シルバーカーと歩行車、何が違うの? 理学療法士が現場で感じること
先日、こんな相談を受けました。
「母にそろそろ支えになるものを買ってあげようと思って。よく見かけるし、シルバーカーでいいかな、と思ってるんですけど」
シルバーカーを選ぼうとしていた気持ち、よくわかります。
・荷物も入れられる
・疲れたら座れる
・使っているイメージも湧きやすい
このとき自分は、こう答えました。
「目的によっては、歩行車のほうが合っているかもしれません」
「歩行車? シルバーカーと何が違うの?」
実はこの2つ、見た目は似ていても、“身体をどこまで支えるか”に大きな違いがあります。
ただ、私自身も改めて聞かれると、
「なぜ歩行車のほうが歩きやすそうに見えるのか」
を、意外とうまく言葉にできませんでした。
そこで今回は、なぜ理学療法士が歩行車を勧めることが多いのかを、できるだけわかりやすく整理してみます。
シルバーカーってどんなもの?

シルバーカーは、外出をサポートするための道具です。
荷物を入れられて、疲れたら座ることもできる。
押して歩くと安定感もあるので、「杖の次のステップ」として選ばれることも多いです。
また、見た目にも馴染みがあり、
「まだ歩行車を使うほどではないかな」
という気持ちから選ばれることもあります。
ただ、実はシルバーカーは“体重をしっかり預けて歩く”ことを前提に作られているものばかりではありません。
押して歩くことは得意でも、身体を支える力としては十分ではない場合があります。
「なんとなく安定している気がする」と、
「しっかり支えられている」は、
少し違うんです。
たとえるなら、
“押しやすい”
と
“身体を預けられる”
の違いに近いかもしれません。
実際に使っている場面でも、ヒヤッとすることがあります。
例えば、
・落としたものを拾おうとして前かがみになったとき。
・後ろに下がろうとしたとき。
こうした動きでは、シルバーカーだけでは支えきれず、不安定さが出ることがあります。
特に、歩行そのものに不安がある人ほど、「押して歩く」以外の場面で、バランスを崩しやすくなる印象があります。
もちろん、シルバーカー自体が悪いわけではありません。
荷物を運びながら外出したり、途中で休憩したり。
外出のお供としては、とても優れた道具です。
ただ
「歩きながら身体をしっかり支えたい」という目的とは、少しズレがあるのかもしれません。
歩行車ってどんなもの?

歩行車は、歩きながら身体を支えるために作られた道具です。
シルバーカーより幅が広く、ハンドルを両手で支えながら使います。
身体の近くで操作しやすいため、歩いているときも重心が崩れにくい。
実際に使っている方を見ていると
「押して歩く」というより、“支えてもらいながら歩いている”感覚に近いように感じます。
見た目はシルバーカーに似ていますが、目的は少し違います。
シルバーカーが
「外出を楽にする道具」だとすると、
歩行車は
「安心して歩き続けるための支え」に近いのかもしれません。
街中ではそこまで多く見かけないかもしれませんが、リハビリの現場や介護施設では、よく使われています。
実際の現場では
屋内外で使いやすいタイプや、小回りしやすいコンパクトな歩行車が選ばれることも多いです。
また、歩行車は介護保険を使ってレンタルできる場合があります。
「いきなり購入するのは不安」という場合でも、月数百円程度で試せることもあります。
気になる場合は、ケアマネジャーや福祉用具の専門相談員に相談してみるのも一つです。
ざっくり比較
ここまでの内容を、ざっくり整理するとこんな違いがあります。

理学療法士が歩行車を勧める理由

現場で杖や歩行車を選ぶとき、私が一番気にしているのは
「この人が安心して歩けるか」です。
もちろん、「転びそうで怖いな」という不安がないかも、大切な視点です。
杖を使って歩いている方が、少し歩きづらそうになってきたとき。
このタイミングで何を使うかは、思っているより大事な選択です。
私が「そろそろ歩行車を考えてもいいかも」と感じるのは、
杖で歩いているときに
・左右へのふらつきが大きくなってきた
・歩幅が少しずつ小さくなってきた
・姿勢が前かがみになりやすい
・以前より疲れやすそう
と感じるときです。
これはあくまで私の感覚なので、絶対の基準があるわけではありません。
ただ、そういう歩き方が続いているなと感じたとき、転びやすくなっているサインかもしれない・・・と思っています。
気になる場合は、ケアマネジャーや専門職に相談してみてください。
歩行車を実際に使ってもらうと、少しずつ変化が出てくることがあります。
歩くスピードが整ってきたり、方向転換がスムーズになったり、前かがみだった姿勢が少し起きて歩けるようになったり。
それまで歩くことに集中していた方が、会話しながら歩けるようになることもあります。
「もう少し歩いてみようか」
そんな言葉が出てきたり
「これは歩きやすいね」
と言ってもらえたりすると、道具が合っていたんだなと感じます。
何かが劇的に変わるわけではありません。
でも、歩くことへの不安が少し減ったり、「もう少し歩いてみようかな」と思えるようになったり。
そういう変化が、じわじわ出てくる印象があります。
「歩けるかどうか」より、
「安心して歩けるか」。
歩行車はそのための支えなのかもしれません。
フローチャート

まとめ

シルバーカーが悪いわけではありません。
目的に合っていれば、とても便利な道具です。
荷物を運びながら外出したり、途中で座って休憩したり。
「外へ出ること」を支えてくれる、とても心強い存在だと思います。
ただ、「歩きながら身体をしっかり支えたい」という場面では、歩行車のほうがその目的に合っていることが多いです。
最初にご紹介した相談でも、最終的に歩行車を試してみることになりました。
使い始めてしばらくして
「なんか歩くのが楽になった気がする」
という言葉をもらいました。
何が大きく変わったのか、正直なところはわかりません。
でも、
「何となく歩きやすい」
「前より怖くない」
そんな感覚が、少し増えたのかもしれません。
道具を選ぶとき、「何ができるか」だけじゃなく、「その人が安心して歩けるか」も大切な基準なのかもしれません。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
