「集中できない子がいます」その言葉、ちょっと待ってください!!
「先生、うちの子、集中力がなくて困っています」
保護者の方からも、ピアノの先生方からも、
レッスンの場でよく聞く言葉です。
でも、私はこの言葉を聞いたとき、
いつもこんな風に思います。
本当に「集中力がない」のかな?
集中できないレッスンしてるんじゃない?
誰が?私(講師)が
集中力って「能力」ではなく「状態」ではないでしょうか?
大人だって、
寝不足の日。
嫌なことがあった日。
難しすぎる仕事を渡された日。
何か心配事がある時。
考えることがある時。
逆に、何にもすることがない退屈な日。
「集中しなきゃ」と思っても、どうしても頭が入らないこと、ありませんか?子どもさんも、一緒じゃないかな?
それどころか子どもさんは
「今自分がどんな状態か」を言葉にして伝えることがずっと難しい分、
神経系の影響をダイレクトに受けていると思います。
ポリヴェーガル理論から見ると——
「集中しない」ではなく「できない状態」になっている
ポリヴェーガル理論(ステファン・ポージェス博士)では、
人間の神経系は常に無意識のうちに周囲の「安全か、危険か」を評価していると説明します。
これをニューロセプションといいます。
ニューロセプションが「安全だ」と感じているとき、
人は腹側迷走神経系が優位な状態になります。
その時に
人の話をきちんと聞ける
考えたり試したりできる
挑戦してみようという気持ちが生まれる
という「学びに向いた状態」に自然となるのです。
でも、
「また怒られるかもしれない」「できないかもしれない」「失敗したら恥ずかしい」そういった不安が神経系にキャッチされると、ニューロセプションは「危険」と判断し、防御モードに切り替わります。
するとどうなるでしょうか?
キョロキョロする。
急にふざける。
椅子でぐるぐる回る。
ぼーっとしている。
話を聞いていないように見える。
これは、「集中してしない」のではなく。
「集中できない状態」になってしまっている
叱れば叱るほど、「また怒られた」というニューロセプションが働いて、
どんどん防御が強まる。これは子どもの意地悪でも、甘えでも、怠けでもありません。神経系の、至って自然な反応なのです。
SEL教育から見ると——「整え方」を知らないだけ
SEL教育(社会情動的学習)では、集中力を「生まれつきの才能」ではなく、自己管理(Self-Management)というスキルの一部として考えます。
自己管理というは、自分の感情や身体の状態を把握して、少しずつ整えていく力のことです。
でもこれって言うのは簡単だし、このように書くことも簡単ですけど。
なかなか出来ないですよ〜〜
知識があったって、実際にできるかどうか・・・・
大人でも難しい事なのに、子どもさんに向かって
「ちゃんと座って!」
「集中して!」と言っても・・・
いやぁ〜それは勘弁してあげてくださいよ
「集中しなさい」と命令するのではなく、
集中できる状態への整え方を、一緒に育てていく。
これがSEL教育の本質だと私は思っています。
ウェルビーイングの視点——「ちょうどいい挑戦」が没頭を生む
ポジティブ心理学のPERMA理論には、
E(Engagement)=没頭という概念があります。
人が何かに没頭できるのは、
簡単すぎず、難しすぎない「ちょうどいい挑戦」に出会ったときです。
チクセントミハイの「フロー理論」とも重なります。
難しすぎると不安が勝ち、簡単すぎると退屈になる。
その間にある、「ちょっと頑張ればできそう」という場所に、
人は自然と引き込まれていく。
ピアノのレッスンでも同じことが言えるのではないか?と思っています。
両手奏がまだ定着していない子に、
いきなり複雑な曲を渡せば、神経系は「危険」を察知します。
逆に、もうすでにできていることばかりを繰り返しても、退屈で心が離れていきます。私がレッスン中にいつも考えていることは
「この子にとって、ちょうどいい難しさってどこかな?」なんです。
そしてこの問いと答えを、レッスン設計の中心に置いています。
私がレッスンで実際にしていること
レッスンに来たばかりで、明らかにそわそわしている子がいます。
学校で嫌なことがあったのかもしれない。
お母さんと喧嘩してきたのかもしれない。
眠いのかもしれない。
そういうとき、私はいきなり楽譜を開きません。
ワークをして空間に慣れてもらう。
まずちょっと話を聞く。
リズム遊びをする。
身体を使った簡単なゲームをする。
落ち着いてレッスンに向かうまで待つことが大事だと考えています。
「あっ、ちょっと落ち着いたな」って雰囲気でわかったら
レッスン開始です。
そして、そんな時に私が大切にしているのが
「できたを増やす」ことです。
「え〜〜やん!」「さすが!」
その一言が、また来週もここに来たいという気持ちを育てます。
⭕️赤丸の一つひとつは「あなたは大丈夫」という安心のサインになります
これもまた、ニューロセプションへの働きかけになると思っています。
「集中できない子」を変えようとしなくていいのではないですか?
私が大切にしているのはこの4つです。
課題を短く区切る(達成感を積み重ねる)
身体を動かす(神経系をほぐす)
できたを増やす(安心と自己効力感を育てる)
安心できる関係を作る(ニューロセプションを「安全」に向ける)
集中している子を見て「あの子は集中力があるな〜」と思うことがありますよね。それって、その子の周りに集中できる環境との関わりがあるのかもしれません。
まるみえ先生の答え
「集中力がない」と決めつける前に、ぜひ一度、こう考えてみてください。
「この子は今、どんな状態にいるんだろう?」
集中って能力ではないはずなんです。
安心できること。
楽しいと感じること。
「できた!」という達成感。
ちょうどいい挑戦。
そういうものが揃ったとき、「集中」出来ると思っています。
大人だから、子供だから、なんて関係ないのです。
誰だって、心配事のない安心できる環境にあれば
目の前のことに「集中」できるはずなんです。
その環境を整えるのは子供(生徒)ではなく、大人(講師)の仕事だと考えています。
そして、子供自らが自分の居心地の良い居場所を作れるようになる手助けをしたいと思っています。

中西美江(なかにし・みえ)プロフィール
「目の前で書くレッスン」: 市販のテキストに入る前に、5線ノートを使い、生徒一人ひとりの得手・不得手を見極めながら、目の前のあなたのために」内容を書き込む独自のスタイルをと名付けてレッスンをしています。
オリジナルメソッド: ポピュラーやジャズの要素を取り入れ、長調と短調を同時に練習して効率的に音楽理論を習得させるなど、独自のカリキュラムを展開しています。
先行練習の徹底: 生徒が新しい課題でつまずかないよう、2歩先を見据えた「先行練習」を行い、自信を持って次のステップへ進めるようサポートしています。
【教育理念・ビジョン】
「音楽を通して、個性を大事に一人一人の想いを応援する」を教室のビジョンに掲げています。
技術向上だけでなく、ピアノを通して**「知る喜び」「弾く楽しさ」「私が私であることに自信を持つこと」を伝えることを最優先としています。
講師を「音楽という大きな樹の下で、子どもの成長を見守る大人」と定義し、音楽以外の心身の成長も大切にしています。
【私のマインドセット】
講師自身が楽しむ: 「生徒のために」という義務感ではなく、「自分が一番楽しむ!」という熱量が、生徒や保護者のやる気を引き出す最大の鍵であると考えています。
失敗への寛容さ: 失敗を「大したことではない」「振り返るチャンス」と捉え、講師自ら失敗を見せることで、生徒が安心して挑戦できる「心理的安全性の高い場所」を作っています。
ありのままを受け入れる: 全く喋らない生徒や練習ができない生徒も、その時の状態を丸ごと「OK!」と肯定し、生徒の全てを受け入れる姿勢を大切にしています。
【主な活動】
雑誌『レッスンプラスワン』にて、連載コラム「聞いて!まるみえ先生」を執筆し、全国のピアノ講師の悩みに答えています。
「教室運営法」「体験レッスン成功法」「続けることのできるレッスン法」などをテーマに、各地で精力的に講座を開催しています。
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