カネコアヤノ ライブレポート 尊い、ということ。唯一無二の夜。
今日の渋谷LINEキューブでのカネコアヤノのライブは、ほんとうに特別だった。
バンド名義になってから初めてのライブ参戦。
音はいつも以上にうねり、バンド全体が生き物のようだった。
ひとつひとつの音が絡み合って、自由に、そして力強く駆けまわる。
「難しい」の演奏前、パーカッション担当が突然「ぶどう……」とよく聞き取れない声で叫んで、会場がざわつく。
「え、なに?」という空気のなか、カネコアヤノが今日初めてマイクを取った。
「次の曲がラストになります」
そして――
「武道館でやります」

ようやく「ぶどう」が「武道館」だったことが判明して、会場は一気に沸いた。
そんな噛み合わなさすらも彼女らしくて、どこかあたたかくて、笑ってしまった。
印象的だったのは、「爛漫」。
一番好きな曲。今日はピッチがいつもより速くて、ちょっと驚いた。
でも、それが新鮮だった。まったく別の景色が見えたようで。
バンド編成によって、過去の曲が大胆に再構築される。
まるで別の命を吹き込まれたように生まれ変わる。
変化を恐れずに、音を更新していく姿がかっこよかった。
もしかすると、変わってしまったことで離れてしまうファンもいるかもしれない。
けれど、今の音を、今の仲間と、生き生きと鳴らしている姿を見ていたら、
それだけで胸がいっぱいになった。
ラストに歌った「石と蝶」。
まるで、カネコアヤノ自身を描いたような曲。
♪ 愛想がないのはもともと 説明するのも苦手 ♪
その歌詞通り、うまく言葉にできないまま、それでもまっすぐに届く声。
嫌い
お前のこと
答えを出してやる
まるで蝶みたいに飛ぶじゃない
花びらの上で踊る
グラウンドの頃には
一人で過ごしてきたから
情けないとかなかった
愛想がないのはもともと
説明するのも苦手で
愛想がないのはもともと
季節の変化にやられて
愛想がないのはもともと
答えを出すのも苦手で
愛想がないのはもともと
愛想がないのはもともと
途中、歌に詰まりそうになった瞬間があった。
涙をこらえるような表情。
彼女にとっても、きっと今日のライブは、特別な夜だったのだと思う。
カネコアヤノの音楽は、普通であって異質。
真似できそうで、絶対に真似できない。
「難しい」には、90年代のオルタナティヴ・ロックの影響を感じさせる一面もあった。
大胆で、鋭くて、でも彼女にしか鳴らせない音。
彼女は大学在学中、同じ大学に通う友人(後のサポートメンバー)に曲を聴かせたことをきっかけに、音楽活動を本格化させたという。
その出会いこそ、今の彼女のすべての始まりだったのかもしれない。
そして、僕がカネコアヤノに出会ったのは、2年前に資生堂のCMで流れていた「光の方へ」だった。
あの一瞬も、尊い出会いだった。
いま彼女を支えるバンドメンバーも、それぞれが欠かせない存在。
全員でひとつの音を作っている。
不器用な彼女を、音で、表情で、そっと支えていた。
それも、カネコアヤノにとって尊い出会いだろう。
尊い、という言葉が、こんなにも自然に浮かぶ夜はなかった。
そして、僕たちは願う。
どうか、
好きな音楽を、
好きな仲間と、
好きなように鳴らし続けてほしい。
それが、僕を含めるファンの、いちばんの願いなのだから。
ライブの最後、いつも以上に愛想よくて、どこか晴れやかな表情をしていた。
きっと、今日の景色を彼女自身も楽しんでいたんだろう。
投げキッス……たぶん、そういう動きだったと思うけど、妙にぎこちなくて、思わず笑ってしまった。
でもそれが、たまらなく彼女らしかった。
不器用で、どこか照れ屋で、でも全力で愛を返そうとしてくれる。
ああ、今日はほんとうに、いい夜だった。
楽しい夜をありがとう。
