手のひらに残る、返事のない手紙のような
(リンリンさんの詩集『沈黙の絶望、沈黙の希望』を読んで)

ずっと待っていた手紙が、封書で届いたようだった。
思わず小走りで部屋に戻り、
急いで──でも、雑にはしたくなくて、指先に気を込めながら、封を切った。
紙のふちにそっと爪をかけて、
破かないように、でも一刻も早く見たくて。
その気持ちはまるで、
呼ばれるのをじっと待っていた静かな声に、ようやく触れるときのようだった。
表紙には、水の記憶を纏ったような淡い空の色と、
その中心に、沈黙のなかで息をひそめながらも、
まっすぐ立ち続けている花がひとつ。
まるで、声なき場所に置かれた、言葉そのもののように見えた。
『沈黙の絶望、沈黙の希望』──
その強く静かな題が、この花の佇まいにすべて映し出されている気がした。
詩の多くはnoteで読んでいた。
けれども、紙の本として手にすると、
まるで初めて出会う言葉たちのように感じられた。
ページをめくるたび、
ことばの輪郭が空気のなかに静かに滲みはじめる。
沈黙と沈黙のあいだを漂ううちに、
いつのまにか、自分の呼吸と重なっていた。
この一語一語を紡ぎ出すために、
どれほど推敲を重ね、絞り出し、そぎ落としてきたのか──
その痕跡は、目には見えないまま、
紙の繊維にそっと染み込んでいるようだった。
まだ、すべてを読み終えたわけではない。
一篇いっぺん、ことばが音もなく芽吹くのを待ちながら、
少しずつ、祈るように読んでいる。
そんななかで出会った「ことば」という詩。
ページを追ううちに、ふと立ち止まる。
最後の一行を読んだとき、
文字を追っていたはずなのに、読んでいたのは沈黙のほうだったと気づかされた。
行間の沈黙が饒舌に語る
私は、こういう詩が好きだ。
言葉そのものではなく、
そのそばにある気配を掬おうとする詩。
この詩集を静かにめくる時間が、
これからの私の暮らしのなかで、
朝、カーテン越しに届くぬくもりのように、
気づけばそばにいて、
何度でも、やわらかなひとときへと導いてくれる気がしている。
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