、驚くほど売れてしまった。ありがたいことに第2弾、第3弾と続き、第5弾まで作らせてもらいました。

そして今も、10年近く経っているのに、読者の方から「本当に効果がある」と編集者さんにメールが届くことがあるそうです。ロングセラーというのは、こういうことなのかもしれません。

先日も、かなり熱心な読者の方から質問をいただきました。9年目にして、です。

「音源って、どう使ったらいいんですか?」

質問はシンプルでした。CDや音源を、実際どういうふうに聴けばいいのか。

考えてみると、僕はそこをきちんと書いてこなかったんですね。コンテンツを作ること自体で精一杯だったところもあります。書いていたのは、せいぜい「イヤホンなら音量を上げすぎず、耳に負担をかけないように」「疲れすぎない範囲でやってください」くらいのこと。

具体的にどう使い分けるか、という部分は、自分の中では当たり前すぎて、あまり意識してこなかったんです。

結論:短く、回数を増やす

お答えしたのは、こういうことでした。

1日1回30分まとめて聴くのではなく、朝・昼・晩と分けて、1回1〜10分程度を2〜3回。

本のタイトルが「1分」ですから、それこそ1分でも3分でもいい。多すぎてもよくないので、多くても4〜5回まで。できれば3回、最低でも2回。ひとつに時間をかけないことが大事です。

これを伝えたら、「早速試してみます」「めちゃくちゃ貴重な話だ」と言っていただきました。

僕にとっては当たり前のことだったのですが、あえて指摘されたことで、こういうところこそ言語化しなくちゃいけないんだな、と気づかされました。

なぜ「短く何度も」なのか——順応の法則

これは心理学的にも、けっこう大事なポイントなんです。

心理学に「順応の法則」、いわゆる慣れの法則というものがあります。同じ刺激、同じ条件、同じ環境の中にずっといると、人はそれに慣れてしまって、刺激をあまり感じなくなる。

音を長時間聴き続けるのも同じです。せっかく耳を使っているのに、途中から慣れてしまって、頑張っている割に効果が出ない、ということが起こる。

簡単に言えば、ファーストインプレッションなんですね。最初のひと聴きがいちばん効く。しっかり刺激として伝わり、脳を動かす。だからこそ、その「最初」を1日のなかに何度もつくったほうがいい、というわけです。

朝と夜、それぞれの意味

音源を使わない「リアルな耳トレ」——外の音に耳を向けましょう、ということも僕はよくお伝えしています。これも同じ理屈です。

朝起きた直後は、脳にまだ負担がかかっていなくて、認知資源がたっぷりある状態。ここで音を聴くと、脳にいちばん大きな刺激が届きやすい。

寝る直前は逆です。交感神経と副交感神経のちょうど狭間にある時間帯。ゆったりと遠くの音を聴くと、意識(アテンション)がぼやけて、弱まっていく。リラックスにつながります。

起きた直後と寝る直前。この2つの時間帯で音を感じるのは、順応の法則からしても非常に理にかなっていると思います。

当たり前のことでも、言語化してメソッドの形にする——つまり「ドゥーイング」にすることで、少しずつ意識が芽生えてくるものです。

余談:僕は朝晩、血圧を測っています

まったく話が逸れますが、僕は朝起きたときと寝る前に血圧を測っています。

これが面白くて、朝と夜では数値がぜんぜん違うんですね。同じ体なのに、時間帯でこれだけ変わる。

定点観測って、やっぱり大事だと思うんです。

同じように、朝起きたときの音の聴こえ方と、寝る前の音の聴こえ方も、きっと変わってくるはずです。それを同じ音源で比べられたら、すごく大きな発見があると思いませんか。

条件をそろえる——「同じ音・同じ音量・同じシステム」

だから僕がおすすめしたいのは、同じ音で、自分の聴こえ方の違いを認識することです。

自分で適当に外の音を聴くのも、もちろんいい。でもそれだけだと、変化がつかめません。ポイントは条件をそろえること。

  • スピーカーで聴く人は、同じスピーカー・だいたい同じ距離

  • イヤホンの人は、ボリュームの数値を記録しておく(15、10、といったふうに。ただし上げすぎは禁物です)

環境を固定しておいて、そのうえで「聴こえ方がどう変わるか」を意識する。これに尽きます。

なぜ条件をそろえるのか。人間って、自分の心理を主観的に捉えすぎてしまうので、客観化がものすごく難しいんですね。外からの刺激を基準にしないと、自分の状態は見えてこない。

もうひとつの余談:波形が見えると安心する

ちなみにこの収録、ボイスメモで撮っています。Stand.fmやVoicyのアプリではなく、iPadに最初から入っている普通のボイスメモ。

これが極めて使いやすい。波形がちゃんと見えるんです。

今しゃべっている波形を見ながら、マイクとの距離を近づけたり遠ざけたり、音量を調整できる。他の音声アプリだと、この波形が見えないものが多いんですよね。物理的に収録している以上、自分の声がどれくらいの音量なのかは本当に大事な情報です。「ちゃんと収まっているな」という安心感がある。

これも結局、同じ話だと思っています。道具や使うものによって、心理は規定されてしまう。だからこそ、自分を客観化するための「外からの指標」がいる。波形はその指標なんですね。

場面を切り替えることの意味

今日は場所を移動しながら喋っていて、途中は郵便局の中でした。なかなか落ち着かなかったですけれど(笑)。

比較のための条件はそろえる。でも、生活のなかでは場面を変えていく。この両方が大事だと思っています。

人って、場面の切り替わりに応じて1日の感覚が変わるし、充実度も変わってくる。だから、同じ時間に同じことを1回だけ、ではなく、日を変えたり時間帯を変えたりして試してみる。

音楽でも同じですよね。僕の曲もそうですが、ずっと聴いていると飽きるし、何だか分からなくなってくる。日を変えて、時間を変えて、同じ曲でも違う曲でもいいので聴いてみると、まったく違って聴こえるはずです。

まとめ

今日お伝えしたかった耳トレのやり方は、シンプルです。

1日に長く聴くのではなく、ちょこっと、何度も聴く。

そして環境を自分でつくること。環境をつくるのは、結局その人が持っている感性です。ただ、感性には調子のいい時・悪い時の波がある。その波にあまり引きずり込まれないように、ある程度中庸で普遍的な感覚を持っておく。そこを意識しながら生活していくことが、とても重要なのかなと思っています。

参考になりましたら幸いです。


小松正史『1分で聞こえが変わる耳トレ!』

▲ Spotify「小松正史」
ピアノ作品・アルバムはこちらで聴けます

▼ Voicy「小松正史チャンネル」
『洛中おこもりラジオ』 ────絶対聞かんでよろし。
https://voicy.jp/channel/1779


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