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【Google最新研究】RAGの弱点を克服する「Agentic RAG」とは? Gemini Enterprise Agent Platformの新アーキテクチャを徹底解説

こんにちは。IT技術の教育やAI活用について発信しているMasaaki(伊藤正章)です。

生成AIを業務で活用していると、次のような経験はないでしょうか?

  • 社内資料を検索させたのに、答えが不完全

  • 関連情報が複数システムに分散していて見つけられない

  • AIが「情報がありません」と返してくる

  • 実際には存在する情報なのに検索できていない

こうした課題は、現在のRAG(Retrieval-Augmented Generation:検索拡張生成)が抱える大きな弱点でもあります。

2026年6月5日、Google Researchはこの問題を解決する新しい仕組みとして、「Agentic RAG(エージェント型RAG)」を発表しました。

Agentic RAG(エージェント型RAG)

今回は、この技術がなぜ重要なのか、従来のRAGとの違い、そして企業のAI活用にどのような影響を与えるのかを分かりやすく解説します。


そもそもRAGとは何か?

現在、多くの企業向けAIはRAGを利用しています。仕組みは非常にシンプルです。

①ユーザーが質問する
②関連文書を検索する
③検索結果をLLMが要約して回答する

例えば、「Project Xで使われているサーバーのスペックを教えて」と質問したとします。

するとRAGは「Project Xの資料を探す」「サーバーIDを見つける」「その情報を回答する」といった処理を行います。

ところが実際のスペックは別のDBに保存されていた場合、AIはそこまで追跡できません。つまり、「検索はできるが調査はできない」のです。

従来RAGの限界

企業データは通常、

  • Google Drive

  • Notion

  • Confluence

  • SharePoint

  • Salesforce

  • 社内DB

などに分散しています。人間なら「この資料にサーバーIDがあるな」「じゃあ別のDBで検索しよう」と考えます。

しかし従来RAGは一回の検索で終了します。そのため、情報不足や誤回答、ハルシネーションが発生しやすくなります。

従来型RAGの処理フロー

Agentic RAGとは?

Googleが提案したAgentic RAGは、AIが自ら調査計画を立てながら検索を繰り返す仕組みです。

一言で言えば、「検索エンジン」から「調査チーム」へ進化したRAGと言えるでしょう。

Agentic RAGの処理フロー

Agentic RAGを会社組織で例える

Googleはこの仕組みを複数エージェントで構成しています。

オーケストレーター:全体責任者

「この質問は複雑だから複数部署に依頼しよう」と判断します。

プランナー:調査計画担当

例えば、「予算とスケジュールを教えて」という質問なら、

  • 財務DB

  • プロジェクト管理DB

を検索する計画を立てます。

クエリリライター:検索専門担当

質問を検索しやすい形に変換します。

例えば、「Project Xどうなってる?」という質問を

  • Project X Status Report

  • Project X Q3 Progress

  • Project X Risk Report

などに変換します。

Search Fanout Agent:情報収集担当

複数のシステムへ同時検索を実施します。

Synthesis Agent:最終レポート作成担当

集めた情報を統合して回答を作ります。

Google最大の新発明

ここで終わりではありません。Googleが特に強調しているのが
Sufficient Context Agent(十分な文脈エージェント)です。

「情報は本当に揃っているか?」を確認するAI

従来RAGは、検索結果が少しでも見つかれば回答を生成します。
しかしGoogleの新方式では、回答前に「この情報だけで本当に答えられるか?」を検査します。まるで品質管理担当者です。

医療現場の例

Googleは次のような例を紹介しています。

医師の質問:退院後の薬、食事制限、アレルギー反応を教えて

通常のRAGは「薬情報」「食事情報」を見つけるかもしれません。しかし、アレルギー情報が見つからなければ、不完全な回答を返してしまいます。

Sufficient Context Agentの動き

このエージェントは

①検索結果を確認:取得した文書を分析
②回答草案を確認:生成途中の回答を分析
③不足情報を特定:「薬情報:あり」「食事制限:あり」「アレルギー情報:なし」と判断します。

そして、「アレルギー情報が不足している」とフィードバックを出します。

AIが再検索を始める

するとシステムは「発疹」「副作用」「adverse event」などの新しい検索クエリを生成。再度データベースを調査します。つまり、AIが自ら調査をやり直すのです。

なぜこれが重要なのか?

従来のAIは「分からない」か「推測する」の二択でした。GoogleのAgentic RAGは、第三の選択肢として「もっと探してみる」を実現しました。これは非常に大きな進化です。

実験結果

GoogleはFramesQAというベンチマークで検証しました。

例題:2024年時点で最も視聴されたテレビ最終回上位2作品のうち、どちらが長時間放送され、その差は何分か?

これを解くには

  1. 上位2作品を調べる

  2. 放送時間を調べる

  3. 差分を計算する

という複数ステップが必要です。

通常RAGでは「放送時間が見つかりませんでした」となりがちです。

しかし、Agentic RAGは「作品名検索」「放送時間検索」「比較計算」を繰り返し行い、正解へ到達しました。

精度実験の結果

FramesQAデータセットにおける、
クロスコーパス検索とシングルコーパス検索およびVanilla RAGとの比較

Googleの評価結果では、複数データソースを横断する環境でも、90.1%の正答率を達成しました。さらに興味深いのは、複数DBを横断しても処理時間は約3%しか増加しなかったことです。

つまり、高精度、高信頼性、実用的な速度を両立しています。

企業のAI活用はどう変わる?

この技術が普及すると、企業内AIは単なる検索ツールではなくなります。

今後は、社内ナレッジ検索、、コールセンター支援、医療記録分析、法務文書調査、金融監査、プロジェクト管理などで活躍するでしょう。

特に「情報が複数システムに散らばっている企業」ほど恩恵が大きくなります。

私たちが学ぶべきこと

今回の発表は、AI業界が「より大きなモデルを作る競争」から「より信頼できる回答を作る競争」へ移行していることを示しています。

今後重要になるのは、モデル性能だけではありません。
どう検索するか、どう検証するか、どう根拠を確認するか、
というAIシステム全体の設計です。Agentic RAGは、その方向性を象徴する技術と言えるでしょう。

まとめ

Google Researchが発表したAgentic RAGは、

✅ 複雑な質問を分解する
✅ 複数データソースを横断する
✅ 情報不足を自ら検知する
✅ 必要なら再検索する
✅ 根拠のある回答を生成する

という次世代RAGアーキテクチャです。AIエージェント時代が本格化する中で、「検索して答えるAI」から「調査して検証するAI」への進化が始まっています。

Gemini Enterprise Agent Platformで公開プレビューが開始されたこの技術は、今後の企業向けAIシステムの標準になるかもしれません。

AIを学ぶ方も、業務で活用する方も、ぜひ注目しておきたい技術です。


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伊藤正章|サバイバルDXクリエイター:荒野のPip-Boy設計局 忍の知恵と技術への「お布施(チップ)」を賜りたく存じます。頂いた財は、持続可能な社会、子供たち、自然、そしてあなたへの還元(有益な発信・開発)に全額投資いたします。画面下のボタンより、影の立役者たる拙者への御調達をお願い申す。一期一会の御縁に、深き感謝を。