烏克蘭の千日【5】ウクライナ全面侵攻から丸4年
誰だ、俺の足を叩くのは。目を擦りながら「犯人」を睨み付ける。
でっぷりとした中年女がめんどくさそうに切符を差し出す。
「もうすぐあなたの駅よ」
車掌が起こしてくれたのか。ぼんやりとした頭でかろうじて認識した。
こんなに熟睡したのは久しぶりだ。このところ疲れが溜まっていたが、布団に入ると警報で叩き起こされる。ドローンやミサイルの攻撃を避けるため地下駐車場に潜り込むが、爆音や震動で眠るどころではない。
たとえ攻撃がなくても「底知れぬ沈黙」に怯えおののく。いつ攻撃が始まるのか、そのことで頭はいっぱいだ。明るくなり、その後しばらくしてもう爆撃がないと分かるや、重い疲労感に打ちのめされる。身体中におぞましい力が蔓延する。肩も首もかちかちに凝って固まり、挙句にひどい頭痛に悩まされる。
ドローンやミサイルは、まさに悪魔の攻撃。
しかし相手は、生身の人間。心もあれば魂も備わっているはずだ。
狂気の沙汰の一夜を過ごすのは辛すぎる。
人は人らしい人として一生を送ることが可能なのだろうか。
獣的な戦慄は、精神性をじわじわと締め上げ、ついには骨抜きにする。
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丸山健二の一話読み切り掌編小説『百と八つの流れ星』の連載がスタート。また新たに三人の書き手さんが参戦です。茶人、画家、丸山健二文学賞受賞者…
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